世界No.1スポーツビジネスNFLに学ぶスポーツの競争戦略 〜Jリーグが学ぶべき戦力均衡モデル〜

NFLは米国4大スポーツであるMLB、MLB、NHLの中でも、圧倒的なビジネス基盤を有し、売上高もダントツの一位となっています。その売上高は2016年には130億ドル(日本円換算:1.41兆円)にも達しています。もう一度言いますが、1.4兆円です!

米国におけるポピュラースポーツの調査でもNFLが群を抜いており、MLBに次いで、NCAAFという米国大学のカレッジフットボールも国民的人気を博しています。

特に2月に行われるチャンピオン決定戦である「 SuperBowl(スーパーボウル)」は単なるスポーツの枠を超え、米国人全員(本当に全員と形容してよいほど!)が注目する国民的行事となっています。テレビ視聴率は40%後半を超え、30秒のスポット広告は5億円弱にも及ぶ莫大なマネーが動いているのです。

ゆえにNFLから各チームへの分配金は2016年には過去最高額の78億ドルに達してリーグに所属するクラブが全て収益安定しているのです(このリーグからの分配金制度は日本でもJリーグが採用し、野球では採用されていません)。

分配金制度の日本での差異はこちら

日本のスポーツ関係者が学ぶべきNFLのスポーツリーグ人気の秘訣

米国スポーツを学んだことがある者には常識になっていますが、NFLには設立当初から「スポーツの魅力とは最高レベルで戦力の均衡されたチームでの競争にある」との考え方に基づき運営されています。

そして、この考え方を3つの重要な制度に落とし込んでいます。

①レベニュー・シェアリング
②サラリーキャップ
③ウェーバー制ドラフト

重要な制度なため、一つ一つ解説していきます。

日本のプロ野球でも昔から採用すべきとの声が出ていますが、逆指名権がなくなったりはしているものの、戦力均衡への動きは遅いものとなっています。日本のプロスポーツは絶対に戦力均衡モデルを採用すべきだからです。

①レベニュー・シェアリング

NFLではリーグ全体であげたテレビ放映権料、入場料収入の60%、グッズ売上、スポンサー収入(ネーミングライツ権を含む。)が各リーグに平等に分配する制度を導入しています。

日本のスポーツ関係者は考えられないでしょう。各クラブチームの経営努力でグッズやスポンサーを獲得するのに必至ですが、その収入が全てリーグ全体の収益に配分されてしまうのです。

NFLとしては都市の人口規模や既存の人気チームがより人気になってしまっては人気チームが固定化され、リーグ全体の魅力が増すとの考え方に立脚しています。そしてこれは米国スポーツが、JリーグのようにJ1とJ2でチームの入れ替えがないからこそできる仕組みです。米国スポーツはリーグのチームが固定化されているのが常識的です。

②サラリーキャップ

これほどまでに人気のあるNFLの選手は当然に米国スポーツで最大の年棒を誇っているかと思いますが、MLB、NBAには劣っています。

NBAの平均年棒額は約7億円、MLは約5億2000万円のところ、NFLは約3億円に留まっています。選手数の違い自体はあるものの、これには厳格なサラリーキャップ制度が関係しています。

サラリーキャップ制度とは各チームクラブが選手の給与の最大金額が毎年規定され、越えることが絶対に許されない厳格な制度のことをいいます。サラリーキャップはシーズン終了後に決定され、現時点ではチーム全体で170億円程度のキャップとなっています。この制度により、一部のチームが高額選手を買い漁ってスター球団が固定化することを防止できるのです。

MLBでも一応サラリーキャップ制度は存在するのですが、上限金額を超えても「贅沢税」という金額をリーグに支払うことによって抜け駆けすることが可能で、実際にもニューヨークヤンキースのようなスター球団の年棒は高騰傾向にあります。

日本のプロ野球界で導入できなかったのは、読売巨人軍がプロ野球全体の人気を支え、巨人軍が人気がなくなるとリーグ全体が共倒れする可能性すらあった歴史的経緯が大きいでしょう。これによりパリーグ全体の人気が低迷したこともまた事実ですので、日本のスポーツリーグが学ぶべきことは多いでしょう。

③ウェーバー制ドラフト

日本でもウェーバー制のドラフト制度の導入がかなり昔から議論されてきたため知っている方も多いかと思いますが、NFLでは前シーズンの最下位チームから順番に指名を行っていくドラフト制度を採用しています。わかりやすく戦力均衡のための制度です。

このNFLのドラフト制度は日本の比較にならないほどお祭り的イベントとなっており、初日が1巡目、2日目が2・3巡目、最終日に4~7巡目の指名と3日間のドラフトイベントとなっているのです。

日本のバスケットボールの新リーグ「BJ.League」がウェーバー方式のドラフト制度を採用したことで日本でも戦力均衡モデルがスポーツの人気の源泉であることが認知され始めています。

なぜサッカーは戦力均衡モデルより強豪集中モデルを採用せざるを得なかったのか

今までの解説により、スポーツの人気を発展されるためには戦力を均衡させることが何より重要だとご理解いただけたかと思います。しかしながら、世界的に人気スポーツであるサッカーに詳しい人なら、戦力均衡とは程遠く、一部の人気チームが強豪として集中固定化していることは有名でしょう。

