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「ただいま」と帰りたくなる、人の温かさに包まれる場所

「定住」という暮らし方を解放し、「自分らしくを、もっと自由に」な暮らしの実現を目指す、『LivingAnywhere』。それを体験できるイベント『LivingAnywhere Week in 下田』に参加しました。

訪問前日は、なんと台風の関東直撃の日。東京近郊の鉄道は朝から運行を取りやめている状況です。

「この状態で現地に行けるんだろうか」

そう思っていた矢先、LivingAnywhere Commons伊豆下田(以下LAC伊豆下田)から一通のメールが。翌日は朝から伊豆急河津駅まで運行し、その先はバスでの振り替え運転を行うことになったようです。

伊豆急行と密に連絡を取り続け、随時情報を提供してくれたLAC伊豆下田のスタッフに感謝し、翌日現地へと向かいました。

1日、いや数時間で打ち解け合えるフレンドリーさ

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1日目

前日教えてもらったルートで無事、伊豆急下田駅に到着。久しぶりの下田です。まずはチェックインをしなくては…と、レジデンス(宿泊施設)に向かいます。

ロビーらしきところに入り、受付はどこか戸惑っていると奥の方から元気な声。

「いらっしゃ〜い」

 Tシャツ、短パン、キャップのお兄さんが、飛んできて

「いやいや、どうもどうも、いらっしゃい」
「あの、今日からお世話になる佐々木と申します」
「はいはいはいはい、佐々木さん。よろしくです〜」

と、握手。手厚い歓迎(笑)。この方が、4日間何かとお世話になったLivingAnywhere Commons伊豆下田のスタッフ 梅田さんです。

チェックインが18時過ぎたため、とりあえずは腹ごしらえ、と夜の下田を散策することに。面白そうなお店がたくさんあって、なかなか決まらない。散策にもそろそろ疲れてきて、もうどこでもいいやと思っていた頃、遠くから「佐々木さ〜ん」の声。誰だろうと振り向くと、梅田さんが手を振っていました。

「こんばんは」と僕。そんな杓子定規なあいさつにかぶせるように「夕飯たべました?」と梅田さん。

「いや、なかなか入るお店を決められなくて」
「ならちょうどよかった。今スタッフみんなでご飯食べに行こうって出て来たんですけど、一緒にどうですか?」
「え、いいんですか?」
「全然大丈夫っす。行きましょ行きましょ」

と、流れるようにスタッフ軍団の一員となって『なかなか』さんというお店へ。

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地魚がメインのお店らしく、お通しは、なんと金目鯛の兜、すなわちお頭の煮付け。目玉の裏のとろりとしたコラーゲンがなんともたまりません。次から次へと出てくるお料理はすべて絶品。そんな中、

「下田と言えば、クレソンっすよ」
満面の笑顔で自信満々に応える梅田さん。下田在住ではないスタッフも多かったため、その場に居合わせたほとんどが、「クレソン???」という反応。

「ヒラタケクレソン、ヒラタケっすよ」
「ヒラタケ?キノコ?」
「違うんですよ。ヒラタケが作ってるからヒラタケクレソン」
「ヒラタケさん?」
「いやいやいやいや、ヒラタケはあだ名。ヒラヤマタケゾウが作ってるクレソン。これがうまいのなんのって」

全編満面笑顔のトークが続く梅田さん。これだけ熱く語られると、何だかものすごく興味が湧いてくる。結局みんなでクレソン談議が始まって、初対面で少し緊張していた僕も、自然にみんなの輪に入っていました。

最近僕は、初対面の人と会うのが苦手になってきたなと思っていました。最近は一人でいることが多く、人と会うのが億劫になってきていたのです。ところが、このLivingAnywhere Commons伊豆下田に来て、たった1日で、いや数時間で、そんな思いがふっ飛びました。

