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陶技って、門外不出なの?

🍵お越しくださりありがとうございます!
🍵毎週木曜18時以降に更新しています。

🍵横浜の宝、眞葛焼開祖の宮川香山を
ぜひ覚えていってください。

今日のひとり言

たぬきの陶小物

以前、たぬきの小物を作っている個人作家さんがいるというお話をしましたが、その方とは別の陶作家さんで、先日たぬきの香合を発表したfacebookの陶芸愛好会というグループで作品を投稿されている瑞祥さんご本人の許可を頂いたのでこちらにシェアさせて頂きました。

本当に、このたぬき可愛いですよねぇ……
瑞祥さんご本人に似せたそうですよ…ふふ…

でなんですが、これも以前お話しましたが、
初代香山も、たぬき小物を作っていた時代があるのですよ。
最晩年、亡くなる3年程前に初代が立ち上げ、3カ月間だけ製作された幻のブランドです。
狸亭というブランドなんですが、メチャクチャ可愛いんです。私が同じ時代に生まれていたら、買い求めていたことでしょう。

こういう小物類は、香山は大物の高浮彫の花器などよりも沢山作っていたといいます。

横浜の陶作家さんの中には、小物類をメインに販売していらっしゃる方も多いでしょう。
そういう方に、眞葛焼の写しを作ってもらって、眞葛コラボとして販売してもらうなんてどうでしょうか。眞葛ファンです!!と大々的に広告してもらうのです。

……実はですね、眞さんに眞葛の写しを作る活動を考えていますとお話した時、

「眞葛の写しを作ったところで、本家としてありがとうとは思わないよ。もっと発展したものでないと。半端なクオリティじゃ、私はとても納得できない」

と仰っていたのです……
ただこれは、眞葛焼復興の手段として私がご提案したことへのご回答で、復興ではなく、普及活動の一環としてなら、ご了承いただけると思うのです。
この普及活動には、さまざまな人々の協力や許可が必要であり、まだまだ色々と様子を見つつですが、一歩ずつやれることを探すのみです。

陶技って、門外不出なの?

個人で陶芸をしている方のほとんどは、独学でやっていると思います。
大きな窯元の門戸を敲かない限り、このように作りなさいという指示を受けずに、自由に作陶を楽しむ。それで何年か経験を積むと、もうかなりの良い出来の物が作れるようになる。

陶というものは、道具などを揃えるまでは大変ですが、技術に関しては自分で納得できるレベルになるタイミングは割と早く来ます。

でもそれは、あくまで、独学のレベルです。

土練り3年、ろくろ10年、窯焚き一生

なんて言葉がありますが、
商用でニーズに合わせる品を作るとなると、
こんなに険しく長い道のりになります。
陶工にせよ、陶芸家にせよ、趣味を脱したいのなら、
ちゃんとした人から教えを請いたいですよね。

そこで今回のお題です。
陶技って、門外不出なの?

結論から申し上げますと、
「はい」
となります。
陶技は門外不出です。

文献を調べると、各国で新技法が出るたびに、皆で四苦八苦してその技術を修得するという流れがあったことが読み取れます。

  • 明治26年のシカゴ万博で、ロイヤル・コペンハーゲンが結晶釉の作品を発表して大好評。以降、各国の窯業地で研究が進められるようになった。日本でも明治30年前後から研究が進み、香山は明治36年にはその製法を修得していたと思われる。

  • 主に行政官や技師だった先駆者たちが科学的釉薬を研究していたのに対し、現実工房を経営している実践家、初代香山は、新技術の実際的応用に優れていた。

  • 明治30年代の彩磁「色入菖蒲画花瓶」は、正にこの特色が出ている。
     それゆえ、初代香山の元で修業した次世代の陶芸家たちは、彼から釉薬を始めとする新技術の実用法を学んでいった。彼もそれにこたえるように、技術習得者たちに、修業証を授与している。

香山がすごいのは、何十回何百回とトライ&エラーを繰り返して、
色彩図を自力で構築したことです。
しかも、その技術を弟子たちに惜しげなく伝え、
あとの助けになるように修業證まで書いてやる。
香山が次世代へ期待していたこと、
未来への貢献が資料からも汲み取れます。
資料によると、弟子の可愛がり方は無類で、
割と待遇も良かったとあります。
弟子たちから愛称で呼ばれ、とても慕われていたとか。
推しに惚れ直す瞬間、ってやつですね……💗

眞葛の精神は、今もどこかで息づいているのかもしれません。
その痕跡を探し、そういう人たちに、眞葛を語り継ぐためお力を貸してくださるようお願いする。今後はそこにも力を入れていきたいと思います。

🍵最後までお読み下さりありがとうございました!!
🍵これからも一歩ずつ活動いたします。



参考資料:

「みなと横浜が育てた眞葛焼」発行 横浜市教育委員会(文化財課) 1989年
「横浜美術館叢書7 宮川香山と横浜真葛焼」著 二階堂充 発行 株式会社有隣堂2001年
「大日本明治の美~横浜焼、東京焼~」著 田邊哲人 2010年
「世界に愛されたやきもの―MAKUZU WARE眞葛焼 初代宮川香山作品集」著 山本博士 2010年
「宮川香山 眞葛ミュージアム ガイドブック 幻のやきもの 眞葛焼」編著 山本博士 2014年
「初代宮川香山 眞葛焼」編著 山本博士 発行 宮川香山眞葛ミュージアム 2018年
「神業ニッポン 明治のやきもの 幻の横浜焼・東京焼」監修:荒川正明 2019年

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