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"プログラミングを用いた舞台演出"のシステム構成アーカイブ1 : MUTEK.JP × WOMB (2021/12/10)

はじめに

この記事連載の狙いは、こちらのnoteをご覧ください。

概要

第一回目は、2021年の12月10日に渋谷WOMBで行われたMUTEK.JP × WOMBにて、自身がパフォーマンスした照明・レーザー・映像を用いた演出時のシステムの紹介です。

画像4(Photo by Kotaro Yamada)

まずは簡単にこのイベントの説明をさせていただきます。
このイベントは、2021年で6年目を迎えた電子音楽とデジタルアートの祭典、MUTEK.JPのEDITION6で行われたプログラムの一つです。渋谷にあるクラブ、WOMBと共同で開催されたコラボレーションイベントであり、オールナイトで行われました。(webサイトはこちらです。)

このMUTEK.JP (EDITION 6)では若手クリエイターを支援することなどを目的としたOPEN CALLが実施され、ライブプログラムのvisual担当を希望して応募したところ奇跡的に選出していただき、出演が決まりました。

このイベントで私はRisa Taniguchiさんのビジュアル担当をさせていただきました。
もともと、公募の際に「配信・現地の双方で成り立つように、映像・照明・レーザーの3つを組み合わせた表現をしたい」と伝えていたため、今回の最終的なオファーをいただいた時も、配信はないですがそれら3つを使った表現をお願いします、と運営側から伝えられていました。
また、DJなので尺は1時間で決まっていますが、当日のセットリストのようなものはなく、ご本人の音源データなどをいただき雰囲気を掴んで当日に臨む、という形でした。


画像5余談ですが、実はそもそも、このWOMBという会場には主にレーザー演出の仕事で何度か来たことがあり、会場のレーザーの施工も弊社で行っているためメンテナンスにも来たりと、会場の照明さんとは知り合いでした。(LINEで打ち合わせさせていただきました。笑)
また、自分以外の演者さんの時は照明をAIBAさんという方が行ったのですが、この方(と、今回は関係ないですが息子さん共々)もよく一緒に仕事をさせていただくクラブ界隈でとても有名な照明さんでした。(LINEで打ち合わせさせていただきました。笑笑)

演出システム

さて、本題の演出システムについてです。画像2

会場に常設の照明卓はMA Lightingのgrand MA2 full sizeで、レーザー卓はPangolinのbeyondでした。どちらも普段から仕事でよく使う卓だったので、会場に乗り込んでAIBAさん(WOMBさん)の卓データを共用しそれぞれの操作をすることは問題ないと判断し、持ち込みの制御ハードウェアは映像用のPC1台のみにしました。
が、せっかくの機会なので、それぞれの卓を別々に操作・制御するのではなく、それぞれのソフトウェアを連携させて制御することとしました。
(それまでやってきた、修士までの研究と普段のライブ演出の仕事で培った経験を融合させたパフォーマンスシステムにしたかったのです。)
修士研究では照明卓をMaxで自作しましたが、テーマは照明卓やレーザー卓など既存の演出システムの拡張(またはアップデート)を目指すことだったので、実際にこのような場でその成果を発揮でき非常に嬉しかったです。

結果、当日組んだシステムはこちらのようになりました。
ケーブルは、ほぼ全てLANケーブルです。

mutek(6)システム図_アートボード 1


ポイントとしては、照明卓は他のオペレータの方とデータを共有して使用する必要があったため、こちらの都合で色々と設定を変更することはできません。もちろん、レーザーも同様です。
そこで、メインの操作はMAで行いつつ、laserと映像の制御する信号を照明の信号(DMX, やりとりはArt-Net)としてMAから出力し、レーザー・映像のソフトで任意の形式に変換・使用する、という方法を用いました。
レーザー制御に用いたbeyondというソフトウェアは特殊な設定をすることなくDMXの信号を入力し、制御に使うことができます。また、ボタン一つでそのDMX入力の効力を切り替えることが可能です。なので、自分のパフォーマンスのときだけ入力可能な状態することがワンタッチでできます。
映像はTouchDesignerを用いましたが、こちらも当然DMXを入力し任意のチャンネルの値を好きなパラメータにアサインできます。レーザーの制御をdefaultのDMX設定で行うと少し使い勝手が良くないため、一部のレーザー制御は一度TD側で変換した後に信号を送っています。(もちろんArt-Netです。)
MAからTouchDesignerを制御するための信号は上述のようにDMX(Art-Netでやりとり)で行っているのですが、MAはムービング卓と呼ばれるものなので当然fixtureのpatchが必要になります。適当なdimmerチャンネルを割り当てて必要なチャンネル数でpatchしても良いのですが、今回は専用のfixture dataをオリジナルで作成し会場の卓に読み込ませていただきました。

画像1(fixture dataを読み込んでいるところを会場さんに激写されました。)

ソフトウェアの連携は全てArt-Netを用いて行っています。

レーザーを2台持ち込んだのでそちらの施工に時間がかかると予想して、その他の仕込みをかなりシンプルに行える準備をしましたが、大正解だったと思います。
PCを1台置いて、会場のswitching hubにLANケーブルで接続させてもらい、IPの設定などを行うだけでそれぞれのソフトウェアの連携が完了するため、非常にスムーズに仕込むことができました。
照明の信号がとても多い会場ですが、Art-Netの出力も新たにunicastを2つ(1ユニバースずつ)増やすのみだったので、それぞれのPCで信号のモニタリングをしても全く問題なく通信できていました。
(別現場ですが、全体のArt-Net信号(パケット)が多すぎて、ユニキャストでPCに1ユニバースだけ入力した際でも信号が途切れ途切れになることがありました。。)

画像3

総括

非常に貴重な体験をさせていただきました。
本当にありがとうございました、楽しかったです。
WOMBさんが作成したアーカイブ映像はこちらです!
こちらも、ぜひご覧ください。

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