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バガヴァッド・ギーター

『バガヴァッド・ギーター』とは、サンスクリット語で『神の詩』という意味です。『バガヴァッド・ギーター』は、インドの霊的な聖典『マハーバーラタ』の大叙事詩の中の一部であり、一番重要なクライマックスの場面です。いとこ同士の関係であるパーンダヴァ側とカウラヴァ側との間で行われた18日間の戦争で、親族や師匠と戦わなくてはならず、戦意喪失したアルジュナに、霊的な教えを説いたクリシュナ神の教えです。『バガヴァッド・ギーター』はヨーガの哲学、ヴェーダーンタ哲学の中で、一番理解しやすい聖典といえます。

『バガヴァッド・ギーター』は、私たちの心の中で起きている善と悪・真実と虚偽・正義と不正義との戦いが、正義の象徴であるアルジュナ率いるパーンダヴァ軍と、不正や憎悪を象徴するカウラヴァ軍の戦いになぞらえてドラマチックに描かれています。

スワミ・シヴァナンダは、『バガヴァッド・ギーター』の拝読は、神の信仰と同等であるとおっしゃっています。人生で一番の試練や苦難において、ヨガの神であるクリシュナ神が、すべての人が人生で立たされる2つの対になる局面、楽しみと苦しみ、喜びと悲しみ、幸福と不幸、成功や失敗をどう乗り越えるのか、人間であるアルジュナを通して、全人類に教えを説いています。

日常の生活において、どんな状況にも動じずに、感情や感覚のコントロール、純粋な心を持って神への意識の向け方、あらゆる行動や仕事を神への礼拝まで高めること、そして霊的な最終ゴールである解脱に至るまでの方法がわかりやすく説かれています。また、目標に到達するまでの過程にぶちあたる壁を乗り越えるための識別と無執着の重要性、帰依と行動と英知の3つのヨガの実践方法を学べる最良の聖典です。ヨガの神様のクリシュナと、その信者であるアルジュナとの対話が、シンプルで美しい詩文によって語られています。

『バガヴァッド・ギーター』は、ヨガを探究していく人には、必須の聖典です。『バガヴァッド・ギーター』は繰り返し読むものです。そして読むごとに、心に入ってくる感覚がまた違ってきます。おそらく霊的・人格的成熟度により、霊的教えの感じ方や、心への染み入り方が違ってきます。

『バガヴァッド・ギーター』は、ヨーガ哲学、さらにヴェーダーンタ哲学の究極の教えともいわれています。それは、簡単に言うと、「人はなぜ、この世に生まれたのか?どこに向かうのか?」、「私は誰なのか?どこから来たのか?」、「私は何をすべきか?どこへ行くべきなのか?」の哲学的探求の答えです。

神はすべての人々の内在しているのですべての人々に奉仕することの大切さ、何ものも憎まずにすべての生きとし生きるものに慈悲深くあることが説かれています。意識を常に神へ向けて一体となる瞑想の大切さ。「私」や「私のもの」という感情を捨て、常に自分をコントロールして寛大でいつも満足し、喜びも苦しみも同じくとらえ平静であること。そして、人間の魂(ジーヴァ)の本質とは、究極的には神(パラマートマ)と同一であると説いています。人間と神が一つであるという境地に至るまで、さまざまな苦難艱難を経て多くの犠牲払って、最後は解脱に至る道筋がわかりやすく述べられています。

ヨガの最終目標である解脱に至るまでに3つの実践方法があります。カルマ(無私の仕事や行動)、バクティ(信仰)、グニャーナ(英知)の3つのヨガです。『バガヴァッド・ギーター』は、それら3つのヨガの重要性と実践方法を説いています。生まれきた出自や好みや特技や環境要因により、人それぞれ実践方法は異なりますが、最終的にはこの3つのヨガは1つに融合します。よって、3つのヨガのいずれも、理解と実践が重要です。

シヴァナンダヨガでは、『バガヴァッド・ギーター』を、最重要なヨガの聖典と位置付けています。シヴァナンダヨガTTC(講師養成コース)では、『バガヴァッド・ギーター』の学習は必須となっています。また、シヴァナンダヨガのクラスのアーサナ(ポーズをとる体操)やプラーナヤーマ(呼吸法)を完全にマスターした生徒さんは、次に学ぶべき魂のヨガとして、『バガヴァッド・ギーター』を学ばれる方も多いようです。

『バガヴァッド・ギーター』は、『ウパニシャッド』や『ブラフマ・スートラ』とともに、インドのヒンドゥー教の3大規範の聖典ともいわれています。『ウパニシャッド』や『ブラフマ・スートラ』はサンスクリット語の専門用語や、霊的に象徴的な深淵な意味が含まれていて、理解するにも非常に難解です。しかし、『バガヴァッド・ギーター』は、師匠クリシュナと弟子アルジュナの会話により、わかりやすく理解しやすい内容となっています。

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