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【アートのミカタ14】宮本武蔵 Musashi Miyamoto

【人物】剣術/兵法/芸術家

江戸時代初期(天正 12年/16世紀-17世紀)の大剣豪であったことを知る人は多いと思います。
しかし宮本武蔵が剣術を教授する兵法家であり、はたまた剣術を極めた行先に芸術的思想を見つけ、芸術家としての才能を開花させた事実をご存知のかたはどれほどいるでしょうか。

江戸後期の書物『画道金剛杵』の『古今画人品評』という項に、数々の画家と名を連ねる程でした。
「気象を以って勝るものなり」
と評されていたとのこと。現代訳するならば「気性によって成功した」ところでしょうか。彼の天才ぶりが伺える一文です。




謹んで新年のお慶びを申し上げます
2018年秋より始めたこのブログ。新年一発目に相応しい人物で開幕させていただきます。今年もどうぞよろしくおねがいいたします。

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なぜ美的センスを磨くのか。科学の発展に伴い、心を作る芸術的思考もより広く知ってもらいたい。
このブログは、歴史上の偉大な画家たちをテーマに、少しでも多くの人にアート思考を築くきっかけにならないかと書いています。
まずはそれぞれの画家の特徴を左脳で理解し苦手意識を払拭するのがこのブログの目標です。その後展示等でその画家に触れる前の下準備として御活用下さい。私たちの味方となり、見方を変える彼らの創造性を共有します。

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宮本武蔵坐像
目次
【人物】剣術/兵法/芸術家
【背景】武芸の真髄を解く
【核心】極意の全ては繋がっている

【背景】武芸の真髄を解く

江戸後期に描かれた13歳の宮本武蔵です。鬼のような形相は、幼いながらも有馬喜兵衛との決闘で勝利したというエピソードを元に作成されたそうです。

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彼の強者としてのオーラがひしひしと伝わってくるようです。
時代が上ると、歌舞伎の主役が武蔵をモデルに作られるなどされていたそうなので、美青年に描かれていますが。(余談ですが、バガボンドもイケメン)私はこちらの鬼のような形相が、武蔵の威圧感とか他に類を見ない、研がれた精神を思わせてしっくりきます。

ではなぜ、宮本武蔵が刀を越えて画家としての才能を発揮できたのでしょうか。
それは、彼が刀の極意をまとめた「五輪書(ごりんのしょ)」にヒントが隠されているのではないか、と考えています。(以下、要約させていただきました)


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五輪書(いつか読んで見たかった日本の名著シリーズ5)

《地の巻》
武芸は剣術だけをマスターしようとしていたら駄目。それはただのノウハウ人間である。大から小を学び、浅い所から深さを学ぶ心構えが大切である。これから武芸の道をいく地ならしの部分が書かれている。

《水の巻》
心を水にする。平時も戦も少しも心が変わることなく、広くて素直な心でいること。また知恵をつけることと、身体の姿勢について大切に書かれている。
姿勢を常に正しく保つことを1番に修行しなさいとのこと。

《火の巻》
火の如く、大きくも小さくもなります。瞬間的な判断が重視され、それは普段の蓄積によるものであるとのこと。
太陽を背にし、間合いを読む。相手の出た刀を足で踏みつけるようなタイミングで応じること。

《風の巻》
他の流派を知ること。ライバルを知らなければ本当の道とは言えず知らぬうちに歪んで行く。ここではライバルの解説が書かれている。

《空の巻》
良い方法を見つけ、しかしそれに囚われない「空(くう)」の境地。
その時その時に身を任せ、自然と歩む道のこと。

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『枯木鳴鵙図(こぼくめいげきず)』宮本武蔵(約1584年-1645年)

【核心】極意の全ては繋がっている

五輪書が、武芸に限らず全てに通ずる法則であることがよく伝わってきます。
例えば剣術の間合いの取り方、勢いのコントロールの仕方が、筆使いに生きているように感じます。

武蔵の水墨画には、一筆も無駄がありません。
これまでこのブログでは、西洋絵画の油絵作品を多く扱ってきましたが、水墨画は油にはない良さを感じることができます。
水墨画にも「水墨道」のように、道をつけたくなってしまいます。

『枯木鳴鵙図』では中央に位置する芋虫と上部の雀?の様子を描いた緊張感のある作品です。
恐らく芋虫がここまでゆっくりと登ってきたのでしょう。辺りには何も視界に入らず、ただ葉もない枝の先を目指していたのでしょうか。もしかしたら、描かれてない枝の先に葉や水滴があったのでしょうか。はたまた、足元しか見えていない芋虫を描いているのでしょうか。

そこに音もなく現れた鳥に、芋虫はどのタイミングで気づくのでしょう。
早ければ次の瞬間、身体を地に落として逃れることも出来るかもしれませんね。



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『布袋図(部分)』 宮本武蔵

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『蘆葉達磨図』

一つの道を極める先に何が待っているのか。あるいは「一つ」が実質一つではないことを、宮本武蔵の水墨画では知ることができるでしょう。

余談ですが、最近、某力士の息子がいろんな方面に手を出していることと、家族間の節目が重なってしまい、メディア露出をしておりますね。
彼にも是非、五輪書を読む機会があることを願います。

ここまで読んでくださってありがとうございます。
画家一人一人に焦点を当てると、環境や時代の中で見つけた生き方や姿勢を知ることができます。現代の私たちにヒントを与えてくれる画家も多くいます。
また次回、頑張って書くのでお楽しみに。


展示会情報

常設展示、島田美術館(熊本県熊本市西区島崎4-5-28)

いつもたくさんのご支援・ご声援、ありがとうございます。