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LaLaLand

LaLaLandのエンディングにまつわるSNSのコメントの中に監督の言葉を上げている人がいた。

「人は、残りの人生を決定づける人と結びつくことはできるが、その結びつきは残りの人生までは続かない。そのことは、ものすごく美しくて、切なくて、驚くべきことだと僕は気づいたんだ。」

私の人生を決定づけた転機となった人がいる。
私に「旅」の世界を教えてくれた人だ。

夏休み、まだ高校生だった私が国道で信号待ちをしていた時、同じ高校の先輩が自転車で通りがかったのだ。

今でも鮮明に覚えている。

大きな荷物、真黒に日焼けした顔、汗だくの服。
「北海道から帰ってきたところなんだ。今朝、船で東京に着いたんだ。」
何を言っているのか全く分からなかった。まず自転車に乗っているのに北海道という単語が出てくるのがわからない。それにここは東京から何十キロも離れた国道だ。東京から今自転車でここまで来たことすら現実とも思えなかった。

先輩は話してくれた。
自転車を積んで船に乗り、北海道をキャンプしながら旅していたこと。農家の人に野菜を貰ったりしながら、安く旅をしてきたこと。
「お前もいつか北海道行ってみなー!楽しいよ!」と行って、笑顔でお土産のキーホルダーをくれた。

その日はたまたま高校に用事があって、夏休みなのにその信号を渡って高校に行くところだった。その信号待ちの数分の間に北海道帰りの先輩が自転車で通りがかった。ただそれだけのことだけど、その出会いが私の人生を決定づけたのだから不思議としか言いようがない。

高校2年だった私は受験生、浪人生とその後2年は旅にも行けずにいたが、心の中でずっと「いつか北海道に行く」と決めていた。
そしてやっと大学に入学したその夏に、私は初めて友人と北海道へ旅立った。もちろん、自転車やらキャンプやらそういう旅ではなく、ちゃんと綿密な計画を立てた旅だったけど、怪我などのハプニングもあり、全く予定通りにならなかった。

でもその旅が全ての始まりだった。

旅を通して色々なものに出会い、かけがえのない人に出会い、今の自分が在る。そしてそれはあの時あの信号で先輩に会ったから。

”あの日あの時あの場所で君に会えなかったら” 今の私は無いのです。

その先輩にもらったものは他にもたくさんあって、今の自分の根幹を支えている。道を踏み外しそうになって救われたこともある。
本当に大事な人だった。会えてよかった。一緒に生きて行くのは無理でも、少し離れたところでいいから言葉を交わしながら生きて行きたかった。でも「その結びつきは残りの人生までは続かない」のだった。

今は会うことも無く遠い場所で暮らしているけれど、私の人生を決定づけてくれたことには今でも感謝しているし、幸せでいてほしいと心から思っている。でも、それはここで静かに言葉にするだけ。たぶんもう会うことはないだろう。

でももし、LaLaLandのエンディングのように、生きている間にいつかどこかで会うことがあったら、私はあんな風に微笑みたい。誰にも言わないけれど、そんな瞬間が来ることを心の中でちょっとだけ願っている。

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