怪文詩(2022/06/15)

「無添眼」

ああ、みなくていい。

あれとこれとで何の差が?
何が優って、何が劣って。
誰の目盛りが正しいだろう?
誰が測って、誰を測って。

じゃあ、みなくていい。

心の安らぐ蔑みと、
心掻き乱す敬いで、
心は天秤保てるか?
さてその天秤は、どこで拾った?

それは、みなくていい。

それは私たちが決めたことだ。
彼らが決めたことでも、
私が決めたことでもない。
どうして私が気に止めるのか?

もう、みなくていい。

血の因縁に縛られ。
地の信念に縛られ。
知の陰険に縛られ。

そんなもの、みなくていい。
目が悪くなるし、みなくていい。
見にくくなるし、みなくていい。

ただ目を閉じて、聴くだけでいい。

屋根に打ち当たる雨粒を。
虫や囀鳥の忙しない騒めきを。
草木を揺さぶる風の音を、
小石を追いやる川の音を、
我が身を冒す全き太陽の音を。

聴くだけでいいよ。

ただ、それだけでいいよ。

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