あまりにも皆さんフレンドリー。すべてのゲストに対して同じようにフレンドリー、もしくはファミリー感覚で接しているのです。

仕事もしやすく人も優しい、嬉しいハプニング続きの下田

2日目

前日は嬉しいハプニングで、書こうと思っていた原稿に手を付けていなかったので、今日は早起きです。といっても目覚ましをかけたわけではありません。窓から入る朝日とその後の青空が、自然に僕を起こしてくれました。

シャワーでリフレッシュした後、部屋に戻り原稿に取りかかろうとしたのですが、畳の部屋には椅子や机がありません。そこで思い出したのが、宿泊しているこのレジデンス内にあるミーティングルームです。パソコン片手に出向いてみると、まだ早いこともあってか、誰もいません。

会議室としても使えるようになっているため、テーブルと椅子が置かれた広めのフリースペースとなっている部屋です。もちろんWi-Fiも完備されています。ちなみに全館完備のこのWi-Fiは、オンライン会議にも対応できる環境ですので、ネットの調べ物もサクサク動いてストレス無しでした。

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お昼前までに原稿を仕上げ、少し下田の街を散策しつつ、昼食をとります。食後に「うーん、満足」と思いっきり解放感に浸っていたその瞬間、頭に浮かんだのが、今夜のウェルカムパーティー。パーティーということは、当然、名刺交換となる。で、僕の名刺は…。あきらかに足りないのです。これは困った一大事。東京であればスピード名刺の専門店など簡単に見つかるのですが、ここは下田、そんな店などあるのか?

おそるおそるお店のおじちゃんに聞いてみると
「印刷屋なら、確か駅を越えた向こうっかわにあったと思うよ。マックスバリューの近く、その辺行って探してみな」

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近辺を徘徊していると、確かにありました。一軒の印刷屋さん。

「あのぉ、こちら名刺の印刷はやってますか?」
「はい、承っております」
「ちなみにスピード名刺とかは…」
「スピード名刺、ですか…、少々お待ち下さい、技術の者を連れて参ります」
えー、なんか大袈裟なことになったぁ〜。

技術担当、つまり印刷の職人さんがやってきたので、急いで名刺が欲しい、できれば夕方までにと伝える僕。困った顔の担当者。

「今、営業の者が出掛けておりますので、連絡を取りまして、お受けできるかどうか、見積もりはいくらぐらいになるのかを、佐々木様の携帯にご連絡差し上げてもよろしいでしょうか」

もちろんです。ありがとうございますと、ひとまず名刺を預けて印刷屋さんを後にしました。駄目だろうなぁと、半ばあきらめていたのですが、1時間ほどたって来た電話はOKの返事。しかも3時間で仕上げてくれるとのことでした。携帯片手に見えない相手に何度も頭を下げて感謝の意を伝えました。

レジデンスに戻り、スタッフさんにこの事を話すと、どこの印刷屋さんか教えてくれとのこと。

「お客さんが何か下田で困った時、どんなことでも力になれるようにしておきたいんですよね。佐々木さんのように名刺が必要だという人が出てくるかもしれませんから」

うーん、この意識が、LivingAnywhere Commons伊豆下田のホスピタリティの源なのですね。

レジデンスで少し休憩してから、名刺を受け取りにもう一度印刷屋さんに出向き、いざ、ウエルカムパーティー会場へ。雑談をしながら開始を待つ間に、次々とゲストも集まってきます。梅田さんに最初に紹介されたのが、例のクレソンのヒラタケこと平山武三さん。大袈裟に持ち上げる梅田さんの言葉に照れながら、「いやぁ、ただの農家ですよ」と謙遜しながらのご挨拶。

他にも、LivingAnywhere Commons伊豆下田のリノベーションを支える現場の第一人者なのに、こちらも「ただの電気屋です(笑)」と謙遜する森英一さん。伊豆下田法人会の事務局長であり下田の龍馬研究の専門家でもある石垣直樹さんなど、地元の方々も大勢詰めかけていました。ちなみに会場で出された新鮮な魚介も地元の方々が提供してくれたもので、それを調理してくれる料理長も下田屈指の板長さんとのこと。こんなところからも、LivingAnywhere Commons伊豆下田が地元密着型であり、アットホームな運営であることがうかがえました。

