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福島県、宮城県で地域密着型媒体の編集長を10年間。現在、一般企業でマーケのお仕事をしつ…

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福島県、宮城県で地域密着型媒体の編集長を10年間。現在、一般企業でマーケのお仕事をしつつ、前職で仕入れた宮城県・福島県のグルメ情報をお届けします。その他、基本サブカルの中の人なので、気ままに映画や音楽のお話など。

マガジン

  • 東北、美味すぎない店。

    美味いけど美味すぎない。 美味すぎないからこそ見えてくる、ディープなお店のディープな魅力。

  • 人生で大切なことは、大体オリンピックが教えてくれた(仮)

    波乱のオリンピックを経て見えた景色を綴ります。価値観の強制なんて出来る人間じゃないので、あくまで自らの戒めとして。

  • タイタニック観たことない映画おじさん。

    邦画を中心にお送りする、おじさんのオナニー映画評。

  • グルメおじさん、宮城編。

    地元媒体の元・編シュー長がお送りする、みやぎの名店。

  • ピエール瀧はコカインおじさん

    2019年3月12日の瀧騒動。ファンにとっては余りにもショックな出来事を通じて、おじさんが色々考えてみるコラムです。

最近の記事

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美味しすぎない「まえがき」

スマホひとつあれば、誰でも美味しいカレー店に巡り合える。初めての店でもオーダーすべき看板メニューを知っている。あのラーメン屋のスープは平子節がポイントだし、隣の店の主人は有名ホテルの料理長だった。業務用スープを温めたラーメンなんか食べずに済むし、冷凍食品を揚げただけの洋食はサヨナラだ。むっつりとしたスタッフのいる店は華麗にスルーしよう。 そう、世の中は美味いものに溢れている。美味しすぎる店が飽和している。外食をしてはSNSに感想を書き込み、その一節を見かけたフォロワーが同じ

    • 美味しすぎない「焼肉定食」

      「ヨーコ…ソ…」 旧型のロボットが来店を歓迎してくれた。何かを配膳するわけでも、席数を問うてくるわけでもない。ただのロボットが寡黙に接客だけをし続ける。 店に入るとロボはもういないようだ。厨房にもロボの気配はない。メニューも特にロボ味はない。 仕方がない。今日は大人しく焼肉定食にしようか。 山道にあるものの、ひっきりなしに客が来る。配膳ロボットの故障なのか、どの席にもなかなか配膳がなされない。おかげで次々に席は埋まっていく。 配膳を待つ客らの目線がテレビに集まる。生バ

      • 美味しすぎない「フルーツプリン」

        喫茶店の男 この席に座るようになって、どれぐらい経つだろうか。寂れた町には似つかわしくないモダンな店内で、今日もブレンドを飲む。いつもの面子といつもの会話。みな漏れ無く腹が出て、頭は禿げ上がっている。まるで老人会のような装いに思わず眉をひそめる。 カウンターの向こうに居るママは同い年だ。私の老いに影を落とすように、彼女はキラキラとした光を放つ。未だ「客とママ」であることを慰める友もいるが、コーヒーをオーダーすれば少なくとも18時までは一緒に居られるのだから、決して悪い状態

        • 美味しすぎない「欲ばりセット」

          この店は、どこからコーヒーを卸しているのか。その意味合いはたったそれだけであり、むしろどこのコーヒーだからその店が特別に素晴らしいと言う印ではない。 なのに、キーコーヒーの鍵の画を見ると安心するのは何故だろうか。 大変失礼な言い草になってしまうが、この看板が出ている店が「美味すぎる」なんてことは経験上ほぼ無い。当然、全部では無いのだが恐らく無いだろう。 そして、こういう店で初っ端からカウンターに座るのは、流石に難易度が高い。ありがたいことに店もそろそろ空く時間だった。4

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        美味しすぎない「まえがき」

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        • 東北、美味すぎない店。
          45本
        • 人生で大切なことは、大体オリンピックが教えてくれた(仮)
          1本
        • タイタニック観たことない映画おじさん。
          12本
        • グルメおじさん、宮城編。
          24本
        • ピエール瀧はコカインおじさん
          5本

