巨大なカレンダーを捨てた

 巨大なカレンダーを捨てた。
 僕が小学生の頃の話。近所の酒屋のおっさんが、なぜかコカ・コーラ社のカレンダーをくれた。自分の身長よりも大きかったから、おそらくB0サイズぐらいはあったと思う。下の方にちっさく申し訳程度に3ヶ月分の暦が配置されていて、一応、カレンダーの体は成しているものの、ポスターのほぼ全面はコカ・コーラっぽい爽やかなイメージの写真が占めている、イメージ広告のための販促ポスターである。

 その酒屋のおっさんは、そのポスターの期限が切れて使い終わったからくれたのではなくて、新品そのまま、未開封で持ってきてくれていた。コカ・コーラ社からもらった非売品グッズをそのまま横流ししていいのか、渡した営業は店内に貼っていないことに何の疑問も抱かなかったのか、今となってはグレーゾーンの疑義が累死しているが、当時の僕はなんにも気にせず、喜んで自分の部屋に貼っていた。
 3ヶ月経ってまた新しいポスターをもらったら、古いのはもう役に立たないが、そのサイズ感ゆえに捨てるのがもったいなく、かつ、ブランド力と業務用という希少性に価値を感じて、丸めて紙で巻いて筒状にして部屋の隅に立てて保存していっていた。

 その後、2年ほどでそのポスターはもらえなくなった。コカ・コーラ社が配るのをやめたのか、営業に苦言を呈されたのか、おっさんが持ってくるのを面倒くさくなったのか。
 結果、丸められたポスター10本ほどが部屋の片隅に残った。これが非常に邪魔。暦を確認できるからこそ、貼っていても意味があるが、何かよくわからない巨大で爽やかな写真のポスターを部屋に貼る小学生などいない。
 今ならフリマアプリで処分できるかもしれないが、時はインターネット前夜。そんな手段はどこにもなく、結局、数年経って捨てた。

 ちなみに、このときの経験がきっかけとなって、後に開発されたのが今のメルカリなんです、とかそういう話ではない。

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