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らふるのオープンを振り返る。

独立というのはひとつ、僕の人生の中での大きな節目でした。
これまで(前職の代官山のサロンで働いていた頃)は猪突猛進型で、脇目も振らず働いていた僕にとって、美容師になってからを振り返るきっかけとなる良い機会でした。

前職であるオーガニックサロンで、当時24歳の僕は店長という役職を担いました。まだまだ経験の浅い当時の僕が、本格的に経営に関しても携わることができたことは僕にとって大きな経験でした。

気づけば殆どのスタッフが辞めずについて来てくれていました。そのために、当初の計画よりも1年前倒しで独立をすることを決意。

常連のお客様の「辞めたほうがスタッフの成長の為にもいいんじゃない?」との言葉が僕の背中を押してくれたことを思い出します。

いざ独立をしてみて気がついたことは〈お店を出すのは容易い〉と言うこと。

オーナーとなった今はお店を常に成長させ、顧客にとって〈なくてはならないお店〉となることの重要性、絶えず走り続ける覚悟と体力の大切さをまじまじと感じさせられます。前職時代ゴールのように思っていた「独立」は単なるスタート。思ったようにならないジレンマと向き合うことの方がオープン前よりもはるかに大変。

ただ、オープンさせてすぐの不安定な時期を支えてくれたのは、一緒に働いてくれているスタッフ、友人や知人・家族・常連のお客様。とてもありがたかった。

まるで自分一人の行いでここまでを成し遂げて来たように思っていた時期もありますけど、今はそんなこと腐っても言えません。(皆の支えがあってこそ今があるのだ。)

独立とは、「自立」や「卒業」という意味も大きいかもしれないけれど、支えて来てくれた方への恩返しの部分もあるのではないかと感じます。備忘録としてオープンまでを思い出しつつ記しておこうと思います。

独立準備期間

働きながらお店のオープン準備を進めて来ました。
期間としては1年半ほどかけたでしょうか。後輩たちは自主的に動いてくれるようになっていましたので、見守りつつ自分の準備を進めていきました。(僕は辞めるんだから自主性がないといなくなったあと大変だよ。とかなんとか、もっともらしいことを言って放任していたと思います。)

独立準備を進めている時のもっぱらの悩みは以下のようなもの。

・独立資金について
・新たにお店を出す意味があるのか確信が持てなかったこと
・もしその意味を作るとするのなら、どんなコンセプト・理念のお店にするのか
・もしそれを実現するのなら、どこに拠点を置き・どのような内装設備を用意するのか

細々あげたら価格の設定や、設けるメニューはどうするかなどありますが、大枠にしたら上記のようなところでしょうか。

【独立資金について】

この職業はなかなか賃金が良いとは言えない業種でもあります。徐々に労働環境も改善をされて来ていますが、僕の場合2児の父でもあり、保育園に預けられず妻は仕事に出られずで、自己資金を確保するのは本当に苦しかったです。笑

1人目の子供が産まれてから毎月3万は貯金に回し、最後の1年半は毎月5万円を自己資金のために回していました。余裕がなさすぎて、後輩にご馳走することも友人と飲みにいくことも殆どしませんでした。ケチの極みだったように思います。笑

クラウドファンディング等もありますが、僕には資金を集める自信がなかった。。

それはさておき、借り入れをし独立のための資金をなんとか作りました。お願いしたのは、政策金融公庫の「新創業融資制度」でした。

創業の要件新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方
雇用創出等の要件(注1)「雇用の創出を伴う事業を始める方」、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」、「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援事業を受けて事業を始める方」又は「民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方」等の一定の要件に該当する方(既に事業を始めている場合は、事業開始時に一定の要件に該当した方)なお、本制度の貸付金残高が1,000万円以内(今回のご融資分も含みます。)の方については、本要件を満たすものとします。
《自己資金要件》新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できる方。ただし、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」、「産業競争力強化法に定める認知特定創業支援事業を受けて事業を始める方」等に該当する場合は、本要件を満たすものとします。

これを利用しようとお考えの方の大きなポイントは太文字の部分でしょう。

これは、1/10あれば借りれるとは思わない方が良いと思います。あればあるだけ借りやすいと思います。当たり前ですけどね。ただよく言われる1/3以上あった方が良いかというとそういうわけでもなさそうです。

・計画的に貯めているのか。
出所がはっきりとしているお金かどうか、計画に合わせてコツコツ貯める力があるのかを見ているようです。
・事業計画が明確かどうか。
これは、自分が融資をする立場なら何を聞きたいのか念頭に置きながら作ると僕の場合は作りやすかったです。当たり前の話ですが、どういった事業を行うのか。その事業に将来性はあるのかそういった部分を見ているようです。

遡ってみると僕の独立準備期間の悩みは、専ら融資が下りるかどうかでした。

「事業計画は必要ない」と言う金言を残す天才肌の経営者もいますが、僕のような凡人は不安を払拭するためにも大きく役立ったように思います。

色々な会社・お店の事業計画に目を通し、コツコツと作っていきました。

売り上げ計画やら、先々の展望やら。それを叶えるために何をどうしてこうしていくという明確な説明を盛り込みました。まだ何の実績もないですから、大体がハッタリ的ですが代官山で働いていた頃の僕個人のデータをもとに、そこよりもさらに厳しく算出し数値を出しました。
事細かに予測を記したので、面談は10分程度しかかかりませんでした。
あくまで予測や計画は机上の空論でしかなく、重要なのはあの手この手でコミットさせていくことです。