        記事

          美味しすぎない「カキフライ定食と鳥豆腐」出張篇

          コロナも落ち着き、最近では出張も増えてきた。とは言え、たまの銀座でぶらりと店に入るのも憚るので、今日はしっかり下調べをしてきた。有楽町駅にほど近い三州屋銀座本店でカキフライを食べるのだ。 妻に頼まれた銀座土産を片手に、もう一方にスマホを持って店を探す。きらびやかな街並みの奥に、カキワリの裏側に位置するように目的の店はあった。 足を踏み入れると「お食事ですかー?」と声がかかる。時計を見ると12:20。大衆割烹の肩書きは伊達じゃない。この時間でも酒をのむ輩がいるようだ。全くも

          美味しすぎない「カキフライ定食と鳥豆腐」出張篇

          美味しすぎない「サービスランチ」

          カランコロンカラーン 今どきコントのシチュエーションでしか聞かないような甲高い鐘の音がなる。細く薄暗い階段をのぼりドアを潜ると、徐に手の消毒を促された。今どきは仕方がない。さらに額に機械を当てて入店する。今さらだが、35度9分ということは無いと思う。 13時を過ぎたというのに、店内は強引なまでに薄暗い。女性店員の髪色や髪型が、さらに夜の空気を醸し出す。このヘアスタイルに巨大な胡蝶蘭がしっくりと馴染む。昼間から生ビールが配膳されている。 窓際に立てかけられたメニューにある

          美味しすぎない「サービスランチ」

          美味しすぎない「ナポリタン」

          駐車場になっているピロティの奥に喫茶店がある。数年前に一度来た。何年前かは覚えていない。複数あるメニューの中から、半ばゴリ押しにナポリタンを勧められた記憶がある。それから数年、別に行きたくなることもなく、かと言って忘れるわけでもなく、ズルズルと記憶の片隅に残るのが「美味すぎない」と思える所以でもある。 ドアを開けてもしばし何も反応がない。店の奥にあるカウンターで話に花が咲いているようだ。こちらの存在にふと気づき、若干気だるそうに席を案内しに来てくれた。 とは言え、客は私ら

          美味しすぎない「ナポリタン」

          美味しすぎない「ざる中華」

          本当は豚のリエットをパンに挟んだような、洒落たランチをする予定だった。でも、いつもと趣向を変えて市バスになんて乗ってしまったのが悪かった。仙台の街は路上駐車が多い。このままでは、予定より20分ほど遅れた到着になる。 そもそも、今日のメインはノルウェーの映画を観ることなのだ。だから13:15には映画館に辿り着きたい。気取ったランチなんてものは、大抵配膳が遅いだろう。調理の後に、洒落を生み出す作業が待ち受けているからだ。 うん、もう諦めることにする。ただし、映画の途中で腹が鳴

          美味しすぎない「ざる中華」

          美味しすぎない「チェンマイヌードル」

          縦に停めるべきなのか、横に停めるべきなのか。一台がギリギリ停まれるぐらいのスペースしかないのだから、別にどちらでもいいのだろうが、それでも何となく気を使う。 おそらくここは「喫茶エルガー」。でも、その入り口すらよく分からない。看板はある。しっかりと、そして異様な雰囲気でオープンと主張してはいる。あの茂みの向こう側に店がありそうではあるが、しかしどうにも自信がない。だから駐車の縦と横にも気を遣ってしまうのだ。 腰を屈めて前に進む。数メートルほどもない茂みが、まるで冒険のよう

          美味しすぎない「チェンマイヌードル」

          美味しすぎない「上ポークライス」

          幾ら歳を重ねても、知らない店に足を踏み入れるのは緊張する。そして、そこそこな年齢になってしまったからこそ、それを周囲に悟られないように取り繕うのだ。 よし、引き戸だな 押したり引いたりすることなく、スムーズに初入店を果たすだけで気持ちがいい。これだけで年寄の面目が立つ。多賀城駅の近くにある「食堂 大郷」に来た。今日は珍しくお目当てがある。上ポークライスを食べにきた。 席はそこそこに埋まっているのだが、お店はシンと静まり返っている。いらっしゃいませと歓迎されることもなく、

