ベルフェイスから学ぶ、SaaSプロダクトの作り方。SaaSの広大なビジネスチャンスと、真の顧客の声を反映することの難しさ

先日クラウドサイン社内のプロダクトマーケティングの打ち合わせ時に、仲の良い企業であるオンライン商談ツール「ベルフェイス」のプロダクト戦略について話題になりました。

ベルフェイスを知らない方は以下の動画をご覧ください。

ふと思い返したのですが、オンライン商談ツールを開発しようと思ったとき、自分ならば「skype」「Googleハングアウト」「zoom」「appear.in」などの超超浸透している、しかも無料な外資系サービスが存在して躊躇してしまいます。

しかしながら、彼らのストロングポイントはセールスに特化したオンライン商談に適したプロダクト作りをしたことにあります。まず、彼らの勝ち筋はこのストロングポイントをぶらさなかったことです。恐らくプロダクトフィードバックの中には、商談時以外にも使えるようにしてほしい。社内会議でも使えるようにしてほしい(=つまり多拠点型)などの多くの声が寄せられたはずです。しかし彼らはブレなかった。言うは易し、行うは難し。

まず重要な点、最強級の競合が無料で展開し普及しまくっていても、特化型で尖れば有料でも販売はできることです。

特化型で尖ることで見えてくるSaaSのチャンス

ここから見えてくることは、汎用型SaaSがいかに浸透していても、機能特化で尖ることで広大なビジネスチャンスが生まれることです。

汎用型SaaSは、いくつか思いつきます。例えば、「box」「dropbox」のようなストレージSaaSです。例えば、「Salesforce」です。付け入る隙がなさそうで、最近SaaSの伸びが著しいのです。

例えば、保険業界向けに特化した顧客管理、文書管理サービスの「hokan」は1.4億円を調達し、保険業界の業務生産性を上げるために今まさに成長を遂げようとしています。

例えばこちらは契約書のバージョン管理に特化したストレージサービスの「hubble」です。契約締結後のストレージ保管は「クラウドサイン」の強いところですが、契約締結前の交渉履歴のバージョン管理に特化したサービスです。

このような例は他にも沢山あるでしょう。付け入る隙のなさそうなCRM、MA、ストレージなど汎用型SaaSが強い市場は、逆に特化型で攻めることでまだまだ広大なビジネスチャンスがあります。日本国内では自分が少し考えただけでも広大なビジネスチャンスがあります。

ここでチャンス!と飛びつく前に、汎用型SaaSはもちろん手が打ってあります。3rdPartyの呼び込みです。汎用型SaaSは市場規模を増やすために汎用型にしていますが、自分たちの弱点にも気づいています。だからAPI連携やアプリストア戦略が重要で、日本でもfreeeや、我らクラウドサインの「リーガルテックエコシステム」も基幹戦略として置いているのです。

また、投資戦略もこの一環で、SalesforceはSalesforce Venturesから米国、日本などで相当な金額をSaaS企業に投資する戦略を意図的に組み込んでいるのです。

真の顧客の声を聞いたベルフェイス

ベルフェイスがすごいところはここからです。「真の顧客の声」に答えたのです。これは今、ようやく本当の意味で理解できました。

皆さん、オンライン商談/会議ツールを開発する上で何から作り始めますでしょうか?当然ながら「Skype」「Googleハングアウト」「zoom」は意識しながら、何をコアプロダクトと定めて開発するかをロードマップ化します。

音声のクリアさ、画面の綺麗さ、でもオンライン商談に特化しているので資料を保管したり、トークスクリプトも保管できたりしたい。うーん、何から作り始めればいいのでしょうか。

ベルフェイスが意識したのは「音声のクリアさ」です。これは「画面の綺麗さ」よりも重要だと判断しました。音のズレは0.1秒でもラグがあると気になりますが、画面の鮮明さは多少荒くても人はストレスを感じないそうです。Netflixの映画ですら画面よりも音声にこだわっているとのことです。

そして「音声のクリアさ」が顧客が真に求めていることだと理解したら、皆さんはどのようなプロダクトロードマップを作りますでしょうか?

ベルフェイスの答えは、「開発しない」でした。恐ろしい、それが顧客の真の声だと判断したのです。そして「音声のクリアさ」は、従来の「電話してください」で乗り切ろうと判断したのです。インターネット回線を利用したWebブラウザやインストール型のソフトウェアで音声通話を実現するよりも、電話の方が音声がクリアだからです。蓋を開けてみればびっくりするくらい当たり前ですが、顧客の声を反映して自社プロダクトに組み込んでしまうのはよくある現象です。彼らは真の顧客の声を聞き、「開発しない」選択を積極的に採用したのです。

顧客はプロダクト上で全てをしたいわけではなく、「音声のクリアさ」を求めているのです。電話すればいい、そんなシンプルな答えに辿り着いたのです。失敗例は山のようにあります。具体例は、、、やめときましょう。

クラウドサインの真の顧客の声

私たちクラウドサインの真の顧客の声はなんでしょう。様々あり、全ての声に耳を傾けさせていただいています。契約締結だけでなく、契約管理、契約交渉、契約作成もしたい。全ての言語で締結したい。ワークフローも開発してほしい。債権回収もしたい。

今、最大の顧客の声は、「クラウドサインを世の中で当たり前にしてほしい」だと私は認識しています。自社は良いと思っているが、相手方に理解してもらえるか不安。送付したけれど、紙の契約が求められたなど、導入していただいた企業でもスムーズに利用できるためには細かな機能などではなく、相手方に受け入れられるかが顧客体験として、何より重要なのです。

だからこそ、認知拡大と社会受容が最大のカスタマーサクセスでもあるのです。

その一方でもちろん、契約管理に応えるために「クラウドサイン SCAN」というBPO事業を開始し、債権回収に応えるために「クラウドサイン ペイメント」という決済サービスを開始し、ワークフローに応えるためにセールスフォースやkintoneといったサービスとAPI連携を開始しています。

真の顧客の声は何なのかを捉え、勇気を持って開発しない決断もする。ベルフェイスにはいつも学ばせていただています(あと、社員の方がみんな良い人たちなのが個人的には一番大好きなところです)。

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橘大地