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(変革)AIxBI

さて。今回も一回で書き終えられるかは正直わかりません。今回はBIの特集記事を書いているわけですが、本来こっちだけで巨大な検証が必要なのかもしれません。AIの話です。

よく言われますよね。AIが人間を労働から解放する。で、働き場が無くなる。高度な労働をする知的労働者と、職を失う単純労働者の二極化が進む。そこで、後者に前者の富を分配しようという考え。

この話題はあちこちで語られていますので新味はあまり無いのですが、やはりBIを語るうえで避けては通れない議題ですので、ここでも僕なりの考えを書いておきたいと思います。

まず1つ目。AIが導入されることで、いま人間がやっている仕事の殆どはAIや、それを搭載したロボットに取って代わられるという話。Googleの創業者、ラリー・ペイジ氏が「20年後、現在の仕事のほとんどが機械によって代行される」と語ったのは有名な話ですね。

しかし、これについていつも思うのですが、とっても大事な視点が欠けていると思うのです。AIを作る側の市場原理です。儲からない業界で、AIxロボットの導入って進むのでしょうか?

日本では特に「ロボット=人型」と思う人が多いので、人間のように両手両足を自在に使って器用にいろんな作業ができるロボットが出来ることをイメージするのでしょうが、実際にはロボットはある一部の作業に特化した設計になっているのがほぼすべてで、どんな作業でも器用にこなすのは全然できていません。しかも、それはAI技術ではなく従来からのロボット技術の発展から起きるものなので、AIがDeep Learningによって勝手に学んでいくことによって従来よりもはるかに高速に技術革新が起きる、ということは無いのです。

NewsPicksの母体であるユーザベース。この会社が行っているもう一つの事業であり祖業の「SPEEDA」。僕はすっかりこれのお友達としてヘビーユーザをしているのですが、SPEEDAが集めている企業情報は世界380万社。これを550の業界に分類しています。

さて、550もの業界があるのですが、このすべての会社にロボットが導入されるのはいったいいつになるでしょうか?しかも、外食産業だけを見てもハンバーガー屋と牛丼屋は全く違う動作が必要なのですが、550業界のうちたった1つの業界においてすら、これらの作業をロボットに完全に置き換えることなど、随分キッツイお話だと思うのですがいかがでしょうか?

しかも不思議なもので、今でも人間がやらなくてもいいはずの仕事を人間がしている業界は身近なところにあるんです。コンビニや飲食などです。

全部自動販売機にすればいいじゃないですか。補充のところはまだ人間が必要でしょうが、売るところは人間なんて要らないでしょ?

なのに無人店って少ないですよね。なぜでしょう?

僕は2つの理由があると考えています。ひとつは、心理学的側面。無人店だと、商品や立地、価格で勝つしかないんですね。人の購買意欲をくすぐるためには、正面突破の正攻法で戦うしかないのです。

人間の判断というのは、常に合理的に行われているわけではなく、ちゃんとした理由もなく適当に行われているものです。「店員がカワイイ・イケメン」みたいなわかりやすいものから、単に目が合ったからとか、誰もお客がいなくて可哀そうに思ったからとか、何がヒットするかわからないけど、人間がいるだけで可能性が拡大するのです。ロボットが「いま〇〇チキンが揚げたてですよー!」って言っても、買って”あげよう”という気持ちにはならないですよね。

そしてもう1つは、AIの限界にあります。AIって、人間よりも遥かに低い知覚能力しかないのですよ。いわゆる五感に変わるものとして、圧力や温度、電流等々といった刺激をセンサーで受け取ります。あるいはデータ入力されたものを受け取ります。それを縦横無尽に組合せ、膨大なデータを高速で分析し、傾向を掴み、すべてを記憶して瞬時に呼び起こす。そして、そこで形作られた特定のパターンに対して答えを教える。

たとえば、顔認識機能を用意しておけば、一度Aさんがタバコを買えば、次に来たときはどのタバコを出せばいいのかは一瞬で判別できます。買いだめするタイプでも、購買のスパンを学べば、毎回サジェストするのではなく、一定のタイミングでカートンを勧めるというようなことも可能です。

しかしこれは、顔の画像データと、購買情報の商品名、数量、日時といった情報をデータベースに保管することを人間が定義したから行える分析なので、この事前のデータベース定義から漏れてしまうと全く認識できません。また、情報を吸い上げるセンサーが存在しないと、当然ながら分析には使えないのです。

たとえば、急に大雨が降ってきたとしましょう。コンビニなら傘の売り時。外の雨を感知するセンサーを置いていなかったり、テナントの中にあるのでセンサーが置けなかったとします。天気予報が外れたらビジネスチャンスを逃しちゃいますね。

また、こういうことを全部センサーで吸い上げられるように、様々なケースを想定して用意するにしても、それは果たして安上がりなのか?という問題も生じます。

ここにもAIの大きな問題があります。AIそのものは長期間使えば使うほど学びが増えてきて、精度が上がり高度化していきます。しかし、センサーは逆に劣化するのです。ロボットも使い倒せば壊れるのです。

なので必ずメンテナンスが必要ですし、入れ替えも必要になります。AIって、初期投資したらあとはずっと費用を掛けずに使えると思ってませんか?そんなわけはないのです。

そうすると、人間とAIと、どっちが安上がりかという問題が生じます。AIを使って人間を全部ロボットに置き換えようと思うと、費用対効果の上で人間よりも悪い分野が必ず残るのです。

最初の方の話に戻りますが、確かに多くの仕事はAIの進展によって置き換わっていくかもしれません。しかしそれは全部ではありません。産業革命によって家内制手工業は大量生産の時代になり、ファクトリーオートメーションの進展により工場の自動化も大きく進みました。しかし、今でも家内制手工業は残っているし、工場で働く技能工もたくさんいます。経済合理性を考えた時、それをAIxロボットに置き換えるメリットが無いものは必ず残るのです。

これが、AIが人間を労働から解放しない理由です。AIxBIの議論においては、そもそも階層化されたうちの”上流”が”下流”を養うという部分からしてツッコミどころ満載なのですがね。そんなことしてくれる時代、いつありました?

本日は以上です。まだ議論すべきネタはあります。無かったら試算の延長戦をやります( ;∀;)

では過去記事です。

(導入編)BIを導入した楽園があった https://newspicks.com/news/2306837

(定義)BIと生活保護は別物 https://newspicks.com/news/2309353

(条件)BI成功に欠かせない要件 https://newspicks.com/news/2312201

(試算)BI実現に向けてシミュレーション https://newspicks.com/news/2316744


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