ポメ部長の叱咤激励(仮題) 第4話 『24時間営業』

「小皿くん、どうだい、この部署にはもう慣れたかね?」
「あ、ポメラニアン部長。おかげさまでだいぶ仕事のやり方もつかめてきました」
「そりゃ、よかった。今度の取締役経営会議で発表する、例の案件ね、あれ、期待してるよ」
「ありがとうございます。ざっくりとまとめてみたんですが、目を通してもらってもよろしいですか?」
「もうできてるの? さすが小皿くんだ」
「小売業における新業態開拓プロジェクトということで、こんな感じです」
「んーと、なになに。<24時間営業の便利ステーション、コンビニエンスストア>?」
「そうです。小規模かつ何でも取り扱う24時間営業の小売店という、今までにないコンセプトです」
「24時間営業って、そんな夜中に客来るの?」
「市場調査の結果が…このページなんですが、若者だけでなく比較的高年齢層のお客様でも利用したいという割合が、この程度はありまして」
「あ、そう。だったらいいけど。で、何でも取り扱うって、たとえば?」
「まずは一般的な食料品ですね、弁当、カップ麺、ジュース、お菓子とか、あとは雑誌や文具や下着なども扱う計画です」
「夜中の3時にパンツ買う人ってほんとにいるの?」
「ですから、市場調査についてはこ、」
「いいや、まあ、わかったから。24時間営業だとさ、店長寝る暇ないんじゃない? 体もたなくないか?」
「あくまでフランチャイズ契約という形をとりますので、店長の労働時間がどれだけ長くなろうと」
「本社には関係ないと」
「はい」
「小皿、お主も悪よのお」
「恐縮です」
「でさ、これ、全部定価で売るの?」
「便利さを提供するのがコンビニエンスストアのコンセプトですので。定価であっても支払っていただけると考えています。コンセプトが浸透するまで時間がかかるかもしれませんが」
「タバコとアルコールも扱うんだ?」
「そうですね。既存のたばこ店や酒店からの改装というアプローチも検討中です」
「夜中の3時に、」
「ですから、それについ」
「じゃなくて、夜中の3時に未成年がたばこ買いに来たらどうするの?」
「法律に則って対処すれば問題ないかと」
「まちがいなくヤンキーだよ、暴れたりしない?」
「雇用の際は充実した教育システムも用意していますので対応できるかと」
「対処するって言っても、スタッフみんなバイトでしょ? この人手不足の世の中じゃ、人集まらないかもよ。いくら出すの?」
「地域にもよりますが、900円から1200円ぐらいの時給で計算しています」
「来ないんじゃないかなあ。だいたいさ、この資料見てたら、バイト君にやらせること多すぎでしょ。チンピラへの対応だってそうだし、唐揚げあげて、フロア磨いて、税金の収納代行やって、宅急便の受付も、バックヤードの品出しも、ゴミ箱の掃除も、チケット販売も、ほかにもまっだまだあるんでしょ。そんなこと全部やれる能力あるスーパーマンなら、バイトなんかぜずにどこかで正社員としてバリバリ働いてるでしょ」
「日本人で賄えない場合は、外国人、中国とかアジアの方も検討していますので、大丈夫かと…」
「外国の人に、プレミアムジューシー肉まんと、大老軒コラボ豚まんと、とろ~り3種チーズのピザまんと、こだわりスパイシー印度カレーマンと、あんまんの違い、ちゃんと教育できる?」
「あんまんだけネーミングがシンプルすぎますね、再検討します」
「いや、そこじゃなくて」

 続く。

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