スウェットを捨てた

 スウェットを捨てた。
 古着屋で980円で買った真っ赤なスウェット。店で見たときはおしゃれに見えたが、いざ日常では、いささか気恥ずかしく、一度は着て出掛けたものの、その後はすっかり2軍落ち。ずっとクローゼットで眠ったままになっていた。
 でも、せっかく買った服なのだしなんとかならんかな、と時々は思い出したりしてはいた。ハンガーに掛かっている姿は悪くはなかった。
 そんな折、ネットでブリーチ染めの動画を見て、これだ、と思った。漂白剤の原液を服にかけるだけ。色が抜けて、タイダイ染めのようにおしゃれに仕上がると紹介しているではないか。なるほどたしかにいい感じに仕上がっている。真っ赤なスウェットもこれで雰囲気が出て、活用の幅が広がるに違いない。ブリーチ染めのスウェットを着こなすなんて、僕はなんていう上級ファッショニスタなんだ。
 早速、セリアへ行き、食器用と衣類用はどう違うのかわからんけど、スウェットに使うんだから衣類用の漂白剤を108円で買ってきて、どばどばとスウェットにふりかけた。あほな僕は、そう、ふりかけた。みるみる色が抜けていき、まだらを通り越してほぼ白になった。明らかにやりすぎだった。
 しかも、完全な白になってくれればそれはそれで白いスウェットとして着れるだろうが、そこは古着。真っ赤なときには見えなかったシミや汚れがこんにちわ。ばっちり目立つようになってしまった。そもそも、そういうのんをきれいに落とすのが衣類用漂白剤の本来の役割じゃないのかよ、なんで汚れだけ残して、布の色を落としてしまっているのか、なにをやっとるんだ。
 と、憤ったが、もうどうしようもなかった。ただ目の前にはほぼ白い、でも薄茶色のシミだけが大きく目立つスウェットがあった。派手で恥ずかしい頃はまだよかった。汚くて恥ずかしい服など着れるわけもなく、もはや捨てるよりほかなかった。ファッショニスタへの道は険しい。

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