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パパの子育て心理学のおはなし

大学院の博士課程で心理学分野から父親の育児研究をしている元会社員の子育て主夫が、父親育児のヒアリングをしたいというので、喜んで会いにいってきた。他人とは思えない、この面白そうな人の話がタダで聞けるならとてもおいしい。

途中からの参加だったけど彼の講義も交えながら、何人ものパパと3時間以上話していた気がする。ファザーリングジャパン関西の父親は、みんなおしゃべりが大好きだ。

いくつかとても面白い話を聞いた。

彼の論文の発表はまだらしいので、ここではエビデンスは話せないけれど、エッセンスくらいなら書いていいと言われたので書いてしまおう。

お父さんとお母さんの遊び方がちがう

お父さんは、自分もこどもになって遊びがち。お母さんは大人のまま遊びがち。すごくざっくり言えばそういうこと。もちろん、主担当・副担当と言葉を置き換えてもらって構わない。

育児には「世話」「遊び」の両面がある。一般的な傾向として、お父さんは「遊び」寄りになる。遊び寄りの子育ては「達成感」を感じやすい、という。

一方、「世話」のタスクは達成しても満足感が得にくい傾向がある。子どもがかわいいから世話をするというよりも、子供を育てなければならないという義務感から「世話」は生じる。

母親の子育てがつらいとき

「子育てはなぜつらいのか?」という問いを彼は心理学的にひも解いている。それを解明して、皆が育児しやすい社会を目指している。

ある時期から育児雑誌は「育児指南書」的なものから「共感性雑誌」へと変わるという。いろんな親の口コミやアンケートが中心になる。そのほうが、だめなのは自分だけじゃない、これでいいんだ、という安心が得られるからだという。とてもよくわかる。

(主に)母親の育児はマジメだ。さまざまな社会的な力も働いて、マジメにならざるをえない。心理学的には、親の心の中には二つのモードが共存して、無意識のうちに切り替わっている、という。それが、育児のタスクを確実にこなす<マジメモード>と、子どもとただ触れ合いたい<かわいがりモード>だ。

育児のつらさが「仕事」と「家庭」の両立の難しさからくる、というのは社会学的によく言われていることだが、じつは「世話をする役割(マジメ)」と「子どもの意思を尊重する役割(遊び)」の心理的葛藤からもくるのではないか、というのが彼の仮説だ。

父親は子育てがつらいのか?

父親は子どもが言うことを聞かないとき「自分の役割は仕事」という意識が強くなるという。つまり逃避行動に出る。また、母親とは異なり、「世話」のタスクを果たすことでも達成感を得られ、ポジティブになる。母親よりも「できて当たり前」感が低く、また失敗しても母親のフォローあるから、だ。

では、父親の育児がつらくないのか、といえばつらいこともある。ひとつはネットワークの無さ。母親も共感を得ることで、つらさを軽減しているように、父親にもそうした共感は必要だ。だけど、それが無いので、育児への参画そのものへのハードルが高い。また働く母親への理解はかなり進んでいるものの、働く父親への理解はそれほど進んでいない。それがそのままネットワークの無さにもつながっている。

つらさの解消法はなにか

「世話役割」と「遊び役割」の葛藤がつらさの一因なのであれば、まず解決策としては、「いま自分はどちらのモードなのか」という一段上の視点から俯瞰するということが挙げられる。そのうえで、メリハリをつける、だれかに手伝ってもらう、夫婦間で役割交代をする、などの具体的なアクションを起こす。
子どものイヤイヤについては、世話をしていても遊んでいても、どっちにしろイライラするのは変わりない。でも意識を一段上に上げると、心理的な安定が得られやすい。
進化論的には人はもともと一人・一家族で子育てするようにできていないという。だから、ひとりで役割を抱え込まないで、夫婦で、あるいは家族で、地域で、うまく役割転換をしてメリハリがつけられたら、もっと子育てしやすい空気が生まれるのかもしれない。

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