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穂村弘『シンジケート』沖積社,1990年

現代の人気歌人、穂村弘さんのデビュー作。

1986年、俵万智が『八月の朝』で角川短歌賞を受賞した時。
次点だったのが穂村弘の『シンジケート』らしい。
今回も僕的にヒットしたのを載せる。


セクシャルなもの。

「酔ってるの?あたしが誰かわかってる?」「ブーフーウーのウーじゃないかな」
「さかさまに電池を入れられた玩具(おもちゃ)の汽車みたいにおとなしいのね」
回るオルゴールの棘に触れながら笑うおまえの躰がめあて


悪い男。

裏切りに指輪よ描けほほを打つバックハンドの軌跡の虹
裏切りの朝の香りはドロップの缶にそれだけ残した<はっか>


お下品。

「耳で飛ぶ象がほんとにいるのならおそろしいよねそいつのうんこ」
台風の来るを喜ぶ不精髭小便のみが色濃く熱し


ナーバスなもの。個人的にこの辺が一番すごみを感じる。

終バスにふたりは眠る紫の<降りますランプ>に取り囲まれて
恐ろしいのは鉄棒をいつまでもいつまでも回り続ける子供
闇の中でベープマットを替えながら「心が最初にだめになるから」


その他いろいろ。

抱きしめれば 水の中のグラスの中の気泡の中の熱い風
自転車の車輪にまわる黄のテニスボール 初恋以前の夏よ
暗い燃料(フェル)タンクのなかに虹を生み虹をころしてゆれるガソリン
パレットの穴から出てる親指に触りたいのと風の岸辺で
噴水に腰かけて語るライオンの世界におけるレディ・ファースト
「靴ひもの結び方まで嫌いよ」と大きな熊の星座の下で
査定0の車に乗って海へゆく誘拐犯と少女のように


彼のエッセイ等もいろいろ読みたいと思う。


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