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エアマッチレビュー PL28節アーセナルvsシティ

はじめに

プレミアリーグ第28節延期分、アルテタがアーセナルの監督としてエティハドに帰還した。つい数か月前まで右腕として仕えた師匠ペップとの師弟対決でもあった一戦は大きな注目を集めた。

レビュー

スタメンはこちら。

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アーセナルはおなじみの4231、マンチェスター・シティもおなじみ433で挑む。注目はぺぺとジンチェンコ、カンセロとサカ、オーバのマッチアップとスターリングとベジェリン、マフレズとサカというそれぞれのウイングとサイドバックでどれだけ優位性を得られるのか。

開始早々ペースをつかんだのはアーセナル。エジルやオーバがエメリ時代では考えられないようなすばやいプレスで不安定な最終ライン(とくにオタメンディ)に圧力をかけていく。ペペがカットインからシュートに持ち込んだ6分のシーンや11分のエンケティアのシュートシーンはまさに高い位置で奪って素早くシュートに持ち込む、アルテタの狙い通りの展開となった。

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そしてもう一つ、アーセナルが流れを握った要因が、セバージョスのプレス回避。絶妙な立ち位置とひらひらとシティのプレスの矢印の逆を取る巧さでアーセナルがボールを握ることができるようになった。この日古巣対戦となった左利きのマリの存在も大きかったかもしれない。

そんなペースを握っていたアーセナルだったが先制に成功したのはシティ。ある程度前進されたら、割り切ってブロックを敷いていたアーセナル。やられたのはアーセナルの左サイドから。オーバメヤンが若干戻るのが遅れてしまい、サカ1枚で、マフレズとデブライネ2枚を見なければいけない状況になっていた。それでも中に人数はそろっていたので、普通ならそんなにピンチな場面ではない。

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しかし、そこはワールドクラスのキック精度を誇るデブライネ。マフレズから受けたリターンをダイレクトでDFラインの裏へのクロスを送る。DFラインを上げようとしていたルイスの裏から走りこんだジェズスが頭で押し込んだ。この失点に関しては、だれも責められるべきではない。ルイスもボールが下がったらDFラインを上げるというセオリーに従ったまでで、これはデブライネのクロスとそれを信じて走りこんだジェズスをほめるべきだろう。

アーセナルは失点してから意気消沈したのか、思うようにボールを持てなくなる。シティ側の柔軟な対応による部分もあったと思う。

具体的には、アーセナルのプレスは片側に寄せて同サイドで奪いきることを目標としてきたが、シティがサイドチェンジを多用するようになってからはアーセナルのプレスが思うようにハマらなくなっていく。

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特にシティの左サイドから右サイドへの展開は効果的だった。テクニックのあるジンチェンコとこの日左CBに入ったフェルナンジーニョのコンビがショートパスでアーセナル全体を左にスライドさせる。そうして空いた右サイドのマフレズへ大きなサイドチェンジによって前進していく。

35分のジェズスのシュート、42分のスターリングのシュートシーンは上記の左から右へのサイドチェンジからの流れによるものだった。

しかし、その直後の44分、アーセナルが同点に追いつく。レノの大きく蹴りだしたゴールキックからオーバメヤンが粘ってコーナーを獲得する。その左サイドセバージョスのコーナーからマリが頭で合わせる。エデルソンがなとかセーブしたが、こぼれだまをエンケティアが押し込んで1-1の同点に追いついてハーフタイムを迎える。

マリへのマークがほんの少し緩んでしまったオタメンディはHTのロッカールームでペップに怒られていることだろう。

HTに交代を行ったのはシティ。ボールが足につかなかった感のあるスターリングに変えて、長期離脱から復帰したサネを投入する。

サネの投入は非常に当たった。中に入りたがったスターリングとは違って、ひたすらタッチライン沿いの立ち位置を取った。積極的に1対1を仕掛け、対面のベジェリンを翻弄し続けた。

また、復帰早々でもダビドシルバとの相性の良さは健在で、シティの攻撃は前半の右サイドから左サイドまでも活性化することとなった。

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相変わらずボールを握る展開のシティだが、いくつかあったチャンスを決めきれない。ここはビッグセーブを見せたレノをほめるべきだろう。

