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偶さか日記8

イラストやスタンプは全て嘉又夢了氏
文中の凌司君は氏のキャラクター。
事前に関係を組んでいます。


4月6日

役所から聴いた凌司君のハナシに漏れがあるようだからバンパイア協会に確認した。
「お疲れさんです、トウキョー都××市の万禮久幸です。ウチの圭凌司についての確認なんですが、娘って何処に居るんですか?自分はそちらから存在すら聞かされてませんが。」
「万禮久幸様、お疲れ様です。本日の担当ミヤタハヤトです。宜しくお願いします。万禮久幸様の御係累になられた圭凌司さんに娘さん、ですか?うーん?戸籍には一度も登録されてませんので、こちらでは把握しようがなく、御始祖となられた万禮久幸様にもお話のしようがなかった、のだと思います。」
「まじか。婚外子?あの男が?手前ェの子どもを認知しないなんて事をあの男がすると思うか?」
「少々お待ち下さい……………お待たせ致しました。記録されている性質を鑑みるに、御自身のお子さんを認知しないというような事は圭凌司さんはなさらないでしょうねえ。ええ、どんなにお若い頃であっても。」
「だよなぁ?じゃ、夢の中の娘は誰の娘だ?」
「万禮久幸様は圭凌司さんがどなたかの記憶を睡眠時に共有していると、お考えですか?」
「有り得ない事じゃ無いだろ?実際俺が凌司君の見てる夢をリアタイで見て心情までシンクロしたんだから。後、夢の中で違う世界線の自分の記憶を見るヤツは滅茶苦茶稀だって以前医者が言ってた以上は。」
「ええ、確かに…。残念ながらこの件はこちらの管轄ではお役に立てませんね。女のお子さんを持つ人などこの星に何億人も居ますからね。」
「それな。ア、最後に1つだけ、離婚した女房エリカの子どもは朗正だけかどうか教えてもらえるか?」
「はい。……朗正さんだけのようです。」
「分かった。ありがとう。」
「御懸念が解消する事をお祈りしております。御確認と御相談ありがとうございました。ミヤタハヤトでした。」
「押忍、ミヤタハヤト君、ありがとうさんでした。」
どうなってるんだ。
昨日の朝の寝覚めの凌司君は夢の内容をきっちり覚えていて違和感を抱いてなかったぞ。
まるで毎度の事みてぇな反応だった。
直球で本人に尋ねてみて発狂トリガーになったら怖ぇしなぁ。
バンパイア移行期は何があっても不思議無ぇんだ。
催眠術で引き出すのが一番安全なんだよな…。
ファッキン。一生バンパイア式催眠術なんざ要らねぇと思ってたのになあ!
ター坊の女房にまた弟子入りするしかねぇじゃんよ。
ん?ちょっと待った。俺が凌司君を同族化しちまったあの時期なら、既に娘の戸籍データが消えてる可能性もあるんじゃねぇか。怪異に拐われてる可能性がゼロじゃねぇ。
ファッキン!催眠術修行と探索の両方とも猛ダッシュで本腰入れなきゃ駄目じゃねえか。

4月7日

この所探索先がえげつない匂いで満ちてるから医者にマスクを送ってもらった。凌司君の分も二人分。
凌司君はえづいて涙で目が潤んでるのに愚痴一つ泣き言一つ言わずに匂いを頼りに探索を深めている。
吐き気が強まる方に戦場があるのは確かだが、無くても問題無ぇ匂いは消してやろうと思った訳だ。
酸素を運び終えた赤黒い体液の気管を満たす独特の重量感有る匂いは、嗅がなくても敵を見つけられる。
凌司君に吸血させてなくて心底良かったよ。
血の味を覚えてたら、えづくどころか好みの匂いを見つける度に惑わされる羽目になってたからな。
あの真面目な男は自責ストレスでぶっ倒れちまうだろう。

4月8日

明け方にやたら呪力の強い、その割には妙に好意的な気配のナニカが俺の結界内に闖入した気配で目覚めた。
界狭間を使って二階の家事室に来たトゥチャンとランチャンだった。
凌司君の為に作った呪具ができあがったから届けに来たらしい。
俺は二人に気を遣わせたくなかったから遠巻きにデバガメした。
俺がランチャンにやったスマホが有るからこっちの時間は向こうに居ても分かるんだが、何でかしょっちゅう界狭間を通る間に時間がズレるから何時に着くのか分からないんだよな。
でもこういう日に限って向こうと同じ時間に着いて面喰ったらしい。
界狭間を出てスマホを見たら午前5時過ぎで不味いと思ったんだろう。
一階に居る受付アンドロイドの真代に一刻も早く届けたかったと事情を話して託していた。
トゥチャンは小っこいのに立派な良い師匠だなぁ!


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