事業をスタートさせたのなら、計画以上の結果を出すために、計画に盛り込んだ方法をブラッシュアップさせて実際に行動を起こしていくのみです。闇雲にやっていても消耗するだけですし、重要なのは来ていただいたお客様にご満足いただくこと。

体力の少ない開業したばかりの小さなお店には、起こす行動の質の高さが求められる気がしています。それが質が高い行動だったかどうかは、後にならないとわからなかったですけど。笑

【新たにお店を出す意味があるのか】【どんなコンセプト/理念のお店にするのか】

日本全国には大小さまざま現在約24万件あります。

右を向いても、左を向いても美容室だらけです。

その中で、差別化し僕のお店に来てもらい続けなくては、お店を続けていくことができません。ただお店を続けたいだけならば、独立はしないほうがリスクが少なく、雇われでいながら既存のお店を高めていくほうが効率が良いと考えていました。
それでも独立をするのなら、社会にとって必要なお店であると思ってもらう必要があると考えました。

どうせ開業するのなら創業100年を目指したい。
次世代にも必要とされるお店でありたい。

そこで、当時のお客様にさりげなくインタビューをしてニーズを探り、新たにお店を出す意味を自分なりに見つけようと考えました。その時期に耳にした大変お世話になっているオーガニック事業の経営者さんのお話。

今でも心に残っています。

「オーガニックは手段であって、目的ではない。」

オーガニックを使うだけでは本質的には何も改善されていないよ。とおっしゃっているような気がしました。

真面目な方ほど本来の目的を忘れ、ただただ純粋なまでに質の高いオーガニックな何かを探し続け、自分の考えと相反するものを排除していってしまっている気がするのです。本来の目的は、オーガニックなものをチョイスした先にあるはず。

オーガニックなアイテムを使用しているヘアサロンは年々増えて来ていますが、それはなぜだろう。単に売れるからなのか。お肌が敏感な方が増えているからなのか。環境にとって優しいからなのか。持続可能な社会を作っていくためなのか。

オーガニックを使えば安心。それだけでもとても良いことだと思います。

でも、そこからもう一歩踏み込んで、〇〇のためにあえてオーガニックを選択しこの店をオープンさせたんだ。と、いうことが明確になっているかは非常に大切。

どんな方がLaughfulに来るのか。
その人はどこにいるのか。
その人は何を求めて美容室を探しているのか。
何をしたらその人は喜んでくれるのか。

これは、私たちのあり方にも言えること。目的がいつの間にかすり変わらないようにするために、日々慎重に見つめる必要があると思っています。

Laughfulのコンセプト【末長く楽しめる髪をあなたに。】 Laughfulでは、いまと同じように、皆様がいつまでも楽しむことのできるヘアスタイルをご提供できるよう
信頼できるたくさんのオーガニックなアイテムを中心に取り揃え、心地よいサロン作りを心がけています。
それは…
アレルギーをお持ちのあなたにも
アレルギーが心配なあなたにも
お肌が弱いあなたにも
未来のあなたにも
いつまでもこれからも髪を楽しんで欲しいから。

僕は結局、多くの方に心底オシャレを楽しんでもらいたいんだな。

色気付き始めた中学生の頃からだんだんと周りとの付き合い方に変化し始めた気がします。
サッカー仲間としかつるまなかったのが、サッカー以外の他の生徒とも共通の話題(特に音楽のこと、ファッションのこと)を持つことができるようになったことから劇的に交友関係が広がった。

思えば初めて彼女が出来たのも前髪にストレートパーマをかけてから。

何もモテるための髪だけではありません。誠実さをアピールしたり、積極的で活発な印象にしたり、気分を上げるのに役立ったり、人生を変える一歩を踏み出すことへの後押しする大きな力があると思うのです。

きっとあの時、髪にそれだけの効力があると気がついたのだと思います。だから美容師になったんだ。

ただ、カラーやパーマ等オシャレをしたいけれど、アレルギーやお肌が弱いなど様々な心配事を抱えている方にとっては、現在の美容業界では提案できるオシャレの幅はまだまだ狭いと感じました。

アレルギーは突然なるもの。お肌もある時を境に敏感になったりします。

全ての方が、オシャレな髪型をずーっとずーっと楽しめる。そんな美容室を出したいと思ったのです。

【Laughfulのルール】・ケミカルでなくては、できない技術はケミカルな製品で(グリーンケミカル)
・ケミカルではなくても、補えるところはオーガニックな製品で
・アレルギーをお持ちの方や刺激が気になる方には、対応したメニューで施術
・アレルギーでも、お洒落は楽しめて当たり前
・最も適した方法で施術し、煩わしさを感じさせずに髪を通して持続可能な社会へ
【掲げたミッション】・自分を愛せるようなヘアスタイルを絶えず作り続けること。
・誰もが自分らしく髪を楽しめる美容室であり続けること。
・美容業界の既存の常識を覆し、新たな常識をつくる大きなうねりの一つとなること
・髪を通して「organic」「eco」「ethical」「LOHAS=Lifestyle Of Health And Sustainability」を提案し、持続可能な社会を創ること。
これを成し遂げるためにはまだまだ成長しておかなければなりません。

私たちは絶えず、技術力もセンスも磨かなくてはなりません。オーガニックなプロダクトを揃えたり、上質なものを取り揃えるのはあくまで手段。本質では無い。お一人お一人のお客様に対して真摯に向き合い続けます。

拙い文章を最後まで読んでいただきありがとうございました。

もしよろしければサポートをお願いいたします!大変な状況が続きますが、前向きになれるような髪に関する情報を発信できるようにがんばっていきます。