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思考停止ワードの禁止

よく見かける「心がけます」や「イノベーションを起こしてみせます」「顧客第一で頑張ります」などの言い回しは、具体的な言葉ではありません。

例えば、「顧客第一」という言葉。文字通りなら、会社の利益は第二にして、どこまでも顧客のために尽くすということになりますが、それでは経営になりません。だから、「顧客のために何をして、どうやって会社の利益とのバランスを取るのか」を考えなければいけないのに、ただ「顧客第一」と掲げることで、その中身を熟考することから逃げてしまっています。「イノベーションを起こす」も同様、まず、どんな問題意識から生まれる目的かを明確にするべきです。

つまり、これらは何か宣言をした気になってしまっているだけの言葉で、これではかえって思考が深まりません。こうした言葉をマッキンゼーでは「思考停止ワード」といって、自らの思考を深めない罠にはまらないようにしていました。

では、なぜ、こうした思考停止ワードに逃げてしまうのでしょうか。それは、「失敗するのが恥ずかしい」という思いから、つい踏み込むのを避けてしまいたくなるからではないでしょうか。

しかし、セミナーや講演は、そもそも自分に足りないものを明確にしたり、補ったりする機会です。そこで「恥ずかしい」と躊躇することは、成長の妨げにしかなりません。恥ずかしさを理由に一見やる気があるように見える思考停止ワードを連発していては、何も前進しないのです。


自分との議論をやめてはいけない

日常の会話でも、あまり考えず「深いですね〜」などと言ってしまったことはありませんか? 相手の話についていけなくなってくると、会話そのものが不安になって、つい「深い」「面白い」など漠然とした相槌を打ち、その場から逃げようとしてしまう。本来なら、ついていけないほど深く感じること、面白いと思う理由を話し込んでもいいはずなのです。

こうした相槌は、議論を避けるための技法でもあり、時には便利なこともありますが、議論を避けるということは、「他の人との議論」を避けてるだけでなく、「自分自身との議論」をやめてしまうということでもあるんです。

例えば落合陽一さんや石川善樹さんのように進化の早い人たちは、自分に対する議論をやめません。要するに、自分に理解できないことをごまかさないんです。だから、理解できるまで「こっちの角度から考えてみよう、あっちの角度から見てバリエーションを増やしてみよう」という風に、ずっと思考し続けるのです。

セミナーや講座を受けた時、アンケートでよく「面白かったです」「楽しかったです」とか「前回の分を振り返ってみます」というようなコメントをしていませんか? 雰囲気を反芻するだけで終わらせてしまうと、結局成長に繋がりません。今回は、セミナーを受けたあと、いかに自分の成長に繋げるのかを考えるための「振り返りの技法」についてお話しします。


振り返りの基本ループ

1. 客観的事実
2. 主観的感想
3. 一般化(敷衍)
4. 適用(3を検証するためにすぐやることの宣言)

そもそも多くの人は、何を聞いたかを振り返る「1. 客観的事実」と、次の「2. 主観的感想」、つまり自分の心がどこに響いたかを振り返る作業がごっちゃになりがちです。

何を学んだかは、すでにメモなどを取っていると思うので、それを読み返しながら「何が響いたか」を振り返りましょう。例えば、自分の強みに気づかされたとか、弱みがわかったとか。新しい観点を得たとか、いろんな心の風景があるはずです。

さらに、セミナーで学んだこと(1)をどう自分に適用させられるかを考えます。つまり、いかに具体的な行動として(3)、自分の日常に落とし込むか(4)を考えるのです。

この「知る」「わかる」と、「できる」「している」の間には、いくつもの壁があるのです。


身体を使うことが「やってみる」こと

では具体的に行動する、とは、どのようなことでしょうか。例えば、
子供に「車のメーカーは、後ろについているマークでわかるんだよ」と教えました。さらに、「あれがトヨタで、あれが日産」と教えます。すると、今度は韓国に行った時、子供の方から「韓国って、日本車あんまり走ってないね」と気づいたことを教えてくれます。

ただ話を聞いただけでは、身にならないのです。だから、実際に外に出てみて、身体を使って調べてみる。これが、「知る」と「やってみる」の壁を超えるということです。この行動の壁をちゃんと超えてみるのが大事なのです。

さらに重要なのが、やってみた後に、「何ができないのか」「何を知らないのか」に気づくことです。それが分かれば、あとは行動するだけです。子供の場合なら、イタリアに行ったときにわからないメーカーがあったので、エンブレムをスマホで撮影して、グーグルレンズや画像検索で調べました。

そして「イタリアではフィアットが多いんだよ」と教えてくれます。それくらい習慣化してくると、「あれ、ヨーロッパでは日本車より韓国車が多いね」という風に、マーケティングの目が自然と育つのです。

セミナーで話を聞いて、自分が興味を持ったとき、同時に「どうやって自分の行動に落とし込めるか」というところまでレールを引っ張ってあげましょう。そうすれば、あとは日常の中で自走します。だから、アンケートをその行動宣言の場として、活用していただきたいのです。

セミナーなどのアンケートは、どうやって日常に落とし込めるかを考え、その行動宣言をする機会です。それをいつやるのかも書くといいです。せっかくお金を払ったり時間を使ったりしているわけですから、登壇者とのコミュニケーションの機会ではなく、明日からの自分が何をするのかをアウトプットする場だと捉え、活かしてみてはいかがでしょうか。

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