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フランからユーロへ〜肩を張らずにフランス

 今でこそ何も考えずに使っているユーロ。フランが消滅してもう20年以上経ったので流石に計算し直すことはなくなった。日常生活ではもちろんユーロのままで当たり前に計算している。バゲットが一本で1ユーロほどとか、最近ではサラダが高くなってレタスでも1ユーロ半することもあるとか。

 日本からフランスに来て10年以上フランで生活した。1フラン25円の時にやって来た。さっきあげたバゲットが3フランだった時代。
 今の日本の方々はユーロとフランの関係をご存知だろうか?1ユーロはおよそ6.5フラン…西暦2000年になって間も無くの頃。フランで慣れきっていた頭にはちょっとした頭痛のタネだった。

 フランス人全員が同じ状態だったと思う。電卓(死語?!)にユーロ⇄フランの専用換算キーが付いていたくらい。1パック7.48ユーロの牛肉とかって言われてもとてもじゃないが暗算できない。6カケル7にちょっと足して50フランくらい(48.62が正解)?といった具合にいちいち面倒臭い計算をしていた覚えがある。国全体がちょっとしたパニック状態だっただろう。
 ユーロ圏の国はみんなそうだったはず。自分の国だけでもこんな状態なので他の国にことはまるで知らない。

 もうお気づきの方もいらっしゃるだろうが、どうしてもどんぶり勘定になる。フラン基準で大まかに換算するのでキッチリと同価なのか分からない。店はこれを利用して値上げをしていたようだ。四捨五入で安い方に値を付けるほどのお人好しはいない。

 ちなみに20年以上経った今でもユーロではピンとこないものもある。
 筆頭は不動産。家を買ったのはこれまで3回あったがどれもフランだった(現在の家は1999年)。当然フランの数字で頭に残っている。これをユーロにしろと言われると大変困る。6.5で割れって言われてもねぇ…暗算できるような簡単なものじゃない。なのでフランのままであらざるを得ない。
 例えば不動産屋の広告で150,000ユーロと言われても実感がないので今だに6.5掛けをやっている。約100万フラン。こっちの方が分かりやすい。何せ自分の家がフランだったのだから。比較するにはどうしてもこうなる。

 ユーロに移った直前は時間をかけてでもフラン変換して理解していた。白状するがこの状態が10年ほど続いた。自分でも驚くほどユーロに順応するのに時間がかかった。
 それに今でも後遺症がある。
 バゲットの話に戻るが、1本最低1ユーロ、ひょっとすると1.30ユーロする。当たり前になってしまった値段だが、フランの時代には3フラン。1ユーロが6.5フランだから半額以下か3分の1!ここまでインフレが進んだということをユーロ⇄フラン換算することで実感したりしている(別にしなくてもいいんだけれど…)。

 ところでこの「ユーロ」という言葉。当たり前のことだが「ヨーロッパ」から来ているわけで、日本の方は何とも思われないだろう。
 でもフランス語をやった方ならわかる。これ、思いっきり発音しにくい。 « eu »の発音は日本人に最も難しい発音だと思う。これで始まる単語はいやらしい。「ユ」なんて簡単なものじゃない。大体、言語学的に「ユ」はフランス語では反母音。「イユ」になるので « eu »とは別物。むしろ「ウ」に近い。と言うか英語の « ə »。いやそんなに奥まってないので、口をだらっとさせて「エ」と「ウ」の中間の音をお腹から吐き出す…突然フランス語講座になってしまった。
 フランにしても « fr »の発音はそれほど簡単じゃない。ユーロの« eu »といい、フランスの通貨の名前は発音しにくい。

 日本で「銭」の単位がなくなったのは第二次大戦後だそうな。だとすると通貨単位が変わる瞬間を経験をした世代はもうすぐなくなるということだ。記憶に間違いがなければゼロを2つとって最低を1円にしたはず。変な計算は要らず簡単だったのでそれほどの混乱もなかっただろう。フランスに来たことでなかなか貴重な体験をしたことになる。

 外国を飛び回る人たちはいちいち換算しているんだろうか?
 それともキャッシュレスになってきた今の時代、余計な計算なんかしないんだろうか?
 何となくまたインフレに拍車がかかるような気がするんだが、まあどうでもいいか…

 20年経ってようやくユーロに慣れた。
 イギリスはユーロから脱退してポンドが復活した。
 ヨーロッパ解体とかでまたフランスがフランに戻ることがあるとまたやり直しになるのかぁ…

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