インクジェットプリンターを捨てた

 インクジェットプリンターを捨てた。
 インクジェットプリンター(音引きを付けたほうが素人ぽさが出て良い)に対する世間一般の不満といえば、およそ次のとおりである。

 いざ使おうとすると、たまにしか使わないせいで、起動のたびにヘッドクリーニングが始まり、大量のインクが消費される。実際の印刷に使ったインクより、ヘッドクリーニングで使ったインクのほうが多いぐらいだ。そしてヘッドクリーニングでインクを使いすぎたせいで、いざ印刷の段になればインク不足に陥り、交換してくださいメッセージが表示される。モノクロの文書を印刷するときでも、なぜカラーインクがないと印刷不能になるのか理解できない。とはいえ、他に方法もないので、しぶしぶインクカートリッジを差し替えると初期動作でまた大量のインクを吐出する。カートリッジの大きさに対する充填されたインク量の少なさ、そして、その少なさに対する初期動作でのロスの多さ。お前は阿呆かとプリンターごと2階の窓から外へ放り投げたくなった。プリンタを買ってからA4で十数枚ぐらいしか印刷していないのに、インクカートリッジは何度交換させられたろうか。しかも、このインクカートリッジが純正だとすんごい高い。暴利を貪るプリンターメーカーに、憤怒に打ち震える消費者の代表として、裁きの雷を食らわすべく、リサイクルカートリッジに手を出してみるも、案の定、発色が悪い。薄いし濁ってる。安いもんね、そこは目をつぶろうかねと奥歯を噛みしめ、鼻水をすすり、自分を慰めてみる間にも、否応なく詰まり始めるヘッド、次第にかすれてゆく線、回復させるべく実行するヘッドクリーニング、そして完成するインク浪費の環。数千円で買ったインクジェットプリンターにいったいいくらインク代を支払ってしまったのか。いよいよ馬鹿らしくなってきたので捨てました。年賀状は手書きです。

 という世間の声とまったく同じ理由で捨てた。

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