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卒業試験とくじ運(1)

ドイツの音楽大学では、筆記試験と口頭試験がセットのように行われる教科もとても多く、マンハイム音楽大学のピアノメソッドの卒業試験にも口頭試験がありました。

出題範囲は、「最初の年の最初の授業からずっと」。(笑)

えええええええ!そんな膨大な範囲をどうやって一人一人試験していくんだろう、それってどれくらい長時間な口頭試験になるんだろう?と恐怖に怯えていたら、教授が「この試験はくじ形式です。」と説明し始めました。

いわゆる「三角形の紙くじ」が入ってるような福引きの箱、上から丸い穴に手を入れて中のくじを取り出すあの箱、ですね。アレに試験問題が書かれた紙が200枚以上入っていて、それを1枚取り出して答える、、というやり方だそうで、、。教授曰く「この形式で毎年やってますけれど、やはりくじ運もありますねえ〜。」とのこと。更に「今年は問題を増やしまして、くじは全部で250枚くらいになるかと、、。」という涙のサプライズも!

私のくじ運は、と今までの人生を振り返ってみますと、私のくじ運は良いようなそれほどでもないような、、。例えば、私には「おみくじで大吉を引く運」という運があるらしく、おみくじは大吉しか引いたことがないのです。でも、じゃあ大吉のおみくじに書かれた通りの幸運が私の現実になるかというと、それはまた全く別口の運ということらしく。(笑)なので私のくじ運は良いとか悪いとかではなく、「ビミョ〜」といったところ、でしょうか。

ピアノメソッド試験くじの紙には、用語や短い文が書かれていて、例えば「三連符」とか「拍子、拍」とか「ペダル」とか、そんな用語や「見出し的に書かれたもの」もある、と。口頭試験ではまずそれについて説明し、更に生徒にどうやって教えるかとか、どのような注意点があるとか、授業で学んだことの他に自分の考察も述べていく、というもの。答弁時間は平均10分〜15分くらい。

でも説明しなきゃいけないファクターがめちゃめちゃ多くて、その中の一つでも言い忘れたら減点されるなぁという「ハズレ」な用語も多いのだから、200種類以上の問題の中にある「アタリ」って、5個もないんじゃん?ってことは、箱の中はほぼ小凶、中凶、大凶、みたいなくじばっかり、ってことだ、、。

要するに、「くじ形式」は数年間分の大量に書かれた授業ノートを読み返して挑むしかない、という試験方法、なのでした。(笑)

さてピアノメソッド卒試、口頭試験の当日。

私が試験の部屋に通されると、そこには確かに、あの「福引きの箱」がリアルに机の上にありました!ちょっとピンっとした口頭試験特有の空気感の中、教授は静かに「中から一枚、取り出してください。中の紙をかき混ぜてもいいですよ。」と言われました。

も、その時の私の心臓は、バクバクでしたよ、ホントに。(笑)だって、卒業試験成績がかかってると言っても過言ではない「福引き」、ですから。(笑)



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