また、ゲストも多種多様です。これからの住環境を考えるプロフェッショナル、コミュニケーション事業を展開する会社の代表、サイパンやグアムにも事業展開をしている企業の代表、CGイラストレーターであり建築デザイナーでもあるアーティスト、福岡からは西日本新聞の記者さんもいらっしゃいました。

いろんな立場のいろんな仕事をしている人たちが、日々の仕事にとらわれない自分だけの時間を過ごすために、LivingAnywhere Commons伊豆下田という場に集まってきた。そんな印象を受けるパーティーでした。それにしてもこの人数、名刺作っておいて良かった〜。

古き良き文化を残す下田でワーケーション

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3日目

今日は午後から東京で打ち合わせがあるため、下田に居られるのは午前中のみ。頑張って早起きして、ちょっと下田を観光してみます。せっかくですので海に出掛けて、そこから定番のペリーロードを散策。それにしても古民家が多い。しかもまだ普通にみなさん生活しているのがスゴイ。江戸末期から明治、大正にかけて作られた古民家が、市街地にこれだけ普通に残っている場所も珍しいのではないでしょうか。

出発前に一仕事と、NanZ VILLAGEの共有スペースに向かうと昨日お会いしたゲストも含め、何人もの人がパソコンを開いて仕事をしていました。これがワーケーションの本来の姿なんだなと、改めて認識させられる風景でした。

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みなさんの熱に刺激され、僕も一気に企画書を書き上げるも、電車の時間ギリギリに…。しかし、NanZ VILLAGEの利点の一つが、駅まで徒歩5分の立地の良さ。みなさんに「行ってきま〜す」とご挨拶し、走って3分。どうにか間に合い、東京へと向かいました。

「次は必ず長期滞在を」心に誓う別れの時

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最終日

前日の東京での打ち合わせも無事済ませ、下田に戻って今日は最終日。せっかくの最終日なので、ランチも兼ねてロープウェイに乗ってみることにしました。

実はこのロープウェイ、2019年8月にリニューアルオープンしたばかりで、寝姿山山頂駅にはレストランが新規オープンしたという触れ込み。そこでランチを食べてみようと思ったわけです。ちなみに、寝姿山は女性が仰向けに横たわっているように見えることからきた愛称とのこと。山頂から見える雄大な風景は“伊豆三景”の一つとされています。

山頂駅を降りるとすぐにお目当てのレストランが隣接されていましたが、ぐっと我慢してまずは一通り散策を。下田港を見わたす風景は確かに絶景でした。さすが“伊豆三景”です。

そしていよいよレストラン。店内のほとんどが木材で作られ、組子や寄せ木細工などの伝統工芸や、ステンドグラスなどが各所に散りばめられた贅沢なデザインは、目を見張るものがあります。

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しばし感動しながら店内を見わたしていると、レストランのスタッフさんが笑顔で近づいて来て説明してくれました。まずはデザインに驚いたことを告げると、デザインは、伊豆急の“ザ・ロイヤルエクスプレス”を手がけたデザイナー・水戸岡鋭治氏。九州の豪華列車“ななつ星”を手がけた方でもあるとのことです。

寝姿山での出来事に感動してレジデンスに戻ると、みなさん翌日からはじまるイベント準備のために忙しく動いていました。今回はスケジュールが合わなくて、どうしてもイベントには参加できません。

なぜあと2日スケジュールが調整できなかったのだろう。そんな思いを梅田さんに伝えると、

「佐々木さん、またすぐ下田に帰ってきて下さい。お待ちしてますよ」

と笑顔で慰められました(笑)。


後ろ髪を引かれる思いでレジデンスを後に。

「チクショー、絶対また来るぞ〜」

失意を決意に変えて東京へと旅立った次第です。

文:佐々木 桂


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