ただ、それでも追加点を奪い切ったのはシティ。63分、左サイドでシルバからのパスでサネがベジェリンの裏を取り、グラウンダーでGKとDFの間に入れる好クロス。マリがなんとか触ったものの大きくクリアできず、ごちゃごちゃした中で、ジェズスから変わったばかりのアグエロが豪快に押し込んだ。何度もやられていたシティの左サイドからの攻撃だったので、アルテタとしては少し早く手当をしておきたかったと悔やんでいるかもしれない。

追いかける立場になったアルテタはすぐにカードを切る。押し込まれる展開になった前半途中から存在感を失っていたエジルに代えてウィロック、そしておそらく決まっていたであろう、エンケティアに代えてラカゼットを投入。フォーメーションは変えずにバランスを保ちつつ、トランジション向きのメンバーになったかもしれない。

保持して時間を費やそうとするシティとカウンターを狙うアーセナルという展開に。

そして76分、アーセナルが同点に追いつく。オタメンディからの少し難しいバウンドのパスをカンセロがワンタッチでかわしにかかる。しかしそれがオーバメヤンにひっかかってしまう。オーバメヤンが持ち運んで逆サイドのペペへ。ペペはカットインしてシュートと見せかけ裏に抜けたラカゼットへラストパス。ラカゼットがエデルソンとの1対1で冷静にファーに流し込み同点。

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試合が振出しに戻った両チームはそれぞれ選手交代を行う。シルバに代えてフォーデン、マフレズに代えてベルナルドシウバを投入する。アーセナルは、セバージョスに代えてゲンドゥージを投入。

アーセナルは同点に追いついて息を吹き返したが、それでも展開は五分五分。少しオープンになってきて、お互いにシュートチャンスは得るが決めきれず。

そうして同点で終わるかと思われた90+1分。アーセナルが逆転に成功する。ゴールから40メートル近く離れた右サイドからセットプレー。ペペのインスイングの早いボール。オタメンディとフェルナンジーニョの間からピンポイントで合わせたのはダビドルイスの頭。

歓喜のアーセナルイレブンはそのままアウェイまで駆け付けたファンとゴールの喜びを共有する。ベンチに下がっていたエジルやセバージョス、ベンチに復帰したナイルズらベンチメンバーも駆けつけひっちゃかめっちゃかに。それだけこのゴールが意味するものは大きかったのだろう。

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試合はそのまま終了し、アーセナルとしてはこのエティハドで久しぶりの対ビッグ6アウェイ戦の勝利を飾った。

一方シティは、ユナイテッド戦に続き連敗となった。

雑感

試合全体を通してみると、シティがペースを握っている時間のほうが長かったが、結果的にはシティの負けで終わってしまった。

シティがより一歩先に進むためには、ペースを握るだけでなくチャンスを決めきる、あるいは脈絡のない失点を減らす必要があるのではないか。そのためにはやはりチームの戦い方よりも選手の質、特に最終ラインのてこ入れは必須だと考えられる。

アーセナルは、序盤はかなりよかった。おそらく、現在のペップのサッカーをだれよりも深く知る男だからなせる技なのではないか。

それでも、率いている年数の差なのか、すぐにプランBに切り替えられたペップシティ。アルテタアーセナルはそれに対する効果的なプランBは持ち合わせていなかった。試合には勝ったがチームの力の差は浮き彫りになった。

ただ、アルテタの采配も目を見張るものがあった。エジルとエンケティアに代えてウィロック、ラカゼットを投入した場面である。エメリやボスなら後ろのどこかを削ってファイアーになりそうな場面でもフォーメーションは崩さず、バランスを保つことを重視した。今回はそれが良いほうに出た試合だった。

これは個人的な邪推だが、シティはバランスの崩れたチームにはめっぽう強い印象がある。(ワトフォードの6点とかチェルシーの6点とか)アルテタはシティ時代に相手のファイアーフォーメーションにほくそえんでいたからこそ、敵としての立場ではバランスを重視したのかもしれないと思った。

我らがアーセナルは次節もアウェイでブライトンが待ち受けている。最近、調子が良くないイメージのあるブライトン相手に勝利してプレミア5連勝してもらいたいところだ。

あとがき

マジで試合があったかのようにレビューを書いてみた。暇すぎて思いついたのだが、思ったよりはるかに楽しくすいすい書くことができた。試合がある日常が戻ったかのように錯覚してもらえるとありがたい。


早く観客が満員のエミレーツでアーセナルの試合が見れますように。

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