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「I am」を「イット」と読んだ中2の娘

『うちの子は字が書けない』著者の千葉リョウコさんに、続編『「うちの子は字が書けないかも」と思ったら』で登場したフユくんの妹、ナツちゃんの読み書きの症状についてうかがいました。
※インタビューをしたきっかけは「発達性読み書き障害の症状って?」をご覧ください。

お話しを聞いた方:千葉リョウコさん
当事者との関係性:母

名前:千葉ナツさん
現在(取材時)の年齢:20歳
読み書きが苦手だと気づいた時期:中学2年生
専門機関での判定(診断):あり
読み書きの程度:ひらがな、カタカナは読み書きできる。英語は特にニガテで「b」と「d」の見分けがつかない。漢字テストは直前に覚えたものは書けるが、数日たつと忘れてしまう。

①読み書きが苦手だと気づいたきっかけは?

中学2年生の夏休みに「I am」を「…イット?」と読んだ場に居合わせ、おかしいなと思いました。
夏休み明けに英単語のテストと地理のテストがあったのですが、英単語は50問中3つしか正答できず、地理は100点。この差は興味の有無なのかな、いやそれにしてもちょっと差がありすぎじゃないか…と宇野先生にご相談し、「英語だけが特にできない発達性読み書き障害がある」と知りました。
もしフユが発達性読み書き障害でなければ、「英語嫌い」「英語がニガテ」というだけで、ずっと発達性読み書き障害だということに気づかなかったかもしれません。

『「うちの子は字が書けないかも」と思ったら』p.55より

②読み書きが苦手だと気づき、どうしましたか?

まず検査を受けました。
その結果、英語だけが特にできないというわけではなく、漢字もほとんど書けず、ひらがな・カタカナにも実はできていない部分があったとわかりました。
夏は幼稚園の頃からお友だちにお手紙を書いていたし、母の日や誕生日には手書きのメッセージカードもくれていました。学校の漢字テストでもそこそこの点数をとっていたのですが、あとから「直前に覚えて点数いいやつだけ見せてた」と言われました。
機転が利くというか…要領がいいんですね。悪気もなく「てへ♡」ってかんじで。

③トレーニングは受けましたか?


フユがトレーニングを受けていたし、私は当然ナツもそうするのかと思ったのですが、あっけらかんと「私は受けなくていいかな~」と言われてしまいました。
「漢字を書くときはスマホを見ればいいし、通うのめんどくさいし~」と。
それでもひらがなとカタカナは書けたほうがいいよね?と少しの間だけトレーニングをしましたが、ひらがな、カタカナだけで終わりました。

『「うちの子は字が書けないかも」と思ったら』p.61より

④学校での合理的配慮は?

検査結果がでて発達性読み書き障害だと判明したのが、高校に合格した時期でした。
ナツは受けられる配慮は受けたいという意思があり、高校に申し出ましたが、この頃は私立の学校や企業では合理的配慮は義務ではなく「努力義務」でした。
フユのときより少し進んではいたものの、やはり理解してもらえないことが多くありました。
合理的配慮が、本人の特性に合わせたサポートにより学びの環境を整えるためのものであるとしたら、それは受けられなかったといってもいいと思います。
本人も「書いても覚えられないのにノートを提出しなきゃいけない意味がわからない」「日本語訳を丸暗記する英語の勉強って意味わからん」などと言っていました。

⑤受験にあたって苦労したこと

ナツは美術系の高校へ進学したので、受験では実技もありました。本人は学科はともかく実技はよくできた!と言っており、そのおかげで合格できたのかもしれません。
「I am」を「イット」と読むくらい英語ができなかったので、英語だけは家庭教師をお願いし、英単語を覚えずに点数をとる方法を教えてください!とお願いしました。

⑥きょうだい二人の発達性読み書き障害の症状と捉え方の違い

フユは小さい頃から本を読むのが好きで、図鑑をすみずみまで読んで覚えているタイプでした。
でも、字を書くことには興味を持たなかったので、発達性読み書き障害だとわかったときは「なるほど…」と納得する面もありました。
ナツの場合は、幼稚園の頃からお友だちにお手紙を書くなど文字を書くことに興味をもっていたので、驚きも大きかったです。
ナツは、フユができなかった漢字の書き取りの宿題も難なくこなしており、そのまま中学生まで気づかなかったので、症状の違いは大きいですね。英語でいえば、ナツよりフユのほうがまだ少しできていました。

フユはまじめでなんでもきちんとこなしたいタイプ、ナツは好きなことはとことん!嫌いなことはやりたくないというタイプです。障害の捉え方は、本当に全然違っていて……発達性読み書き障害だとわかったときも、フユは「トレーニングをして字を書けるようになりたい」と高校卒業までトレーニングを続けました。ナツは「めんどくさいからトレーニングしなくていい」と笑いました。
どちらがいい悪いはないのですが、親としてそれぞれの立場に寄りそうのは、ちょっと大変でした。でもそれは発達性読み書き障害だから…ではないですね。
3番目の子は発達性読み書き障害の症状は今のところ見られませんが、学校と合わずに苦労しています。障害の有無にかかわらず、子ども一人ひとりのいろんな特性、性格に合わせつつも、親のほうだってなんでもできるわけじゃないので、できる範囲でやっているというかんじです。「本気で困ったときは、なにをおいても助けるよ!」ってことだけ伝わっていればいいなと思っています。


フユくんの『うちの子は字が書けない』以降とナツちゃんの症状については、『「うちの子は字が書けないかも」と思ったら』をぜひご覧ください!

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