(不定期連載)東京食べ物探訪記~土手の伊勢屋編~

上野駅に行く。そこから銀座線で3駅行くと、三ノ輪という駅がある。駅名の由来は知らぬ。三輪車の生産基地だったのかもしれないし、三ノ輪一族がたむろする三ノ輪城がそびえていたからかもしれない。とにかく三ノ輪は三ノ輪だ。
そんな三ノ輪駅駅から徒歩で約480m歩くと、なぜだか明日のジョーの像が立っている。ジョーは三ノ輪の生まれなのかもしれない。
ここまで三ノ輪三ノ輪と書きすぎた。本題に入ろう。
明日のジョーの像からさらに20m歩くと、そこに「土手の伊勢屋」はある。

↑こんな看板が出ている。

店は古きよき時代の伝統建築であり、なんでも空襲の被害も受けずに生き残ったとのこと。すりガラスに、海老の模様が描かれているのも面白い。
店の周りにはたいてい行列ができている。休日はもちろん、平日もである。それだけ人気がある証拠であり、同時に人がなかなか入れないということである。私が行った際には、まだ2時前だったのに私で札止めであった。大雨の日であったにも関わらずである。
30分並んで通された。店内の写真はない。撮るのが面倒だったからである。年季の入った木造建築と、壁掛け時計が印象的であった。
天丼はイロハに分かれている。イとハはうまい。食べたからわかる。ロはわからない。食べてないからわからない。最初の写真が天丼イ。これに季節の野菜やら穴子やらがついたのが天丼ハ。ロはたぶんその中間くらいだろうが、食べたことがないからわからない。もしかしたら、象のしっぽ入りの天丼とかかもしれない。
味噌汁は別オーダー。お吸い物もオーダーできる。漬物は勝手についてくるが、ビールはもちろん別オーダー。たしか黒ラベルしかなかったはず。
では、肝心の天丼の味はどうかというと、天丼だから天丼の味がするのである。ただし、油のキレがよく食べてもあまりもたれない。油がいいのだろう。穴子の味も大変よろしい。おいしい穴子の味がする。店内に水槽があって、そこで穴子を飼っているらしい。新鮮なわけだ。
隣の畳席はカップルだったが、「もう食べられない」「もう食べられない」を連呼して、かなり残していた。胃袋の小さな連中め。俺が代わりに食ってやる。そう思って席を立ちかけたが、カップルに不審者として通報されたくなかった。いや、通報されて三ノ輪署に行くぶんにはいいのだが、すでに天丼を食べているので署内でカツ丼を出された場合、たぶん食べきれない。そうなると、取り調べをする刑事たちに申し訳ない。などと思っているとお茶が来た。
温かい緑茶である。土手の伊勢屋のこだわりなのか、このお茶が天丼に匹敵するくらい旨かった。いい茶葉を、いい茶器を使っていい方法で淹れたのだろう。
食べ終わって店を出たとき、ふと見上げたらスカイツリーが立っていた。今回食べた天丼は、スカイツリーの展望台に登る料金の約半分くらいの値段だったはず。なるほど、つまり土手の伊勢屋で二回食べるのを我慢すれば、スカイツリーに登れるのだな。

じゃあ、登らなくていいや。

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