マガジンのカバー画像

短編小説とか妄想小説

15
突然浮かぶ妄想の世界をとらえて文字にしています。
運営しているクリエイター

記事一覧

かけひかない恋

アマゾンキンドルから6冊目の書籍を出版しました。 今までに出版してきた書籍はノンフィクションだったり、啓発的なもの、ビジネスのノウハウに特化したもの、エッセイ的なもので、創作を交えた作品は今回が初となります。 結婚、子育て、離婚、起業を体験してきたアラフィフの女性、塔子の突然落ちてしまった恋を中心に、若くはない女性の心情を描いてみました。 人生も後半に入ってくると、自分にとって必要なもの、無駄なものがハッキリとわかってきます。砂時計でいえば、下の部分の方が圧倒的に多い今、

Gmailのフォルダーに

ここのところ音声配信ばかりに夢中になっていて、文章を書いていなかった。それにしても毎日雨ばかりで外出も億劫で、家にいると妄想も出てくるし、文章が書きたくなってきた。 Gmailのフォルダーを断捨離しようと色々見てたら、自分で自分に宛てて書いた文章のフォルダー“notes”があり、そこにある文章が面白かったので少し紹介します。 【2018年冬】 ~彼の家に泊まっている娘からのメール~ 怖い夢をを見た。宮崎台の家に帰ったら、リビングに死体があった。バラバラ死体でその死んでいる子

NEWS SHOW

- 21:07 PM - 「相変わらず仕事してるの?」 「今も会社だよ」 「ニュース9見てる?」 「見てない。なんで?」 「私は朝の7時、お昼の12時、夜の7時のニュース見てるの。  ダイジェストがニュース9に凝縮されると思って」 「会社だからテレビは見れないよ」 「そうなの? こんな時だから見ればいいのに笑。  私はこれからスーパー行ってくる。お昼は混むから」 「家には帰らないよ」 そんなこと聞いてないのに。 教えてくれてありがとう。

追いかけたい派

料理男子(外国人) SNSでコメントし合うようになって、5年くらいになる男友達がいる。 海外の方で、料理が得意で、日本語も流暢。私は彼の(仮にTさんとしよう)手料理の記事を見るのがいつも楽しみだった。 「いつかお料理のオフ会しましょうね」とか「そのうちお茶でも」などとコメントしあっていたけど、タイミングが悪くてなかなか会うには至らず、時は過ぎていった。 なんとなく。 私が盛れた自撮り画像をUPする度に「いいね」をつけてくれていたから、気に入られてるぽいなとは、うっすら感じて

「年下に興味ないですか?」

PCに向かう私の右側から、コウキが覗き込んできた。 うすい口びるでペラッと笑う。 口角を上げて、もう一度覗き込んできた時、胸元のネックレスがさらりと鳴った。 こういう男は例外なくモテる。 しかもそれを自分で知っているから厄介極まりない。 だから邪険にしたいけど、可愛いからムリ。 横に座らせておいて、言うとおりに動くサマを、人様に見せつけたくなる子だ。 「仕事が立て込んでいてそれどこじゃないのよ」 「締め切りが近いんだから」 半ば苛ついてキーボードを打ち続けていると、大きな

いざという時に駆けつけてくれるひと

※このたび湘南へ引っ越しました。 「息子を独り立ちさせるべき。  もう22才なんだろ?  ひとりで引っ越したらいいさ。  …ま、キミにはできないだろうけどね」 そう言われたのが悔しくて、一人暮らしを決行した。 息子には「もう一緒には暮らせない」と告げた。 サラリと伝えたつもりだったけれど、本当は辛かった。 身を切られる思いで、悲しくて泣いた。 「やっぱり一緒に暮らそうか」と、何度も切り出しそうになった。 でも、このまま一緒にいるべきじゃない。 それだけはわかって

ビフォアサンライズと不思議な出会い

その映画はブダペストからパリへ向かう列車のシーンから始まる。ドイツ人の中年夫婦が恐らくどうでもいいことで、延々と言い争っている。ドイツ語なので、何を言っているのかわからない。雰囲気の悪い空気が車内を支配し、隣に座っていたソルボンヌ大学に通うセリーヌは、いたたまれずに席を移動。そこで出会ったのがアメリカ人のジェシー。物語はこんな会話から始まる。 「夫婦はお互いの声が聞き取れなくなるのよ。歳と共に男は高い声を識別できなくなり、女はその反対なの。聞こえなくなるのよ」 「だから殺し

