(場の理論で)離散対称性の演算子を具体的に書く

連続対称性の生成子はネーターの定理によって具体的に(場の)演算子を使って書くことができることはよく知られています。一般に、離散対称性に対して演算子を具体的に(場の)演算子を使って書くことができるでしょうか?大森さんの「一般化対称性」に関する講義録でちょっと関係する議論があったので、まず、それを紹介したいと思います。

この講義録では (2.5)~(2.7) に、スカラー場に対する(離散)対称性変換を作る(トポロジカル)演算子の経路積分表示での表式が与えられています。話を具体的にするために、ここでは、実スカラー場 $${\phi(\vec{x},t)}$$ に対する $${\mathbb{Z}_2}$$ 対称性 $${\phi (\vec{x},t) \to - \phi(\vec{x},t)}$$ を考えましょう。大森さんの講義録にある時空の経路積分の表式を、まずはシュレーディンガー演算子表示に書き換えることを考えます。場の理論のシュレーディンガー表示では、 $${\mathbb{Z}_2}$$ 対称性変換は、波動汎関数 $${\Psi[\phi(\vec{x});t]}$$ に

$$
\Psi[-\phi(\vec{x});t] = \int \mathcal{D} \tilde{\phi}(\vec{x}) \delta[\phi(\vec{x}) + \tilde{\phi}(\vec{x})]  \Psi[\tilde{\phi}(\vec{x});t]
$$

という風に汎関数積分の形で表すことができます。ここで、汎関数積分は時空の経路積分表示と異なって、シュレーディンガー表示なので(時間一定面で)空間に関する和のみを行っていることに注意しましょう。

ハイゼンベルグ表示でも便利なように、この表式をもう少し書き換えて、普通のチャージと似たように場の演算子を使って構成することもできます。

$$
\hat{P} = \sum_{n=0}^\infty \frac{1}{n!} \int \prod_{i=1}^n dx_i (-2\phi(x_i)) \prod_{i=1}^n i\pi_{\phi}(x_i)
$$

ここで、場の運動量演算子 $${\pi_{\phi} = \dot{\phi}}$$ を使いました。シュレーディンガー表示では、場の運動量演算子は、$${\pi_{\phi} = (-i)\frac{\delta}{\delta \phi}}$$ と汎関数微分になるので、上の積分形と形式上は同じ作用を与えているはずです。
(注:ここで、 $${\hat{P} = \exp\left( \int dx (-2i\phi(x) \pi_{\phi}(x) \right) }$$ と書きたくなるが、$${\phi}$$ と $${\pi_{\phi}}$$ は交換しないので正しくない。)

この後者の表式は私が思いついたのではなく、以下の中西さんと米澤さんの論考によると、小川修三さんの量子力学の講義ノート(素粒子論研究で見らられる)にあらわれているものを、場の理論に拡張したものです。

https://www.phys.cs.i.nagoya-u.ac.jp/~tanimura/math-phys/mathphys-7-1.pdf

この論考では、中西さんは収束性の問題から積分形の方を気に入っているようですが、場の理論の言葉で積分系を書こうとすると汎関数積分(~経路積分)が必要になるのは、(経路積分嫌いとして知られている?)中西さんにちょっと聞いてみたい気もします。
(注:実際のところ収束性は微妙で、上の表式から $${\hat{P}^\dagger = \hat{P}}$$か?と言われるとよくわかりません。)

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