名CM考Ⅱ 第十七回 2006~2008年 NTT東日本 「DENPO115」

2006年、2007年、リーマンショックが起きるまでの2008年って一瞬だけ晴れ間が……光が刺しこんだような世相だったんだ。

2006年版 NTT東日本「DENPO115」

ね、今まで刹那的な笑いのCMばかりだったのがうっすらと光がし差し込むようなCMでしょう。実は2007年って一瞬だけだけどデフレが解消されてゼロ金利が無くなり今(2023年)と同じ0.5%になったわけだよ。この時新卒は空前の売り手市場とも言われたわけ。実態は好景気でもなんでもなく単に膨大な数の団塊世代が引退しているだけで「景気」なんて1ミリも良くなってなんかいないのに世間は勘違いしたんだ。だから突如世相が正常化しはじめた。

2007年版 NTT東日本「DENPO115」

2008年版 NTT東日本「DENPO115」


今までも入学・卒業・結婚・定年退職という「お祝い」なんてもんはあったんだ。なのに突如こんなCMがこの時期(2006~2008年3月期)に大量に流れたわけ。たぶんだけど「我が国は『失われた20年』にはならない。日本はようやく復活の兆しが見えた」と。世間はそうなったんだね。経済成長率なんて1%が関の山の時代に、だよ。

私は定年退職で花束を持ち……会社を去っていく人の2007年版のDENPO115のCMシーンが忘れられません。貴方達のせいで……膨大な「氷河期世代」を犠牲にしてまで成り立たせた定年祝辞なわけだよ。団塊世代ってそういう世代なわけだよ。本人たちは理解してるんですかね? 他人(しかも息子世代である団塊ジュニア世代)を犠牲にしてまで地獄から逃げ延びただけのクズということに。

では2006年に入学のお祝いをもらった当時の高校1年はその後どうなったでしょうか?高卒ならリーマンショック、大卒なら東日本大震災で「第二就職氷河期」に当たって高確率で人生終了だよ。

またここ3年、いやここ15年皆さんはこのようなCMを見たことあります?
別に『電報115』って今でもやってるぞ。終わったサービスじゃねえぞ。別にNTTだけでもない。皆さんは「お祝いの場に~を」というCMを見たことがあるか? 無いだろ? 世相の通りだよ。

特に2008年版のBGMって今井美樹の『piece of my wish』(1991)なわけだ。歌詞まで病み上がりだよ。

諦めないで すべてが 崩れそうになっても 信じていて あなたの事を

piece of my wish

こんな「病み上がり」の国家である日本に世界的恐慌がおこなったらどうなるか。そうですよねサブプライムとは一切関係ない日本が最も経済的ダメージを受けたのです。破産したギリシャを除けば。日本は病み上がりの状態だったのに「完治したと勘違いしただけ」という記録に残すべき、まさに当時の世相を象徴する名CMですよ。文字通り「日本の最後の希望」をCMにまで昇華させたCMだったんだよ。当時約3年流れた『DENPO115』のCMってのはね。当時も今も日本という国の実情は下りエスカレーターを必死に上ってるだけで横ばいとなっただけ。足を止めただけで墜落するような衰退国だったことがこうして世間にばれて行く。

ちなみに2007年当時は「当時30代となった就職氷河期世代を救おう!」という世相にまでなりました。この時代が就職氷河期世代を救うラストチャンスだったわけです。信じられます?そんな世相が1年後のリーマンショックで瓦解。そして真逆の結果となる「派遣村」の登場で世相はより暗く日本は終わっていき、このようなCMはもう二度と流れてこなくなったのです。残念なことに。嘘だと思うのなら毎年3月のTV-CMをチェックしてください。だれが「おめでとう」とか言ってます?それが現実だよ。今の日本の社会に入るということは「地獄にようこそ」という絶望的な意味が高校生にもばれたので毎年の3月期のTV-CMってのは「住まい探しには〇〇」といったCMや引っ越しのCMしかもう流せなくなった。それが我が国の現実だよ。

これからは「弔電」をTV-CMに流すのはどうでしょうかね。死を偲ぶCMの方が受けると思うのですがいかがでしょうか?それが日本という国の現実だよ。

※なお2006年版・2007年版の曲は名曲ですので参考までに

いきものがかり 『SAKURA』2006年



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