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四日目の日記

 記事のタイトルを考えるのが億劫になってきた。三日坊主を乗り越えた先にこんな答えが待っているとはついぞ思わなかった私は思わず、悪魔の誘惑に負けてシュガートーストを食べてしまった。筋トレマンの大敵である菓子パンを、である。私はシュガートーストに目がない。お風呂に入ってるとっきも、トイレに入ってるときも、ご飯を食べてるときだってシュガートーストが頭から離れない。何時如何なる時もシュガートーストのことについて考えている。私の家には二日酔い予防のラムネ菓子が常に常備されていた。甘いの食べたければそれを食べれば良い。しかし、あのバターをふんだんに塗りたくった上からまんべんなく砂糖を塗すという悪魔が作ったんじゃないかと思うシュガートースト相手に、ちっこいラムネ程度では勝ち目はなかった。私はいつだってシュガートーストへと思い馳せてしまっていた。糖分&カロリーは偉大である。

 話のとっかかりとして四日連続も筋トレについて語ってしまったのでそろそろ禁止にしようとかと思う。例に漏れず今日もまたこの日記を書く前に私はギターを弾いていた。ネタを思いつくためのルーティーンである。ちなみに持ち曲は二曲しかない。私は大切にその二曲を永遠とループさせて脳と指を活性化させていた。
 以前友人にギターためのコツはなんなのだと聞かれ、「整理整頓する感じ」と私は答えた。そもそもギターを弾けるといっても私の指はコード弾きのみ対応している。他は未対応なのでとやかく聞かれても一切受け付けられないので、ギターをよく分かっていない友人で本当に助かった。私唯一のオシャレ趣味にケチはつけられなかった。
 そして私の言った「整理整頓」に怪訝な顔する友人にコード弾きについて少し語った。コードとは予め決められた配置に指を置くことである。ギターには基本的に六本の弦がついており、コード弾きには六本の弦に対して複雑怪奇な指の配置を求められる。Fコードなどが代表的だ。決められた配置で抑えた指のまま逆の手に持ったピックを弾けば音が鳴る、といった仕組みである。つまりコードで曲を奏でるというのは常に決まった指の動かし方を続けなければいけないということ。
 ではなぜ整理整頓なのかと友人は憤った。そのコード弾きの説明もよくわからないし、そもそも今君が弾いたその二曲以外まったく聞いたことないぞ。本当におしゃれなのか君は。と根掘り葉掘りされそうになったので慌てて私は大切に保管していたシュガートーストを半分分け与える。とたんに大人しくなった友人に私は続きを話した。

 つまり決まった指の配置を連続して行えば、コード弾きとなって曲が奏でられる。曲にはテンポがあるので指の動作が滞ってはいけないし、一つ二つ飛ばしてもいけない。急いてしまってもいけない。曲とは決まった連続性なのだ。
 決められたテンポで決められた配置に指を置く。
 この感覚が整理整頓に近いのだと私は思っている。
 とっちらかった部屋などを片付けるときに、自分が予め決めておいた場所へと仕舞って収める。洗濯した衣類をたたみクローゼットに仕舞う。掃除機だって決まったテンポでかける。急いても駄目だし、靴下は同じ色でまとめないと駄目だろう。
 脳内で幻聴するメロディにたいして一個一個のコードを真摯に収めていく。指の形を、ピックの振り方を、可能な限りテンポに合わせて奏でるのだ。

 これが私の思うコード弾きのコツだと思う。あとはまあ根気だというと、口の周りを砂糖まみれにした友人は「君はおしゃれなやつだな」と太鼓判をもらえたので良しとする。

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