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”何もないけど何でもある”ゼロから生まれる無限の可能性を信じる「VILLAGE INC.」

今回のインタビューは、前回の記事「伊豆下田をもっと面白く!NanZ VILLAGEの梅田直樹さんが語る、ここまでのこと。そして、これからのこと。」に出てきたキーパーソン、VILLAGE INC.代表の橋村和徳さんだ。

その日はちょうど下田で「SHIMODA RENDEZVOUS(下田ランデブー)」というイベントがあり、そちらに参加されているとのことだった。

下田ランデブーは、ヘリコプターへの搭乗やクルーザーへの乗船体験、そしてたくさんのスーパーカーを間近で見ることができるラグジュアリーなイベント。NanZ VILLAGEも出店者として、そのイベントの盛り上げ役を担っている。

イベントを楽しむ人たちの中からなんとか橋村さんを見つけ、無理を承知で取材交渉。なんと、快くOKをいただいた。

〈聞き手=長濱裕作〉

VILLAGE INC.のそもそもの始まりは、子ども時代の「秘密基地」

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▲VILLAGE INC.代表の橋村和徳さん。いきなりの依頼にも関わらず、快くインタビューをお受けいただいた

ー実はNanZ VILLAGEの梅田さんからお話をうかがう中で、どうしても橋村さんやVILLAGE INC.のことがもっと知りたくなってしまいまして。今日は突然のインタビューにも関わらず、お受けいただきありがとうございます。

こちらこそ、興味を持っていただきありがとうございます。

ー橋村さんはもともと佐賀のご出身とうかがっていますが、なぜ下田に拠点を置いているのですか

まだ都内で会社員だったころ、「秘密基地」を探そうと思って、ヒマを見つけては海沿いをロケハンして回っていたんですね。

ー「秘密基地」ですか?

僕って佐賀県の唐津という港町で生まれ育って、もう生活そのものがアウトドアだったんですよ。

小学生の時なんかも、朝学校に行く前に海や川に行って魚や貝を獲って遊ぶんです。そして学校が終わればまた海に行く。

だから僕にとってはアウトドアが日常だし、キャンプなんかも当たり前。そして僕にとってのキャンプは、山というよりはビーチや島のイメージなんです。

ーなるほど、そのような海辺の遊び場を「秘密基地」と呼んでいるわけですね。でも、わざわざ自分で探さなくても、海辺のキャンプ場は色々あるように思うのですが……

今おっしゃったように海辺のキャンプ場を探したんですけど、だいたいがオートキャンプ場なんですよね。

区画された場所に押し込められてキャンプをしなければならない。そんなの全然楽しくないな、と感じました。

そこで思いついたんですね。

「無いんだったら自分のキャンプ地を探そう」

「大人の秘密基地を創ろう」

それで、後輩を連れて海辺のエリアに秘密基地を求めて探し回ったんです。

ーそれが伊豆半島にあったわけですね

そうです。そしてそこに不法侵入を繰り返して……

ーちょ、ちょっと待ってください!不法侵入ってどういうことですか?

その場所は船でしか行けないような場所なんですよ。誰のものかもわからない、だから不法占拠しますよね(笑)

ー普通はしません(苦笑)

そこを自分たちで草を刈って、素っ裸になって男だけで遊ぶわけですよ。漁師さんなんかが船で近づいてくるとモリを片手に威嚇して追い返したりね(笑)

ー全然笑えません(記事が公開できるか心配になってきた)

そんなことを2001年から始めていたら、ついに5年目にして地主さんに見つかったんです。仲間内でのキャンプ(通称プライベートフェス)は毎年8月の終わりに開催していたので、なんとなくマークしていたんでしょうね。

怒られると思いきや、「なんで俺の土地をキレイにしてくれるの?」って感じだったんですね。向こうからすれば、荒れ放題の草を刈って整えてくれているので「毎年夏になるとなんかキレイになるなぁ」と思っていたみたいなんですよ。

