人物画なら、エドゥアール・マネ。

 
名画といわれている絵を見ても、その凄さがわからないことがあります。一応解説や批評等を読んでも、そんなには絵の印象は変わりません。例えば、
「モナ・リザ」レオナルド・ダ・ヴィンチ作。自分はこの超名画に多少の興味はあっても、あまり好きな作品というわけではありません。
「ルーブルの女王」とか「史上最高の芸術品」なんて評価もあります。スフマートという、線をはっきり描かず色調変化により立体感を作る技法は、当時画期的な表現方法でした。と聞いても、レオナルド・ダ・ヴィンチが超天才だったとは思うけど、
なぜ多くの人々が「モナ・リザ」に魅了されるのか、自分にはよくわからないのです。ルーブル美術館で本物を見たら、「ウオーッスゲー‼」となるのかもしれません。一流芸能人を見た時のように。でも、そんな機会は自分にはなさそうで、美術鑑賞はせいぜい関東地方か、印刷物で楽しむかです。
 思うに、絵を見るポイントは人それぞれだとおもいます。まずは自分の好みで絵画を楽しめれば、審美眼というのも自然に養えるんじゃないでしょうか。『モナ・リザ』があまりよくわからない自分が言うのもなんなんですが。
『モナリザ』と同じように有名な作品で、エドゥアール・マネの『笛を吹く少年』。中学生の時、美術の教科書で見て、何かが引っ掛かりました。

『笛を吹く少年』1866年

  
 自分は人物画を見る場合、色々分析したところ、だいたい次の3つによって、作品への興味が決まってくるようです。

①人物の身体が正確に描かれている。
②人物の生活や性格が想像できる。
③人物が謎を保持している。
 
 ①人物の身体が正確に描かれている。
『笛を吹く少年』の少年は、右足に重心を置いているので、左足が少し前に出ています。それによって、左足には光があたりズボンのしわの影が強調されます。横笛を持つ腕の筋肉の緊張が、右腕の角度に表れています。こういう精密な表現の絵画を好むようになったのは、ふりかえると漫画、特に劇画調漫画の影響が大きかったとおもいます。

『北斗の拳』『シティーハンター』『AKIRA』
『スラムダンク』『ろくでなしブルース』。漫画と絵画では、ジャンルが異なるようですが、視覚表現の静止画という点では共通していて、強引にいうと、人物画を一コマの漫画としても見れます。
美術の専門家からしたら失笑かも知れませんが。

少年時代に受けていた、高画力でハイセンスな漫画の絵の洗礼は、人物画を見る時に根底でも作用しているんじゃないかとおもいます。
 
②人物の生活や性格が想像できる。

『スペインの歌手』1860年
自分は、上の男性歌手になんとも言い表せない親しみを感じます。白い紐靴の汚れや右足踵の破けに、彼の悲哀や不器用さを見て取れます。表情から
彼の性格は、陽気、素朴、幼稚、見栄っ張り、と勝手に想像してしまいました。

③人物が謎を保持している。
 ②のポイントを含めて、人物画は作品の人物がどんな人間なのかを、様々な視覚的情報を用いて表現します。背景、服装、小道具等。またその作品についての詳細な解説文があれば、モデルになった人物が誰なのか、わかる場合もあります。それでもなお疑問を感じる絵に、自分は興味を惹かれ、その絵を描いた画家をもっと知りたくなるのです。

『フォリー=ベルジュールのバー』1881~2年
エドゥアール・マネは病で2年程療養しながらも、絵画制作は続けていました。『フォリー=ベルジュールのバー』は晩年のマネの名作です。上流階級の人々が通うフォリー=ベルジュール、そこで働く女性が見せた表情。お客さんと接客中、こんな顔しないですね。こういう場面を実際に見たことはないですが、なぜか見たことある気がします。彼女の表情は、サービス業労働者の孤独と解釈できそうでも、それでは足りないと感じてしまいます。彼女から見て左後ろの男性が、空気と薄暗さによって霞んでいます。それに加えて、前髪をおろした金髪、マネ得意の黒色を明るく見せる手法は、彼女の存在を強調しています。
それにもかかわらず、彼女を見ていると、消えて居なくなりそうな切なさを感じます。一見気が強そうな顔立ちなのに、同時に繊細な人物なのかも知れません。
 
 漫画の中のストーリーのように、もしも人物画の世界がストーリーになり、自分がその世界に入り込んだら。『スペインの歌手』の彼になら気軽に話掛けれそうです。彼も陽気に語ってくれるとおもいます。しかし『フォリー=ベルジュールのバー』の彼女には話掛けれません。せいぜい注文を頼むくらいで、あとは遠くから眺めるだけです。バーの常連客のブルジョア紳士達にも、中々心を開きそうにない彼女。ところで、フォリー=ベルジュールは、当時の官営の総合劇場で、音楽や演劇等の文化の発信地として賑っていました。
マネだったら、バーの彼女に話かけたでしょうか?

 マネ「やあ。最近どうだい?」
 彼女「    」

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雨水南都

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コメント2件

『ろくでなしブルース』は大変ハマりまして、単行本を揃えていたのですが引っ越しの際に処分してしまって、とても後悔しています…でも読者プレゼントだった“太尊テレカ”は今も大切に持っているのですよ。他にも好きなモノ、共感するモノに共通点を見つけて嬉しかったです。
コメントありがとうございます。自分も今は色んな漫画を読みますが、この頃は、絵が上手い漫画=面白い漫画でした。読者プレゼントに応募されてたとは、かなりコアなファンだったのですね。
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