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招魂ー金素月(キム・ソウォル)

粉々に砕け散った名前よ! 虚空中に別れた名前よ! 呼ぶも主のない名前よ! 呼び続け我が死ぬ名前よ! 心中に残る一言は 最後の最後にも言い切れず 愛していた彼の人よ! 愛していた彼の人よ! 赤い日は西山縁側にかかった 鹿の群れも悲しく哭く 離れ出て座った山の上で 我は貴方の名前を呼ぶ 悲しみの余り呼ぶ 悲しみの余り呼ぶ 呼ぶ声はすれ違うが 天と地の間が遠すぎる 立ったままここで医師になっても 呼び我が死ぬ名前よ! 愛していた彼の人よ! 愛していた彼の人よ!

    • 酒を勧める社会ー玄鎭健(ヒョン・ジンゴン)

      著者死後50年以上経っているパブリックドメインの作品でしたので、翻訳してみました。 原文:https://ko.wikisource.org/wiki/%EC%88%A0_%EA%B6%8C%ED%95%98%EB%8A%94_%EC%82%AC%ED%9A%8C 「あちゃ」、一人で縫い物をしていた妻は顔をちょっとしかめて細く鋭い音で叫んだ。針先が左手親指の爪の下を刺したからだ。その指は軽く震え、白い爪の下にさくらんぼ色の血が透けて見えた。 それを見る間もなく妻はすぐ針を取

      • 運のいい日ー玄鎭健(ヒョン・ジンゴン)

        著者死後50年以上経っているパブリックドメインの作品でしたので、翻訳してみました。 原文:https://ko.wikisource.org/wiki/%EC%9A%B4%EC%88%98_%EC%A2%8B%EC%9D%80_%EB%82%A0 つんと曇っている様子が雪が降りそうな感じがしたが、雪は降らずに凍りかけの雨がじめじめと降ってきた。 この日こそ、東小門前で車夫をしていたキム・チョムジには久方ぶりに訪れた運の良い日だった。都城内(そこも城外ではなかったが)に入ると

        • 狂炎ソナター金東仁(キム・ドンイン)

          著者死後50年以上経っているパブリックドメインの作品でしたので、翻訳してみました。 原文:https://ko.wikisource.org/wiki/%EA%B4%91%EC%97%BC_%EC%86%8C%EB%82%98%ED%83%80 読者は今から私が語ろうとしている話を、ヨーロッパのどこかで起きたことと思っても良い。もしくは、四、五十年後の朝鮮で起きることと思っても良い。ただし、この地球上のどこかでこのようなことが起きたかもしれない、あったかもしれない、もしくは

        招魂ー金素月(キム・ソウォル)