セントライト記念・オールカマーコース論

X(旧Twitter)アカウントもあります。フォロー等よろしくお願いします。


セントライト記念/オールカマー(中山・芝・2200m)

コースデータ

・右回り/外回り
・スタート→1コーナーまで 432m
・最終直線 310m
・高低差 5.3m
・最終直線坂 2.4m
(残180m~70m間で2.2m上り、残70m~ゴール間で0.2m上り)

特徴

・スタート地点は4コーナーから直線に向くところ
・1コーナーまでの約2Fの間に1回目の急坂を一気に駆け上がる
・外回りのため1コーナーを過ぎると再び直線、緩い下りを約240m走る
・2コーナーの途中から向こう正面にかけて一気に下り
・3コーナーの途中で内回りと合流、3コーナーは平坦で推移
・4コーナーの途中から若干の下りがあり、下り切った後は最終直線1F弱で再びの2.4mの急坂

このコースを使用するOP以上の競争

G2
AJCC(4上)
セントライト記念(3歳)
オールカマー(3上)


コース考察

○概ね内であればあるほどいい

中山芝2200m・補正込み枠順別1着割合(2019年~・1勝クラス以上・16頭以上)
中山芝2200m・補正込み枠順別1着割合(2019年~・1勝クラス以上・16頭以上)

 「補正込み」とは、当該コースが最大18頭立てで開催される、即ち7・8枠の出走頭数が1~6枠に比べて多くなることを踏まえ、1~6枠の出走頭数とほぼ同じになるように一定の係数を掛けた後の数字であることを意味する。
 今回の場合、7枠に86%程度、8枠に80%程度の補正をかけている。

 前提として、母数がかなり少ない。
 中長距離のレースはどうしても出走してくる馬の頭数が少なくなり、また開催されるレース数自体も少なくなるので、必然的に母数が少なくなってしまう。
 今回の場合、母数が12レース分しかない。

 勝ち馬は2枠と8枠がデータなし。2枠はそうなる合理的な理由が見当たらないため偶然と思われるが、一方で8枠は比較的大回りになる中山の外回りでの不利が大きくなりやすいため厳しい結果になりやすいのだろうと推測される。

 3着内と併せて見た時に。見出しで挙げたような「内であればあるほど良い」という話になる。
 レースの中身は外からスパートをかけての強襲も珍しくないとはいえ、枠の傾向的には内有利。

○早め先頭に立てる馬有利

中山芝2200m・全頭脚質分布(2019年~・1勝クラス以上・16頭以上)
中山芝2200m・馬券内脚質分布(2019年~・1勝クラス以上・16頭以上)
内側の円が馬券内・外側の円が総数

 グラフ上は勝ち切るには前につけた方がよく、馬券内に来やすいのは中団から進めた馬……と考えるのが手っ取り早いが、話はそう単純でもない。

 この中山2200mというコースは曲者で、3コーナーまでの位置取りが参考にならないという性質を持っている。
 例えば、2021年1月23日の中山12Rで勝ったマイネルミュトス(鞍上:柴田大知騎手)のコーナー通過順は16頭中13-13-12-6で、これは差し脚質に分類される。レースを見ている側の肌感覚としてはこれを差しといっていいのかどうか微妙なところではあるが、データ上は差しになっている。
 また、2019年1月19日の中山7Rで3着だったアルビオリクス(鞍上:石橋脩騎手)の場合、コーナー通過順が15-15-2-5で、最早差しというより捲りといって差し支えないような気すらしてくるが、これもやはり脚質分類は差し。
 要はあまりデータでの分類を当てにしづらいコースなのである。

 そこでコースの特徴を再度見ていただきたいが、2コーナーから向こう正面にかけて一気の下りがあることが分かる。
 この下りこそがこのコースのデータをバグらせている温床そのもので、ここで後ろに構えていた馬たちが一気に動き出すため、ごく自然な流れで捲りを誘発させやすくなっている。

 逃げがこのコースで極めて不利を強いられている原因・最後の直線だけの追い込み一気もやはりこのコースで成立しない原因はともにこのコースの特性によるもので、序盤でどの位置に居ようともこの下りを利用して4コーナーから直線に向くまでにポジションを押し上げられれば勝負になるコースで、それが厳しいのが逃げ・直線一気であるというだけの話である。

 なので立項してはいるが、ポジショニングについてそこまで神経質になる必要はない。
 重要なのは中盤以降に動かしていっての持続力勝負ができる馬か、またそこで仕掛けを打てる騎手であるかどうかという部分である。コース論とは別の方向に言っているのは仕方ない。


過去のセントライト記念・オールカマーラップ推移

セントライト記念

オールカマー

 セントライト記念・オールカマーの両方に言えるが、中長距離レースで一貫したペースが存在しない。要するにその時々のメンバーや騎手心理によってペースが大きく変化する。

 ただ比較的共通しており、中山2200mそのものの傾向といえるものもある。それは前後半5Fの差で後半の方が早くなりやすいことと、その割に10秒台の早いラップを刻まないこと。
 レースラップとして公式に残るものは逃げ馬によって作られたもので、実際には後ろの方にいる馬は後半の下りに乗って10秒台の時計で襲い掛かってくる。

 ある程度コースによって脚力に下駄を履かせてもらえるとはいえ、基本的にこの下り区間を利用して3,4コーナーで勝負できる位置まで馬を押し上げられないとノーチャンス。
 それを分かっている騎手は早めに動き出していくので、後半の時計が緩みのないタイトなものになる。
 一方前半は大きな上りをこなさなければならず、あまり大胆な動きは採り辛い。よって前半よりも後半にどれだけロングスパートで動いていけるかがこのコース・この重賞を攻略するキモであるといえる。

 

主観

 外回りコースではあるものの、本質的には他の中山コースと同様に瞬発力よりも長く脚を使える持続力に長けた馬が好走しやすいコース。
 あまり使用されることのないコースではあるのでやや曲者感はあるが、根本的には逃げと追込一辺倒の馬は厳しく、しっかりとポジショニングをした馬が勝ちやすいという割と素直なコースでもあるので、コースがどうだからという部分に囚われるよりも出走馬そのものの精査を丁寧に行っていく方が実利的なところ。

 ところで主観の項目に行くまで一切触れてこなかったが、中山2200mといえば「リピーター」が多く存在することで知られるコースでもある。
 現役時代筆者が好きで追いかけていたグレイルもこのコースの重賞で3着に2度来ており、他にもタンタアレグリア・アルアイン・ステイフーリッシュ・ミッキースワローなど数多くの「リピーター」が存在する。

 だが、この記事のコース考察の項でわざわざ太字にした部分、つまり「ロングスパート調の競馬をする馬」が上位に入ってきやすいという話と組み合わせて考えると、この「リピーター」の正体が見えてくるのではないだろうか。

 つまり、中山2200mで好走を繰り返す馬というのは、それ即ち「他のコースでは切れ負けしてしまうが、末脚の切れ味勝負に絶対ならないこのコースがドンピシャでハマる」中・長距離馬ということに他ならないのではないか、という話である。
 実際上記で挙げたリピーターも、アルアイン以外はG1タイトルには手が届かなかった馬たちで、あまりG1では強調されづらい能力がここでは求められるといえるだろう。

 予想する際には、ここがマイナー条件であるということを念頭に置いて考えるのもよいかもしれない。


文責:もじゃ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?