聞き上手は流し台

 わたしは相槌を打つのが得意だ。   「うんうん」 「それで?」 「へぇ、そんなことが」 「なるほどねえ」 「そうだったんだ」    おそらくこの5つの言葉を使い分けるだけで、相手は延々と話し続けることだろう。誰に習ったでもないのに、わたしのこのスキルはかなり高く、周囲からは「聞き上手」として定評を得ている。    「前の旦那さんがアスペㇽガーだったから、自分は話さなくなったんじゃないの?」 そう指摘した友だちがいて、ハッとしたことがある。     自分の話を夢中になって喋り

いま、君の街だよ

「いま、キミの街にきているよ」 超多忙な彼から珍しいメッセージが入る。 夏の間はずっとベトナムのホーチミン 先週はボストンにいたはずだ。 そこまでは把握していた。 地球の裏側のブラジルにいようが 拠点の渋谷区にいようが どこにいても、なかなか会えることはないから 居場所は特に気にしなくなっていた。 そんな彼がいま、私の街にいる。 そのメッセージはつまり 「会えるよ」というニュアンスだ。 長年付き合っているうちに 言葉少なめな文章の中から 気持ちを汲み取ることができるよ

髪結い妄想

雨になりそうな日は湿気が多くて 髪のブローがなかなかうまくいかない。 くせっ毛の私には、なかなか厄介な天気だ。 「よし、決まったかな」 丁度ドライヤーを置こうとしたところに キミが部屋へ入ってきた。 「髪、うまくできたね。  でもここ、ちょっとハネてるよ」 となりにきて 細い指先で私の前髪を整える。 近くで見るキミの顔には 鼻の横に小さなホクロ。 あまり多くを語らない唇は 可愛らしく収まっている。 ついつい触ってみたくなり ほっぺをツンと突いてみた。

ハナレイ・ベイを観てきました

「普段何にもやってくれないんだから 洗濯ぐらいちゃんとやってよ」 19才の息子が母親に偉ぶるシーンがある。 このあと息子はハワイの海で事故死してしまう。 このシーンが印象的だったのと 原作が村上春樹であることから 必ず映画館で観ようと決めていた作品 「ハナレイ・ベイ」 果たしてあの世界を映像化することができるのだろうか。 原作はわずか42ページの短編小説で 1時間もかからずに読めてしまうのに どうやって2時間近くの映画にするのだろう。 色々疑問はあったけれど、 すべて

グッドモーニング トーキョー

金曜の朝、お向かいの道をお掃除中のおじいさんに 「おじさん、おはよう!昨日はありがとう☆」 と声をかけて出勤するママさんと 「ああ、いつもご馳走様…いってらっしゃい」 と挨拶を交わしているおじいさんを見かけて、幸せな気分になった。 短い会話の中に、お向かいさん同士のあったかな関係が伝わってきたから。 つぎの角を曲がると、今度は同じマンションに住んでいるパパさんに遭遇。 パリっとしたワイシャツで颯爽と「おはようございます!暑いですね~」と、すでに仕事モード、そして超気持ち

悪いコトをしたときは

君のやったことは、まるで何の意味もない。しかも悪いよ。いいかい、君は悪いことをしたんだ。わかるよね、悪いことをした時は、どうしなきゃいけないんだっけ? 何と言わなきゃいけない? 学校でも習ったよね? この言葉をきいた瞬間、弓をキリリと引いて、狙いを定めている緊張感が、ゆっくりと彼から伝わってきた。 キリキリと引かれた弓には、獲物をし止めるための銀色の矢が添えられている。ターゲットはもちろん、わたし。 ねえ、悪いことをしたんだよ。 そういう時はなんて言うの? "ごめんなさ

恋は錯覚

「基本的に恋愛は、一時的な気の迷いか、大きな勘違いで成り立っている。だから、皆別れるのさ。だから友達関係に別れはないけど、恋愛にはあるんだって思うよ」 「錯覚でもなんでもいいけど、こっちにはその時スキって気持ちが確かにあるんだよ? 錯覚だから相手にしてくれないの?」 「相手にするの意味がよく分かりません。…いつも相手にしてると思うんだけどなあ」 「いじわるすぎる」 「なんで?? 全然わからない。。。」 「私の前で淡々と、恋は錯覚とか、いつか終わる気の迷いとか、そんな