プラカラーを捨てた

 プラカラーを捨てた。
 何年か前、オートバイのプラモデルがとてもかっこよく思えた時期があって、自分でも作ってみようと思い、カタナ1100のプラモデルと、プラカラーやら接着剤やらを、大手電気店で唯一の関西資本ジョーシン電気は阪神タイガースを応援していますで買ってきた。休日の午後、早速組み立ててみようと箱を開け、ワクワクしながらランナーからパーツを切りはずし、接着剤を断面に塗ってみて、あかん、と思った。

 めっちゃ臭いのだ。

 プラモデル用の接着剤というのは、それ自体に粘着性があるわけではなく、プラスチックをうっすら溶かして、パーツ同士を接着し、再び固まることで離れなくする仕組みであるようで、いわゆるシンナー臭がした。僕はこのニオイがだめだった。今まで有機溶剤のニオイをほがほがしっかりと嗅いだことなんてなかったから、そんなところに落とし穴があるなんて思いもしなかった。
 2つか3つ、パーツを組み立てたところで気分が悪くなってきた。大丈夫な人にとってはどうってことないのだろうけど、僕はちょっとごめんなさいこれは無理ですとなり、窓を開けてみても部屋に漂う臭気への敏感さは変わらず。もはやプラモデルの組み立てどころではなくなった。幸い、健康に影響はなかったけど。

 そんな、パーツの接着すらままならぬ状態で放置された悲しきカタナ1100であるから、もちろん塗装なんてまったく手を付けてないわけで、結局、プラカラーが活躍することもないまま、僕のプラモデルライフはたった数時間で終わりを迎えた。
 プラモデルの組み立て以外、他に使い途もないので、最近、部屋を片付けたついでにプラカラーと筆と接着剤は捨てた。物を捨てるときの「もしかしたらまた使うかも」という、あの後ろ髪を引かれる名残惜しさはなかった。
 語弊の無いよう言うときますけど、プラモデルは悪くないんです。あのニオイへの耐性がなかった僕が悪いんです。

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