札幌記念コース論

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札幌記念(札幌・芝・2000m)

コースデータ

・右回り
・スタートから1コーナーまで 約385m
・最終直線 266.1m(Aコース時)
・高低差 0.6m
・直線坂 平坦

特徴

・スタート地点は4コーナー奥のポケットで、1800mのスタート地点から200m後ろに下がったところ
・向こう正面で僅かな上りがあるが、おおむね一周を通して平坦なコースといってよい
・1,2コーナー、3,4コーナー共にコーナー角が大きく、全体的に丸いコース

 このコースは、札幌記念以外のOP競争では使用されない。


コース考察

○一周コースの例に漏れず内枠有利

札幌芝2000m・枠順別1着割合(2018年~・1勝クラス以上・16頭)
札幌芝2000m・枠順別馬券内割合(2018年~・1勝クラス以上・16頭)

 小倉や函館の2000mと同様にデータの母数が多くないため、考察としては不十分・不正確な可能性があることはご理解いただきたい。

 一応フルゲート時の成績分布から分かることとしては、やはり一周するコースの宿命ともいえる内有利/外不利。
 どうしても同じ2000mといってもコースの内側を走るのと外側を走るのとでは実質的な走行距離に差が生じてしまい、それが結果にも反映されると考えられる。

 8枠からはフルゲート時に勝ち馬が出ておらず、連対馬も1頭のみと振るわない。これは明確に枠による不利を受けているといってよいだろう。
 4枠が勝てていない理由は何とも言えないが、データが少ないが故の下振れだろうか。

 基本的に一周ぐるっと回る芝コースは内が有利と見て問題なさそう。

○能力検定も足切りも両方ある

札幌芝2000m・脚質別1着割合(2018年~・1勝クラス以上・16頭)
札幌芝2000m・脚質別馬券内割合(2018年~・1勝クラス以上・16頭)
内側の円が馬券内・外側の円が総数

 おそらく札幌での一周コース全般に言える特徴だと思われるが、「4コーナーを早めに通過することのできる能力」が求められる。

 前提として、札幌競馬場の最終直線そのものは他の所謂ローカル競馬場とそう変わりなく、直線だけの競馬でひっくり返すことは難しい。そのため前目で通過する必要があり、これがいわゆる足切りである。
 ただし、札幌競馬場の場合は1,2コーナー通過の時点では後ろでも許される。より極端な言い方をすれば、「4コーナーで前にいればいい」のが札幌競馬場の最大の特徴である。

 この性質が単純な足切りコースというだけでなく能力検定コースとしての特性も出している。
 単純な足切りコースであれば終始前に居続ける逃げ馬がもっと好成績になってもよさそうだが、少なくともこのコースにおいての逃げ馬は好成績とは呼びづらい。また、単純な足切りコースと呼ぶには差しの成績がそれなり以上に良いことから、足切りコースの性質は確かに保有しているものの、他の性質も持っていると考えられる。
 その他の性質こそが能力検定、つまりは純粋に強い馬が勝ちやすいということである。

 なお、一概に「能力」、「強さ」といっても色々ある。
 少なくとも札幌競馬場で求められる「能力」「強さ」は上がり勝負で優位に立てるそれとは一線を画しているといえる。なぜなら競馬場全体として足切り要素も多分に含んでいるからである。
 ここで求められる「能力」「強さ」とはつまり、4コーナーで前にいるための能力であると言えよう。

 漠然としているが、単純にひたすら前々での競馬を得意とする馬であれば先行力やペース維持能力、逆に序盤は控える競馬をする馬であれば中盤以降に捲って上がっていくことが求められるため、ロングスパートに対応できる持続力が問われるといえるだろう。

 戦い方によって求められる能力が少し違うので、そこは注意深く考えていきたいところ。


過去の札幌記念ラップ推移

 過去10年分の抽出だが、13年は函館での開催なので除外している。

 スタートしてから1コーナーまでの距離が長いことから序盤のペースが上がることは考えられるが、コース全体を通して平坦なことでラップに干渉してくる箇所がなく、結果年ごとにレース質がバラバラになっている。

 ただし、すでに述べた通り、どの位置からレースを運ぶにしても上がり3Fだけの勝負になることはほとんどなく、上がり勝負になるとしても4~5F調。極端な場合18年や22年のような、上がりを一切問われないタフなレースになることもある。

 G1馬やG1級の馬も出走してきやすい条件ではあるが、それらの馬であってもありとあらゆるレース質に対応しうる場合は少なく、大抵の場合は自分の得意なパターンで極めて高いポテンシャルを発揮する。
 例えば22年の勝ち馬ジャックドールは、瞬発力勝負では分が悪いが上がりを問われないタフな展開なら勝負できる馬である。21年の勝ち馬ソダシはマイルでの実績が豊富だが、この距離では不安材料も拭えない分じっくりと乗れる方がよかったと考えられ、結果21年の前半5F61.4というスローペースは僥倖であった。仮にこの2年のペースが逆であったならば、まず間違いなくジャックドールもソダシも勝ちきれなかったであろう。

 その時々でレース質そのものが全く異なるものになりえるからこそ、安易な型嵌めをしてしまうのは危険である。


まとめ

 コースとしてはやや独特な能力が求められるが、基本的にまぐれの一撃が通用するような舞台ではない。下級条件であっても札幌記念という大一番であってもそれ自体は同じ。
 それゆえに、想定されるレース質と馬の適性とを比較し、レース質と高い親和性を持つ馬をチョイスするという作業が必要になる。

 このコースだからこう、という型に嵌める作業ができず、1ステップ多くなる分予想の手間自体はかかるが、一方で考える基準として「4コーナー通過時点で前目にいられない馬は軽視」というものもあるため、中・長距離の中では比較的アプローチをかけやすい方かもしれない。

 とはいえ馬の能力を比較するのが苦手な人にとっては、難しい条件であることは間違いないのだが。


文責:もじゃ

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