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ZARA

ザラの生産プロセスは、小売業界の従来のそれとは異なる。多くの小売業者が新たなコンセプトを製品化し、発売するまでに6カ月以上をかける一方、ザラは統合されたサプライチェーンを通じて、そして工場の半数以上を主要な市場に近接した地域に置くことによって、これをわずか3週間で行っている。

また、小売各社が変化し続ける需要への対応に苦慮するなか、そうした変化を先読みすることができるザラは、この点で苦労することもない。それでは、そのザラの成長の速度が、今以上に高まらない理由はどこにあるのだろうか?

ザラは生産数を抑えた新商品の開発を、アジアで行っている。そして、(染色や最終的な裁断・縫製などをしていない)生地をイベリア半島に送り、そこで生産を行う。アジアで大量生産する場合に比べ、生産コストはかなり高くなるが、ザラはマージンを犠牲にすることで、短期間での商品の入れ替えを実現している。

一方、ザラは新たな課題を抱えている。

インディテックスは、衣料品のオンライン販売を手掛けるブーフードットコム(Boohoo.com)やミスガイディッド(Missguided)といった新規参入の小売業者との間で激化する競争に直面している。競合他社はデザインから販売までをわずか1週間ほどで行う。各社のサイトは毎日更新され、何百点もの新商品が発売されている」

こうした状況を受け、インディテックスはオンライン販売と実店舗ネットワークの統合に向けた取り組みに着手している。

新システム導入へ

今後もファストファッションにおけるトップの地位を維持するため、ザラは新たなテクノロジーへの投資を続けている。7月には、オンラインで注文を受けた商品の発送を世界のおよそ2000店舗で行う新たなシステムを年内に導入すると発表したばかりだ。

オンライン販売で在庫切れとなっている商品でも、顧客の近隣の店舗に在庫があれば、その店舗から発送するこの「ship-from-store」システムについて説明すると、

1. 在庫を持っていた店舗に近い場所に住む顧客は、注文した商品をより迅速に受け取ることができる

2. オンラインショッピングの時代にも、実店舗がレレバンス(妥当性)を維持することができる

3. ザラは在庫量をより適切に管理することができる

いずれにしても、ザラは常に小売業界の“黄金律”と言えるものに従って行動している。全てにおいて顧客を中心に据え、そこから得られる見解に基づき、適切な商品を適切な価格で、適切なタイミングで提供している。

世界中で生産された商品は、産地を問わず、ほぼ全量、まずインディテックスの物流拠点に集められる。

 生産国から直接各市場に商品を届けるのではなく、いったんスペインの物流拠点に商品を集めるのには、理由がある。店でどんな商品が必要か判断するのは、世界中に点在する店舗であり、店頭に供給する商品の企画が本社主導で決まることはない。店は本社に対して日々の商売に必要な商品とその量もそれぞれに決め、発注する。

品揃えの鮮度を常時演出するため、インディテックスの場合、世界中の店舗に週2回、必ず新商品が届くようにしている。言い換えれば、客との接点である店の要望を元に、企画も生産も物流も機能する仕組みがインディテックスの強みの一つと言える。

 高頻度、短サイクルで商品を供給するために、今も欧州とその近隣で6割を生産するわけだ。

残り4割のアジアなど物流拠点から遠い地域にはトレンド変化が少ない、ベーシック商品の生産を割り当てている。集荷、配送までの時間はかかるが、ある程度シーズンごとの販売量が予測できるため、遠隔地の生産では調達コストと品質のバランスを優先していると言える。

トレンドのどの部分が各市場の店の顧客に響いていて、次に何を作るべきなのか、客との唯一の接点である店舗の責任者から情報を得ており、それをデザイン部門に伝えている。

生産・調達担当がどの素材を使い、どこで作れば、期中の適切な時期に店頭へ供給できるか見極め、商品化する。

商品だけでなく、売り場環境も随時ニーズや時代に沿って変えなければ、客に飽きられるとの思いが背景にある。

熱意を持ってファッションを作り売る、その精度を高め続ける。


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