それで「この土地が大好きなんですよ!」ということを伝えて、正式に借りることになったんです。


秘密基地での体験を通じて、元気になった友人たちがどんどん出世した

ーなぜプライベートで楽しんでいたアウトドアを仕事にしようと思ったのですか

最初は自分と後輩2人で始めたプライベートフェスですが、自然の中で火を囲んで過ごすと共通体験が育まれ、仲間感が強まるんですよ。噂を聞きつけて、年々参加者が増えていきました。

さらに、そのような体験をすると、日常に戻ったときに活力が生まれるんでしょうね。みんなどんどん出世していったんですよ!(笑)

そんな仲間たちを見て、「これはすごいぞ」と。

そのときから何となく、これが俺の天職になるかもしれないな、と思っていましたね。

ー家族を抱えながらの起業はハードルが高かったと思うのですが、何かきっかけのようなものはありましたか

僕は仕事の都合で2007年から2年に渡って上海にいたのですが、結果的にそこでの暮らしがVILLAGE INC.の立ち上げを早めることになりました。

とにかく向こうの生活環境が悪かったんです。

空気が汚くて、スモッグもすごい。気が休まる公園はまず無いし、あったとしても粉塵が積もっている。

日本だと東京から気軽に行ける自然豊かな場所がたくさんあるのに、上海には無いんですよ。

「こんなところではやっていけない」

そう思いました。そこで妻に「このまま上海か、それとも伊豆で暮らすかどっちがいい?」と聞いたところ、「伊豆」と答えたんです。

それで35歳のときに会社を辞めて、今のアウトドアベンチャーを立ち上げました。


<h2>1人でゼロから開拓をスタート。理由は、ただ「やりたかった」「驚かせたかった」から</h2>


今までは自分たちだけで好き勝手に遊んでいたキャンプ場ですが、ビジネスにするのであれば、まずはインフラをしっかりと整えなければなりません。

それで、1人で開拓を始めました。

広さが野球場1面くらいあるので、とにかく大量の草を刈って野焼きして。丸2年かかりましたね。

ー2年間お1人で!?仲間を呼んで一緒にやればよかったのでは?

1人でゼロから作りたかったんですよ。それに、みんなをアッと驚かせたかった。

と言いつつも、1人での作業が不安でビデオを撮っていたんですよ。誰かに見られていると安心するので(笑)

こんな感じで作業していましたね。

▲この作業を1人で2年間……やっぱりちょっとおかしい

誰とも連絡を取らずにモクモクと作業してたので、「あいつはすごい儲かってセミリタイアして自給自足してるらしいぞ」みたいな噂も立ったようです(笑)

まあ、そんな感じで2年間蓄えを食いつぶしながら場所を整備していたわけなんですが、「収入も無いしそろそろヤバイぞ」となって営業を始めたんです。それが2011年のことですね。

1日1組限定、船でしか行けないキャンプ場「AQUA VILLAGE(アクアヴィレッジ)」をオープンしました。


AQUA VILLAGEの人気が高まり、「グランピングブームの先駆け」と呼ばれるように

ー具体的にどんな形で利用できるキャンプ場なんでしょうか

キャンプ場といっても、普通のキャンプ場とは違うんですね。

弊社の名前にあるように、お客さんには「村(VILLAGE)」を作ってもらうんです。つまり、借りた人が「村長」で、参加者は「村民」といった位置付けになります。そして全員で自分たちの好きなように村を作ってもらうんですよ。

周りに誰もいませんから、いくらでも騒いでOKですし、やろうと思えば何だってできますよ。

だから僕はこの場所を「何もないけど何でもある」と言っているんです。

ゼロから自分たちで作り上げる、だから何でも生み出せるんだよ、と。

AQUA VILLAGEは、まだ「グランピング」という言葉が無かったときにスタートしました。

なので、提供しているサービスがなかなか認知されづらい部分もあったんですね。

でもちょうどSNSなどが使われ始めた頃で、感度の高いお客さんが「ヤベーとこあるぞ」と見つけてくれたんですよ。

そうやって徐々に知名度が高まり、2015年くらいから始まるグランピングブームの先駆けとしてラベリングされるようになりました。


<h2>求めている人材は「常にどうやったら実現できるか」という視点を持っている人</h2>
ー営業を始めてからは、さすがに1人ではやっていけないですよね

2011年のオープン時は1人だったんですが、2012年に最初のスタッフが入りました。今は全部で12名の正社員、アルバイトや業務委託を含めると18名くらいですね。

ちなみに最初のスタッフは「茶屋」というんですが、元ゲストで村長だったんですよ。それがきっかけとなって、そのままスタッフになってくれました。

ー採用はどのように行なっているのですか

うちは基本的にリファラル採用(紹介採用)をしています。リアル、バーチャル問わず僕とつながりのある推薦者2名から「リファランスレター(推薦状)」を書いてもらって、それを持って申し込んでもらう流れですね。

