朝の3分間瞑想

  今朝、3分間の瞑想をしてみた。無心になるのはなかなか難しいので、心の中で「無」と唱えながら目を瞑る。しかし、すぐに集中は途切れた。首から肩にかけてが重たいような、張っているような。それから、鼻の奥が苦しい。春に、初めて副鼻腔炎になってからというもの、時々鼻の奥に膿が溜まっているような不快感を感じるようになった。更に、額には汗が滲んでくる。座っているだけなのに、エアコンもつけているのに、首から上が熱を持っているような感じがした。まさか発熱?セットしておいたタイマーが鳴り、わたしは体温計を脇に挟んだ。36.7℃。普段より若干高い程度か。

  たった3分間なのに、普段の生活の中の3分よりもずっと長く感じた。そして、どこか懐かしい気分になった。そうだ、黙想だ。わたしは中学時代、剣道部だった。練習が終わると、必ず黙想の時間があった。恰幅の良い顧問の先生の「もくそーーーう」という、大きく響く声を思い出す。彼は顧問であったが、一年のときの担任の先生でもあった。担当教科は国語。わたしは唯一、国語だけは得意だった。テストの点数が良い、という意味で。漢字の読み書きは覚えなければならないが、その他に関してはテスト用紙の中に答えが必ず書いてあるので、勉強しなくても点数が取れた。

  三者面談で、わたしはその担任の先生に褒められた。市の文集に、わたしが書いたもの(短歌。クラスで数名選ばれたので大したことはない)が載ったこと、平均点の低いテストにも拘らずよくできていたこと。国語の成績は5段階評価の5だった。「友達関係が心配」と言う母に「こういう性格ですから、友達ともうまくやってますよ」彼は豪快に笑った。母は驚いただろう。これまで「大人しい」とか「引っ込み思案」だとか、そんな言葉ばかりを聞かされてきたのだから。あの頃のわたしは少しばかり尖っていた。思春期特有の〝他の子よりも目立ちたい〟気持ちが、本来の大人しさを上回ったのだ。幼い頃のわたしや、大人になってからのわたししか知らない人からすれば信じられないだろうけれど、「毒舌」と言われたこともあった。あの先生は、人のいいところを見てくれる先生だったんだな、と今頃になって気がついた。

  最後に彼に会ったのは、中学の近くにあるコンビニでだった。わたしが初めてアルバイトをした場所だ。一言二言言葉を交わしたが、それがどんな言葉だったかは覚えていない。高校になってからも、現代文だけは得意だった。読書感想文が校内代表に選ばれ、教科担当の先生から「選ばれた三人の中でも一番良かった」と言われた。今でもこうして書くことが好きなのは、あの中学のときの担任の先生のおかげなのかもしれない。3分間は貴重だ。

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