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応援団を作る

市場原理と生きづらさ

現代人が感じている「生きづらさ」の多くの部分は、環境が生み出していることに以前のnoteで少し触れた。

終身雇用が崩壊するということは、つまり労働力の市場化が進むということだ。新自由主義によってあらゆるものが市場原理にさらされ、家庭内にもその風は吹きこんでくる。
家庭においてもまた、無条件の愛で包んでくれる母性のイデアは力を失いつつある。
個人は丸裸で市場の風に晒され、未熟な実力主義は、環境によってひとの発揮できる力が多様に変わることを無視し、自己責任を言い立ててくるだろう。
年金制度の限界が近頃話題だけれど、老後の資金もまた自己責任というわけだ。

「ふたりぼっち」

会社も国も守ってくれない、家庭も限界だ、そんな折に「たったひとりの自分を救ってくれる異性」を求めて旅をする人たちも少なからずいることだろう。

(ただ恋愛自体実はもう流行は過ぎつつあり、パートナーを探していないという人も特に若い人に増えているという調査結果もあるけれど。)

生きづらさを抱えた人の恋愛結婚とそこからつながる核家族化に起こりがちな問題として、孤立や共依存がある。

暴力や(共)依存の問題が生まれやすいパートナーシップの形として、「世界にふたりぼっち」であることが挙げられる。
それは「たったひとり自分を救ってくれる、ぴったり重なり合い心の穴を埋めてくれる誰か」を求めた先にある切実な関係なのだけれど。
この問題はパートナーだけではなく、ワンオペ育児に見る親子関係をはじめ他の人間関係にも起こることで、嵐の中にぽつんとある離れ小島のような関係性は、危険を伴いやすい。

応援団(サポートネットワーク)を作ること

所与のコミュニティに絶対の安全はなく、「たったひとりの誰か」によって救われようとすることにもリスクがある中で、どう生きやすい環境を構築して行くか。
その対策のひとつとして、自分だけの応援団(サポートネットワーク)を作って行くことを挙げたい。

自立とは依存先を増やすことという大切な言葉がある。
自分のサポートネットワークを作り、支え合って生きていけるよう育てていくことは、自立した個人として生きて行く上でこれまで以上に重要になっていくだろう。
自分を救うには人に救われる技術を磨くのがひとつには効果的だ。

以下、実際に手を動かしてやってみてほしい。

1.挨拶をする関係

日常を過ごす中で、挨拶やちょっとした世間話ができる相手がどれだけいるだろうか。近所の人や職場の顔見知り、ペットやAI、野良猫でも構わないので、書き出してみよう。たった一言の挨拶で少しずつ私たちの心はケアされ支えられることができる。

2.いざというとき頼れる相手や機関

話を聞いてくれる人、良いアドバイスをくれる人、気持ちを和らげてくれる人、体のケアをしてくれる人、身の回りのことを手伝ってくれる人、お金を貸してくれる人、寝るところを貸してくれる人、仕事の相談に乗ってくれる人、、、困ったときに頼れる相手や行政機関、サービスと、どんな手助けをしてくれるかを書き出してみよう。

3.イメージするだけで心に良い影響をくれる人

目を閉じ、イメージするだけであたたかくなったり嬉しくなったりほっとしたりする人を思い出してみよう。今はもう関わりのない人や、好きな本の著者、テレビに出ている人、物語の登場人物など架空の人物でも構わないので、思い出したらこれも書き出してみよう。

できただろうか。これが今の時点で思いつくあなたの応援団だ。このリストはいつでも確認できるところに置いておき、育てていくことをお勧めする。

相談力を上げること

人に頼ることが苦手だったり、いい結果がないと諦めてしまう人は、相談の練習をしよう。
以下、相談力を上げるのに役立つかもしれない覚書。

・何に困っているのか、どんな助けが欲しいのか、相談する前に紙に書いておく
・時間を区切り、無限に相手を付き合わせようとしない
・ひとりの人に毎日助けを求めることは避ける(先ほど共有した「ふたりぼっち」を避けよう)
・結果や効果にこだわらず、助けを求めた自分を褒める
・結果や効果にこだわらず、相談に乗ってくれた人がいたという事実を認める
・結果や効果がよくなくても、諦めずに他の人に相談をする(最低5人に相談する、と決めておいてもいいかもしれない)

一瞬で全てを解決する魔法ではないけれど

一瞬で全てを解決する魔法ではないけれど、ここで書いたことはあなたのサバイバル能力を少しずつ上げてくれるかもしれない。
人に頼ることに抵抗がある人もいるかもしれないけれど、支え合って生きていく力は他ならぬあなた自身の力だ。
活用していただければ嬉しい。

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参考文献:
「その後の不自由 「嵐」のあとを生きる人たち」上岡陽江 大嶋栄子
「薬物依存症」松本俊彦
「自分でできるスキーマ療法ワークブック Book1」伊藤絵美

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