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1865年、自動車は速度制限は3.2kmでランタンを持つことが法的義務だった。クラウド契約サービス「クラウドサイン」リーガルデザインチームの仕事

昨今、法とイノベーションの関係について議論がなされることが増えてきました。発端はAirbnbやUberのようなグローバルサービスが、既存の法制度からすればグレーゾーンまたは違法と評価されるケースが増えたことも一因です。これらのベンチャー企業群が法改正に積極的に参与するようになってきました。

日本の著名ベンチャー企業群にも、法改正に関わる専門チームを設置するケースを聞くようになっています。例えば、メルカリ社が運営する「merpoli(メルポリ)」という政策企画ブログです。

リーガルデザインチーム

クラウド契約サービス「クラウドサイン」においても、2018年2月にリーガルデザインチームという専門チームを発足いたしました。「ビジネスを規律する法律・慣習・ルールを積極的に活用しながら、自ら主体的にあるべき姿を考え、必要があればそれらを変えるための活動を行う部署」です(詳しくは、こちらの記事)。

リーガルデザインチームのいくつかの仕事をご紹介させてください。

グレーゾーン解消制度の活用

まずはグレーゾーン解消制度を活用して、建築請負契約におけるクラウドサインの適法性を明確化したことです。

とてもマニアックな話をしますが、建設業法第19条第3項では「電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて、当該各項の規定による措置に準ずるものとして国土交通省令で定めるものを講ずることができる。」と定められています。そして、建設業法施行規則第13条の2で以下のように定められています。

建設業法施行規則第13条の2 第2項
…次に掲げる技術的基準に適合するものでなければならない。
一 当該契約の相手方がファイルへの記録を出力することによる書面を作成することができるものであること。
二 ファイルに記録された契約事項等について、改変が行われていないかどうかを確認することができる措置を講じていること。

クラウドサインがこれらに該当するかどうかを明確化すべく経済産業省を経由して国土交通省に確認し、適法性を認められることとなりました(経産省によるニュースリリースは、こちら)。

訴訟サポート資料の作成・交付

また、クラウド契約サービス「クラウドサイン」を利用し締結された契約書が、万が一紛争が生じた際に裁判所向けに説明するサポート資料を作成・交付いたしました(原本は、こちら)。

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クラウドサインの仕組みや電子署名の信頼性についての説明、その技術的仕様や概念の説明を含め裁判官に対して丁寧に行うための資料です。クラウド契約では公開鍵暗号方式を用いた電子署名技術が採用されていますが、この技術を説明したものになります。

これらの開示とともに、元裁判官の弁護士の方に連続してセミナーを実施するなど、積極的に電子署名技術を用いた締結方法について発信を行ってまいりました(セミナーはこちら)。

時代と共に変わりゆく法と、その発信

クラウド契約の分野は、クラウドサインを2015年にリリースして以来、事業分野に関連する法改正がなされています。代表事例が2019年4月以降適用される労働条件通知書の電子化解禁です。

労働基準法施行規則 第5条および労働基準法 第15条1項により書面(紙)による交付が義務付けられていたものが、一定の要件を満たした上で電子化が解禁されました。その要件や運用についても、クラウドサインのリーガルデザインチームが率先して発信、そして無料セミナーを開催してまいりました。

また、大きく変わる可能性あるのが、不動産賃貸時の締結オペレーションです。不動産賃貸を仲介会社が一般消費者に仲介する際など、重要事項説明を対面で行い、書面(紙)を交付する義務があったものが、徐々にテクノロジーを活用する方向に変遷していっています。重要事項説明は対面だけでなく、一定の要件を満たした上でウェブ会議システムを活用する選択が生まれました。

そしてこの度2019年5月(※追記:同年10月からに変更)から、重要事項説明書等(35条、37条書面)の電子化の社会実験が開始されることとなりました。まだ社会実験が開始される段階ですが、電子署名技術というテクノロジーを活用して遠隔地での締結手段により利便性を与える可能性を秘めています。

ここで重要なのは、選択肢を与えることです。「電子化する」のではなく、「電子化も可能にする」という選択肢を与えるのです。紙が便利な場面もあれば、電子化が便利な場面もある。その場面を選択できるようにするのがこれらの法改正のポイントでもあります。

本記事のタイトルにもしたとおり、自動車(当時は、蒸気自動車)が誕生したとき、「馬」を驚かせる可能性を考慮し、市街地を走るときは3.2km/hの速度制限が課されました。そして夜間自動車を利用するときは、自動車の前方55m先をランタンを持った人間が歩くことが義務付けられました。1860年代の出来事です。この規制は当然ながら徐々に緩和され、自動車を活用した交通手段の利用が一般化され、我々の社会生活を驚くほど変えました。長い期間馬と共存しながら、時代と共に自動車が普及していきました。これは極端な事例ですが、とても示唆にとむ事例です。

印章制度とその変遷

印章制度が長らく我が国における公平な取引を支えるインフラとして機能してきたことは疑いようのない事実です。実際に今尚、行政のみならず民間同士の取引においても、印鑑登録制度を前提とした代表印(または契約印)を用いて取引が行われています。電子署名法こそあれ、特に規制があるわけではない民間同士の取引においても印章制度が活用されています。

そんな中、私たちは「クラウドサイン」をリリースいたしました。印章による締結手段と共に、電子署名技術を用いた締結手段の選択肢として活用していただければ、利便性が向上すると考えたためです。ここでも重要なのは、「電子化する」のではなく、「電子化も可能にする」選択肢を与えることです。

昨今話題になったのは、法人設立時における印鑑届出の義務付けについてです。これはあくまで法人設立段階の議論で、民間取引における締結手段の話ではありません。しかしながら、とても興味深く法制度の在り方をウォッチしています。同話題については一旦は置いておきます(同ニュースに触れないのも不自然なため、触れておきました)。

ポイント

私が法改正時に重要なことだと考えていることは、進化したテクノロジーに対し厳しい技術査定を行い、査定をクリアした技術は利用する選択肢を与えることです。決して二者択一にはなってはならない(性質により、二者択一的なものもあると思いますが)。

ネット選挙、裁判のIT化なども、同様の議論がなされています。テクノロジーを用いると共に、テクノロジー利用が困難な方も常に発生いたします。だからこそ、二者択一ではなく、選択肢を広げること。

これが自分のリーガルデザインチームにおける今の考え方です。

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橘大地

SaaS、サブスクリプションビジネスの事業責任者をしており、趣味でスポーツビジネスについてよく調査しています。

Inside CloudSign

クラウドサインの中の人の記事です。