なので、まったくつながりが無い状態で自分が面接をすることはありません。今いるスタッフも、人と人のつながりの中から、VILLAGE INC.のミッションに共感してジョインしてくれています。

▲2016年にVILLAGE INC.が作ったリクルーティング用のコンセプトムービー。めちゃくちゃカッコイイ……

VILLAGE INC.の採用ページも、色々な条件が書かれていておもしろいですね

ここにも書いてあるように、「常にどうやったら実現できるか」という視点を持っていることをとても重視しています。

なぜなら僕は、できない理由を言う奴が一番嫌いなんですね。

どうしても人間って、できないことをあたかも正論のように言う人が多いんですけど、それは言い訳にしか過ぎなくて。

できないことがあるのであれば、どうしたらできるかを考えたらいいだけじゃないですか。困難があれば、どう乗り越えるか、知恵を絞るじゃないですか。

僕は障害とかハードルは、むしろ成功の種だと思っているんですよ。


3H(僻地・秘境・変態)を活用して、新しい「ワークスタイル」と「ライフスタイル」を実現したい

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▲VILLAGE INC.が関わる事業は全国に続々と展開している。ホームページを見てみると、どれもお洒落でワクワクするようなものばかりだ

ー今後伸ばしていきたい事業はあるのでしょうか

3H(僻地・秘境・変態)を活用して、ステレオタイプのものではない、新しい「ワークスタイル」と「ライフスタイル」の実現を目指しています。

ー「変態」とは(笑)

人材のことですね。普通の枠にハマらないような遊び心のある人間を、敬意を持って「変態」と呼んでいます。そして僻地と秘境。

僕は思うんですが、一般的に価値が無いと見なされがちなものにこそ、本当の価値が眠っているのではないでしょうか。

それらを活用して、みんなが元気になって欲しい。食材やアクティビティなど、周囲を巻き込んでいくことができれば地域の活性化にもつながります。

それに、今後バーチャルが進めば進むほど、リアルな非日常の価値が相対的に高まっていくと思うんですよね。

だからうちは、よりフィジカルなもの、リアルなもの、ウェットなもの、そちらにさらにフレていこうと考えているんです。

ー今回LivingAnywhereさんと一緒に、下田で新たなプロジェクト「LivingAnywhere Commons」を展開すると聞きましたが、それはどのような経緯で決まったのでしょうか

株式会社LIFULLの代表かつ一般社団法人LivingAnywhereの理事である井上さんが昨年4月、「REN VILLAGE(レンヴィレッジ)」にゲストでいらっしゃったのが最初のきっかけです。

うちのサービスを大変気に入ってもらい、その後すぐに僕が都内にお伺いしてうちの事業についてプレゼンしたところ、さらに意気投合したんですね。

この時に副事務局長の小池さんも同席され、LivingAnywhereを促進する拠点「LivingAnywhere Commons」を下田でスタートさせようという運びになりました。

ー茶屋さんもそうでしたが、人とのつながりや仕事、すべてが「秘密基地」を起点として生まれているように感じます……すごいですね

子どもたちに対する親の役割は「色々な働き方を見せる」こと

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▲下田ランデブーのイベント準備をするNanZ VILLAGEの皆さん。スタッフ同士でいつも楽しげに声を掛け合いながら働いている

>ーお子さんが2人いるとうかがいました。教育面ではどのようなことをお考えでしょうか

僕個人で言えば、いつもカッコよく、生きる指針を提示できるようにしておこうと思っています。自分自身のチャレンジする姿勢や、マインドの部分でしか伝えられないことがあると思っているからです。

