名CM考Ⅱ 第九二回 1987年 山一證券 「就職あっせんCM」

で、名CM考Ⅰでは山一證券廃業寸前時に放映された山一證券100周年CMを紹介したわけですよね。滅びの美学としてそれはもう芸術品だったわけです。その会社、なんと10年前は我が世の春でした。

見てください、人手が足りなくて「わが社に来てください」とCM告知してたのです。大企業だろうが企業というものはそんなもので絶対なんてもんはないって教えてくれたね。

で、確かに「激しくて暖かい会社」なんですよ。暖かすぎてバブル崩壊後に損失を出した法人顧客に損失補填して自分が傷を被るぐらいに。本当にCMで嘘をついてない。というかいろんな意味で正直だったんだと思う。

だって、会見時に社長が「彼ら従業員は善良な市民です!! 社員は悪くありません! 悪いのは経営陣です!」って号泣するくらいだぞ。中途半端に悪な会社というのは実は「暖かい会社」で人間の心がちゃんとあるんだ。今の日本企業見てみ? 不祥事しようが謝罪すらせずしれっと社長の椅子や会長の椅子に座ってるバカばっかりだぞ。こういうのを「サイコパス企業」という。それ考えたら山一っていろんな意味で「暖かい」ぞ。

「人生は、就職してからだと思う」か……。仮に1988年卒1浪23歳で山一に入って10年後の1998年に廃業となった後は……山一社員って大部分はメリルリンチ証券に移るのですがドライすぎる社風に耐えられず多数の方が離職してまたメリルリンチ自体もリーマンショックで事実上破綻です。当時の転職市場なんて35歳付近だと非常に転職するのは困難だっただろう。またメリルリンチはリテールに非常に弱くまるで日本の顧客の事を理解してなかったというのも痛い。よってもうリーマンショック前からもうメリルリンチ日本証券はリストラのラッシュだったのです。メリルリンチも辞めた彼らは一体どんな人生になったのだろう。

そんな彼らも2023年現在で58歳前後。あと約2年で正社員を退職です。それから年金をもらうまでの5年間なんと「フリーター人生を強要」されます。しかもいろんな会社を転々とする「羽目」になって。山一に至っては廃業だから当然退職金はもらえずに。下手すると山一廃業後に永久に正社員になれなかった人生の人もいるだろう。
本当に「人生は、就職してからだと思う」なのだろうか。彼らの人生は「大学4年+αまでがまともな人生でした」というのが現実ではないのか?バブル崩壊後の山一はもう地獄だったのでは?

人生のピークは、大学4年生でした」とか「人生のピークは高校入社後の数年後でした」なんて言う人生がバブル世代の大半だったんだ思う。もうそう総括していいよね?もうすぐ60歳、もう還暦になるんだし。


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