それには、サッカーがグローバルスポーツであることゆえのハンディキャップを背負っているのが理由です。そして、これはグローバルであるヨーロッパサッカーゆえのハンディキャップであり、当然ながら米国サッカーには関係のない話で、Jリーグもまた同様です。Jリーグがヨーロッパのサッカーモデルを真似するのは得策でなく、NFLこそ学ぶべき点があることにまだ関係者は気づいていないのが歯がゆいところです。

この点を今から解説していきます。

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なぜヨーロッパサッカーは戦力均衡モデルを採用しなかったのか

スポーツリーグの人気の秘訣が戦力均衡モデルにあるとして、なぜヨーロッパリーグは正反対の強豪集中モデルを採用しているのでしょうか。

スペインのリーガエスパニョーラは実質「レアルマドリード」と「バルセロナ」の2強リーグとなっており、ここ10年で9回もこの2チームが優勝を占めているのです。そのほかにも、プレミアリーグやフランス、スコットランド、ポルトガルなどの各EUリーグでも同様の状況です。

これには「UEFA Champions League」の人気が大きく関係しています。世界全体で最も強い国を決めるW杯より人気があるとも言われ、実際にもUEFA Champions Leagueの方がレベルの高い試合が見れます。CL 決勝の全世界観戦者数は1億人を超えており、NFLよりもその人気が高いとも言われています。

そのためビジネスモデルとしても国内リーグで注目を浴びること以上に、ヨーロッパ全体での人気を博してグローバルでの放映権料、グッズ収入を獲得できる方がビジネスとして効果的なのです。そのため、リーグ全体が戦力均衡になるよりも、リーグの一部のチームに戦力を集中させて「UEFA Champions League」で優勝できるような人気チームを作った方がリーグ全体としても人気になる構造にあるのです。

そしてレアルマドリードのようなスターチームがアウェイとしてスペイン中の各チーム地域に遠征することでリーグ全体が活性化するという構造にあります。これは読売ジャイアンツ一強時代にセリーグ全体が活性化していたのと同じ構造にあります。

このビジネス構造はなかなか脱却することが難しく、安易に戦力均衡モデルに踏み込むとUEFA Champions Leagueで勝てるチームがなくなり、結果としてリーグの魅力自体も薄れてしまう可能性が常に孕んでいるからです。

Jリーグは戦力均衡モデルを採用しなくていいのか

ではJリーグは戦力均衡モデルを採用しなくて良いのでしょうか。

Jリーグではそもそもドラフト制度すらなく、自由競争とサラリーキャップ制度もないという前提に立っています。Jリーグ全体の人気が上昇しないのでサラリーは高騰してない、という悪循環ゆえに自由競争でも成り立っている微妙な状況ですが、そもそも制度は適切なのでしょうか。

現在Jリーグでは「鹿島アントラーズ・サンフレッチェ広島2強時代」と呼んでいい状況にあります。ここ10年で7回が2チームの優勝で占めているのです。それに次いでも浦和レッズ、ガンバ大阪と実質強豪だけで優勝争いをしている構造にあります。

そのため、優勝争いよりも降格争いが毎回スポーツニュースを賑わす状態になってしまっています。決まった優勝争いのストーリーよりも、降格争いの方が悲壮なストーリーが作りやすいからです。奇跡の優勝が存在しないJリーグに魅力を感じるでしょうか。

一方で、ヨーロッパリーグのようにAFCチャンピオンズリーグで優勝するために強豪集中モデルを採用する賭けを行う理由は一部あります。しかしながらJリーグクラブは最近優勝はなく、韓国、中国のクラブに優勝をさらわれてる状況にあります。

そしてそもそもAFCチャンピオンズリーグ自体アジア圏内で特段視聴率が高い構造にあるわけではなく、「UEFA Champions League」をは全く異なる状況にあります。

Jリーグでは戦力均衡モデルを採用すべきとも考えられます。

Jリーグが検討できる制度

それではJリーグではどのような制度を採用すべきでしょうか。

まず導入を検討すべきは、ウェーバー方式のドラフト制度です。プロ野球と異なり、国立を賑わしたスタープレイヤーがどの球団に入団するか注目を浴びる機会を浴びることはありません。

米国スポーツや日本のプロ野球で人気の、ドラフト制度というお祭りが存在しないからです。プロ野球でおなじみのドラフト制度にまつわるストーリーがなく、入団後の新人の活躍を日本中でウォッチすることがないからです。

そして戦力均衡となるウェーバー方式により、一部の固定されたチームだけで優勝争いをするような状況を避け、日本全体地域での活性化を促すべきなのです。強豪集中モデルは日本の人気チームが世界のトップチームとも渡り合える状況になって初めて意味をなしますので、程遠い状況では機能しません。

他にもレベニューシェアリングの一部採用など、導入するべき制度はありますが、まずはウェーバー方式のドラフト制度の導入が必要だと提言いたします。

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橘大地

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