しかし大きく言えば、親の役割は色々な働き方を見せることだと思います。

今の時代、いい大学に行って大手の企業に入ってという「こういったら成功ルートだよ」的なものは、もう終わっちゃったじゃないですか。

もう学校の先生も親も教えられない時代になっていて、自ら切り開いてもらうしかないと思うんですよね。具体的な手法論は自分たちで見つけてもらうしかない。

でも田舎だと、公務員や長年続いた老舗、家業などカタい働き方にフォーカスされがちです。なので僕たちにできるのは、子どもたちに、いかに「色々な働き方があるか」を見せてやることだと思うんです。

例えば、弊社の梅田の働き方なんかはまさしくそうですよね。長年続けた家業を辞めて、スペース運営やコミュニティづくりをしている。あんな働き方、まず普通は思いつかないじゃないですか。ー確かにほとんどの人は雇われることを目的としていて、「どんな働き方ができるか」までは考えが及んでいないかもしれません

でも僕は、決して雇われることがNGとは思っていないんですね。じゃないと組織は成り立たないですし、組織だからこそできる仕事もいっぱいあります。

だから起業も就職もあくまで手段。成し遂げたいことがあって、それにベストな手段を選べば良いだけです。

今回のプロジェクトに関わっているLivingAnywhere Commonsの小池さんや、Lancers(ランサーズ)の根岸さんとかもそうですよね。

ああいう風に変態だけど、起業ではなく、企業に属して組織を活用しまくる意味は間違いなくあると思います。

もちろん、「変態」はいい意味ですよ!(笑)

子ども心を忘れない。枠にとらわれない。非日常を通して日常を豊かにするVILLAGE INC.


橋村さんのお話をうかがいながらまず感じたのは、「まるで子どもみたいな人だな」ということだった。

だって普通「秘密基地探し」や「不法占拠」、「やってみたくて1人で開拓」なんて、大人がやろうと思ってもやれないし、たぶんやらない。色々考えたり調べたりして、もっとスマートでコスパの良いやり方を選ぶはずだ。

でも橋村さんは時間がかかっても、多少のリスクがあっても、ワクワクドキドキするような選択肢を選んでいる。たぶんそれは、橋村さん自身が子ども心を忘れていないからだろう。

そしてそんな橋村さんを見て、VILLAGEを訪れて、誰もが自分の中に眠っていた子ども心を見つけるのだ。おそらくNanZ VILLAGEの梅田さんや第一スタッフの茶屋さん、LivingAnywhereの井上さんがそうであったように。

そして例外なく、僕も橋村さんに魅せられてしまった。そしてなぜかこう思った。

「もしかしたら、僕もできるかもしれない」

具体的に何ができるのか、ということではない。ただ漠然と、自信と勇気が湧いてきたのだ。

そんな不思議な感情を芽生えさせてくれる橋村さん。今後のVILLAGE INC.がどうなるかが楽しみで仕方ない。

*********

取材が終わり、ふと横の事務所を見ると、第一スタッフの茶屋さんと思しき方がいらっしゃった。

それとなく橋村さんにうかがってみると「ああ、茶屋ですよ。ついでにインタビューしちゃってくださいよ!」とのこと。

とうことでさらに予定を変更して、次回はVILLAGE INC.に初めてジョインしたスタッフ「茶屋さん」をインタビューさせていただきます!

そして今LivingAnywhere Commonsでは、VILLAGE INC.や橋村さんのような、好きな場所でやりたいことをしながら暮らす生き方を実践するメンバーを募集しているとのこと。僕もこの2日間、LivingAnywhere Commonsで会う人会う人本当に楽しそうに働いていてワクワクしっぱなしでした!

LivingAnywhere Commons伊豆下田に少しでも興味を持った方は、ぜひ募集ページをチェックしてみてくださいね!

〈取材・文・撮影=長濱裕作(@hamalandspace)〉


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LivingAnywhere Commons

LivingAnywhere Commonsは、場所やライフライン、仕事など、あらゆる制約にしばられることなく、好きな場所でやりたいことをしながら暮らす生き方(LivingAnywhere)をともに実践することを目的としたコミュニティです。

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