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小1の冬から不登校に。「逃げじゃないですよ」その言葉が支えになった

2023年6月に開校した神戸市灘区にある「ラーンネット・あーる」。今回は、開校当初から通っているBちゃんのお母さまに、ラーンネット・あーる(以下、あーる)に入学するまでの経緯や大切にしている教育観について聞きました。


Bちゃん プロフィール
年齢:7歳(小学校2年生)
入学時期:2023年6月
好きなこと:ゲーム、プログラミング


学校以外の選択肢を知れたことが救いだった

—— あーるのことは、どのように知ったのでしょうか?

あーるを運営しているラーンネット・グローバルスクール(以下、ラーンネット)のことは、たまたま友人から聞いたことがきっかけで知りました。娘がまだ幼稚園に通っている頃です。

実は、小学校に入学する前から「学校に行かないと言うかもしれないな」と心配していたんです。と言うのも、娘が通っていた幼稚園は、子どもの個性を大切にして伸び伸びと育ててくれるような場所でした。それでも娘は、「行きたくない」と言うことがあったんです。そんな不安を友人に話していたときに、「こんなスクールがあるよ」と教えてもらいました。

—— ラーンネットを知ったときは、どのような印象を持ちましたか?

こんな素晴らしいスクールがあるんだ...!と衝撃を受けましたね。それまでの私は、子どもの気持ちをちゃんと受け止めてあげたいと思っていたものの、「小学校には行かせなければいけない」とも思っていました。それは、学校以外の選択肢を知らなかったことも影響しています。

もし娘が学校に行きたくないと言い出したら、どうすればいいのか?「じゃあ、こうしよう」と提案できる選択肢がなかったことが一番苦しかったんですよね。私自身が自分に嘘をつきながら、「勉強は大事だから、学校には行くしかないんだよ」と娘に言って聞かせていたかもしれません。なので、ラーンネットの存在を知れて本当に救われました。

フルスクールは定員がいっぱいで入学することができなかったのですが、アフタースクールのステモン・クラスには小学校1年生の4月から通うことになりました。娘は機械やゲームが好きで、その興味関心を尊重してくれるような場所なんです。

※フルスクール:ラーンネット・グローバルスクールが運営している小学生対象のスクール。六甲山の豊かな自然の中で、「自ら学ぶ力」と「探究心」を育む独自のカリキュラムを展開している。

※ステモン・クラス:ラーンネット・グローバルスクールが運営しているアフタースクール。STEAM教育を通して、テクノロジーを活用した創造力・表現力・論理的思考力・問題解決力を育む。

娘の“ありのまま”を受け入れてくれた

—— 小学校1年生になってからは、どのような様子でしたか?

最初は学校に通っていましたが、7月頃から「行きたくない」と言うようになりました。具体的な原因はちょっとわからないのですが…。学校以外の選択肢を考えることにはしたものの、正直不安でいっぱいでした。本当に学校に行かせなくていいのか?これは逃げなんじゃないか?そんな葛藤もありました。

それで、当時ステモン・クラスでお世話になっていた齊藤勇海さん(以下、いさみん。現在はあーるのスクールディレクター兼ナビゲータ)に相談しました。いさみんは不登校に対して全くネガティブな感情は抱いていませんでしたし、「それは逃げじゃないと思います」とはっきり言ってくれたんです。そして何より、娘のことを一切否定せず、そのままを受け入れてくれました。それが本当に心強かったし、嬉しかったんです。ちょうどそのときに新しいスクールとしてあーるができると聞いて、説明会に参加しました。

—— あーるの理念を聞いて、どのような印象を持ちましたか?

自分や他者を大切にすることや、幸せに生きていくことについてお話されていたことが印象に残っています。カリキュラムの一つであるSEEラーニングの説明を聞いたときには、鳥肌が立つような感覚がありました。もちろんそれ以外のカリキュラムも素晴らしくて、生きるエネルギーの源に直接働きかけてくれるような学びだと感じました。

学校の代わりに過ごせるような居場所としてのスクールではなく、理念があり、そこに共感できるようなスクールに出会えたことが奇跡のようで…。娘はステモン・クラスに通っているときからいさみんのことが大好きだったので、それもあってすぐに入学を希望しました。

※SEEラーニング:SEEは、「Social(社会的), Emotional(情緒的)and Ethical Learning(倫理的知性の学び)」の略。体験を通して自分自身の五感に意識を向けたり、他者や社会とのつながりを感じるプログラム。(参考:https://www.seelearningjapan.com/

余白のある時間と、安心できる環境がある

—— あーるに入学してからの様子を教えていただけますか?

家以外の場所はもともとあまり好きではないのですが、あーるには安心して通っていますね。開校日が週3日(2023年11月現在)なので、家で休める時間が多いところもいいなと思っています。朝は9時から9時20分の間にあーるに着くように行って、帰りは14時半頃に家に着きます。なので、小学校に通っていたときよりも時間に余裕があるんですよね。

朝はゆっくり過ごせるし、帰宅後も夕食まで2〜3時間あるので、自分の好きなことをしたり一緒に何かをしたりする時間があります。娘だけではなく、家族にも余白が生まれたような気がします。夫には「最近は生き生きしていて、前よりも楽しそうだね」と言われました(笑)

—— 保護者同士の関わりについては、どのように感じていますか?

「あーるの理念に共感している」という共通の価値観があるので、通じ合うものがあるなと感じています。うちと同じように、何らかの理由で子どもの輝きが失われていき、やっとの思いであーるにたどり着いて来られた方もいます。その経験があるだけで、苦楽を語り合えるんですよね。

そして、あーるの保護者の方たちは、子どものあるがままを大切にしている人ばかりです。それは大人同士の関係でも同じで、いろんな人がいてもお互いがあるがままを尊重し合えている感じがしています。

今は、本音で子育てができている

—— あーるに通い始めてから、お母さま自身にはどのような変化がありましたか?

受験して、いい大学に行って、いい会社に就職する。以前の私はそれが当たり前だと思っていました。ただ、心の奥底では、全員が同じように教科の勉強をすることにはどこか納得できていない感覚があったんです。娘に対して「宿題やった?」と聞いておきながら、実は私自身が「なぜやらないといけないんだろう…?」と思っていた。

あーるでは国語や算数などの基礎学習がカリキュラムに含まれていないので、それを聞いたときは驚きました。でも、娘が生き生きと過ごす様子を見て、未来の保険のために勉強することよりも、好きなことから学びを広げていくことの大切さをより感じるようになりました。今は、私自身が本音で子育てができている感じがします。

—— 最後に、子育ての中で大切にしていきたいことを教えてください。

大切にしたい考え方や理想はありますが、その通りに子どもと接してあげられているのかと聞かれると、全く自信はありません。人として、母親として、不器用でうまくいかないことはたくさんあります。

子育てでうまくいかないことがあるとしたら、それは子どもに問題があるのではなくて、親の不安感や自己肯定感の低さから生じていることなのかもしれないなと感じることがあります。結局、自分自身と向き合っていくことが子育てなんだと思います。

ただ、どんなに理想的な親を目指しても、別の誰かになることはできないんですよね。自分を信じ、子どもを信じられたらそれでいいのかなと。そのために、小さなことに一喜一憂せずに、一緒に笑い合ったりお互いの気持ちを素直に伝え合ったりできる関係でいることを大切にしていきたいと思っています。

取材・文:建石尚子

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