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大学非常勤講師の給料をめぐるあれこれ

いま話題になっているはてな匿名ダイアリー「残念ながら大学の非常勤講師の報酬額が安いのは「侮辱」ではない」(2019年11月17日)の記事中に「ある大学の専任教員が別の大学の非常勤講師をやるというケースはいまだに少なくない。ポスドクと違ってどういう動機で引き受けているのかわからない」と書かれているので一言.

なろ城下町に本務地があるワタクシがずっと複数の大学で非常勤講師を兼業で続けてきたきっかけはもっぱら「知人から頼まれたから」ね.「〜大学へ出講してくれない?」という依頼は職場の理事長とか知り合いの大学教員から来る.そういう “私的人脈ネットワーク” 以外に非常勤講師をリクルートするすべがないからでしょ.本務地をもちながら非常勤講師をしている多くはワタクシと同じようなきっかけがあったんじゃないかと推察している.

元記事に書かれている「月給2.7万円」という金額は都内のふつうの私立大学だと “あるある” で,ワタクシもそういう安値を承知で引き受けたことがある(結局はやめさせてもらったが).ワタクシの場合,非常勤講師で儲けるという動機はまるでなく,自分の「高座の修行として」と割り切って続けた.なお,非常勤講師の給料に関しては「私立だから安い」とか「国立だから高い」というような一般論(その真逆の発言もあるが)は通用しない.千差万別.私立と国立の別なく大学間の “分散” がとても大きいし,講師の職階や年齢によっても大きく差があることは周知の通りだ.

ワタクシの非常勤講師経験で言えば,同じ国立大学でも,安いところは時給4000円台後半/60分だったが,高いところは “時給9,000円近く” でしかも講義時間105分は「みなし2時間」と計算するので,実額はその2倍になる.この出講先では「90分講義」→「105分講義」に変更後も, “時給” はそのままで「みなし2時間」換算も変わらなかったので,教務の担当者に「これって実質的な “15分” 分の “賃下げ” ですよねぇ」と愚痴ったことがある.

なろ城下町から大学に非常勤出講するには「兼業」と「依頼出張」のふたつの選択肢がある.前者の「兼業」の場合,出講先からは給料が出るが,本務地の給料は兼業時間分だけ差し引かれる.後者の「依頼出張」の場合は,本来の業務のひとつとみなされるので,本務地の給料は差し引かれないが,出講先から給料は支給されない.ワタクシは積極的に兼業という選択肢を選び,出講先からお金を出させるようにしている.一方,ほとんどのなろ研究者は依頼出張で大学に教えに行っているらしい.しかし,非常勤出講先でいわば “タダ” で講義をするというのは社会的におかしいだろう —— それって講義という労働に対する報酬の “価格破壊” でしょ —— とワタクシは考える.

そんなわけで,なろ城下町の中では昔も今もワタクシはぶっちぎりで兼業しまくっている研究者とみなされている.とくに,フォーマルな「兼業規程」が適用されない今の身分(再雇用職員)になってからは完全なるフリーダムを満喫している.

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