各国の国勢調査における性別の取り扱い

現在の日本では、個人情報などを記載する際の性別欄には男女の選択肢しかないことが多々あります。
しかし徐々にですが、民間企業や団体、地方公共団体などの公共機関の取り組みで、性別欄に「その他」といった男女以外の選択肢を設けることが増えてきています。
一方で、国が作成する国勢調査などの性別欄には男女しか選択肢がなく、国としての多様なジェンダーの理解はまだまだ進んでいません。
翻って、先進諸国の状況を見ると、国勢調査やパスポートといったものでも、多様なジェンダー・セクシュアリティ・身体の性が存在していることが前提となっているケースが見られます。

今回は、多様な性、特にジェンダーアイデンティティに関わる性別欄の記載方法について、先進諸国の事例をご紹介します。
本記事の引用は、内閣府、男女共同参画局、「ジェンダー統計の観点からの性別欄検討ワーキング・グループ」の調査から行っています。

【先進諸国の性別欄に関する状況】

カナダ

カナダのセンサス(国勢調査)では、男女以外のジェンダーについて問う設問があります。
しかしながら、男女以外のジェンダーアイデンティティについて分かりやすい形で結果は公表されていないようです。

イングランド・ウェールズ

イングランド・ウェールズの国勢調査では、ジェンダーアイデンティティが出生時と同じであると認識しているかの問いが立てられています。
しかしながら、出生時とは異なるジェンダーアイデンティティについては分かりやすい形で結果は公表されていないようです(P01のシート)。

オーストラリア

オーストラリアのセンサス(国勢調査)では、身体の性的特徴に基づき、男女以外の性別として「ノンバイナリー セックス」の選択肢があるようです。しかしながらNon-binary sex の比率の結果は分かりやすい形では公表されていないようです。

パスポートの状況

国際民間航空機関の作成した旅券規格Doc9303では、上記のような記載がかなり以前からあるそうです。
この「X(不特定)」が作成された詳細な背景までは調査し切れませんでしたが、男女以外のジェンダーアイデンティティを持つ者にとっては非常に有用なものだと考えられます。

また、各国におけるパスポートでの男女以外の性別の記載方法は、上記に限定されず、多様な方法があるようです。

【国内の性別欄に関する取り組み事例】

大阪市で行われた先進的な事例についてご紹介します。

「大阪市民の働き方と暮らしの多様性と共生にかんするアンケート」
日本の行政の行ったジェンダーアイデンティティを問うアンケートとしては、大阪市の作成した下記の「3ステップ方式」と呼ばれる調査方法が、かなり練り上げられた方法であると言えそうです。

結果は以下の通りだったようです。

日本でも国勢調査は5年に一度行われています。
2020年の日本の国勢調査では性別について残念ながら男女の二択しかありませんでした。
男女のどちらかを選択していなければ恐らく回答は無効となり、男女以外のジェンダーアイデンティティを持つ者は、日本には居ないものとされているのが現状です。
男女以外のジェンダーアイデンティティが尊重される社会になっていくよう、訴えかけていく必要があります。


※各国の国勢調査を公表しているHPのリンクは総務省統計局のHPから閲覧可能です。

文責:Kazuki Fujiwara

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