          美味しすぎない「上ポークライス」

          美味しすぎない「特製手打ち塩ラーメン」

          片側三車線の大通りを西に走る。カーナビにも認識されないほどの路地を左に折れ、少しだけアクセルを踏むとドン突きにラーメンを出す店がある。 「ま心 えんどう」 満車のスターバックスの向かいにあるとは思えない昭和の空気感。時空の歪みが心地よい。店の前に車を停めて暖簾をくぐると、まるで他人の家の居間が現れる。火曜サスペンスが流れるテレビとひたすらに寝る猫。ばあちゃんに誘われながら、至極プライベートな空間を抜けて席へ向かう。 広縁にとられた席に通された。奥に小さな台所が見える。オ

          美味しすぎない「特製手打ち塩ラーメン」

          美味しすぎない「Aの2番」

          スランプだ。 美味すぎない店と言うのは本当に難しい。最近はただ美味しい店が多いのだ。そこらの何てことのない飲食店でも普通に美味い。さらに例のウイルスの所為で、コミュニケーションが最低限まで切り捨てられてしまった。たとえ食べた感想が美味すぎなくても、会話も何もなければ、それはもう「美味くない」に程近い。本当に困ったものだ。 この店は最後の砦だ。自宅の近くにある洋食店。もしここがダメなら美味すぎない店は恐らく死ぬのだ。そんな気持ちで足を踏み入れる。大丈夫、ここは大丈夫なはずな

          美味しすぎない「Aの2番」

          我が愛しのアポロ

          19歳と8ヶ月。獣医さんに「人だったら丁度100歳ぐらいだった」と教えてもらった。8月28日13時10分ごろ、我が家のアポロが天に旅立った。大往生だ。でも悲しい。寂しい。正直どうにかなってしまいそうだ。 子どもが居ない我が家。気難しくて人見知りで、喧嘩っぱやいのにすごく甘えん坊で。飼い主に似てしまったスムースコートチワワは、若干毛深いながらも、少し鼻が黒いながらも、紛れもない「我が子」だった。世界一かわいく、よく出来た子だった。よく噛まれたけれども。 そんな小さな小さな我

          我が愛しのアポロ

          人生で大切なことは、大体オリンピックが教えてくれた(仮)〜序章〜

          オリンピックなんて無くてもイイんだ。 だからと言って、数年に一度の平和の祭典を無くそうというプラカードを持つつもりは全くない。寧ろテレビで放映していれば観るかもしれない。釘付けになることも、金メダルのシーンで感動する可能性も大いにあり得る。 でも私の人生においてオリンピックは必要ないんだ。 中学高校と部活に属してもスポーツに打ち込むことはなく、今もたまの休みに身体を動かすことすら億劫な人間だ。お気に入りの野球チームが調子のよい春の頃に、ビールを飲みながら観戦するのが関の

          人生で大切なことは、大体オリンピックが教えてくれた(仮)〜序章〜

          美味しすぎない「ロースカツカレー」にオムレツをトッピング

          それにしても暑すぎやしないか?吹き出す汗がマスクの内側を不快に濡らす。そうだ、世の中がこんな風になる前は、オリンピックの暑さ対策が騒がれていたんだった。毎年一年振りに思い出す。日本の夏は不快だったのだと。 汗を拭い、開店直後のドアを開ける。若干臭う風も冷たいから心地よい。A看板の準備を横目に席に深く腰掛けた。この店は光るべきネオンが光らない。ネオンが光る頃合いになると「カレー・ザ・ハウス三多賀」は扉を閉めるのだ。 それにしても「カレー・ザ・ハウス」の名である。アンドレ・ザ

          美味しすぎない「ロースカツカレー」にオムレツをトッピング

          帰ってきた、美味しすぎない「ホルモン定食」

          「その麻婆豆腐、ご飯にかけないんですか?」 友人にふと問われ、暫く会っていない母の顔を思い出した。食事中、厳しく躾けられた幼少期。お陰で茶椀の米はひと粒残さず食べるし、食事中のテレビはやはり悪なのだろう。両手は常に食卓の上にあるべきで、焼き魚は可能な限り骨だけを残す。納豆ご飯は茶椀を汚さずに食べ終えると褒められた。 そんな育てられ方をされたからか、どうにも白米を汚すのが苦手なのだ。 今日は仕事が立て込んでいたのでランチが遅れた。古い住宅街。鄙びた定食屋の前で何やら視線を

          帰ってきた、美味しすぎない「ホルモン定食」