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観音台の静かな日々 — 再雇用稼業備忘録

昨年3月に農研機構を退職して,4月に再雇用(「専門員」)の身分となり,はや一年余りが過ぎた.退職前後のことどもについては,備忘メモ書きしておかないときっとそのうち忘れてしまうだろう.以下,思いつくままに:

収入が大幅に減る —— 退職前は月給計算,退職後は日給計算になるが,月額で言えばおよそ半額弱(4割〜5割)に減る.しかし,同時に,天引きされる控除額は約1/3になるので,実質的に毎月振り込まれる収入額はそれほど変わらないのが意外だった.なお,退職前は天引きされていた住民税は,退職後は天引きではなく別払いになる(もちろん収入が減るので税金額もそれに応じて低くなる).
兼業は事前届出不要 —— 予期していなかった最大の朗報かも.再雇用職員に関しては兼業規程が適用されないので,事前に本務先に申請して兼業許可を取る必要はない.大学の非常勤出講や所外の委員委嘱なども届出は必要なし.今は “事後的” に人事に連絡してはいるが,それも実はいらないようだ.欠勤届を申請する際に「兼業につき」と付記すればそれで十分.ある意味,やりたい放題のフリーダム.
エフォートゼロの極楽 —— 退職しているので,中課題や諸プロジェクトに伴う “エフォート” がまったく付かない.つまり,これまで毎年毎年あれこれ要求されていた研究計画・進捗状況・成果報告などに関わる仕事が一切合切なくなるということ.学会発表・論文出版・著書執筆の報告も何一つする必要がない.これはとんでもない自由度の高さで,自ら体験してみて初めてそのありがたさがわかる.何者からも追い立てられることがない静かな生活が満喫できる.
清貧生活 —— もちろん「エフォートが付かない」ということは「お金がつかない」ことと同義である.再雇用職員に配分される研究費や出張費はゼロなので,もし必要があればそのつど申請して,予算範囲の中で融通してもらうことになる.ワタクシの場合,研究資料や機材などはすべて自費購入してきたので,出張旅費だけ申請している.なお農研機構の場合,再雇用職員は科研費など外部資金の筆頭者になることはできない.
研究環境と居室 —— 管理職で退職し再雇用されると企画部門など事務系業務に就くことが多いが,ワタクシは研究員として退職&再雇用されたので,居室はいまのところ退職前と同じなので,仕事の環境は変わりがない.ただし,積年の “本の山” がタイヘンなことになっているので,別室に移るとなると大仕事になるだろうな.
再雇用という身分 —— 再雇用されるからには,農研機構のオモテの業務に対して一定の “貢献” が求められる.ワタクシの場合も,再雇用の際に交わした契約書に記された通り,毎年の数理統計研修や統計コンサルティング,都道府県の農業試験研究機関での出張統計講習など,退職前と同様の仕事を抱える.再雇用職員は向こう数年間の期間限定の身分だが,オモテの “御奉公” は勤め上げるつもり.
日々の過ごし方 —— あわただしく駆け回っている周囲の常勤研究員たちに比べれば,ワタクシたち再雇用職員が置かれている状況はエアポケットのように凪いでいる(よう知らんけど).聞くところでは退職前後の環境の “落差” にとまどう人もいるらしいが, “天動説” なワタクシの場合はほぼまったく変わりない日々を送っている.お金は減ったが時間と自由は増えた.まだしばらくは先に進めそうだ.

以上は,農研機構という国立研究開発法人での再雇用に関わる備忘メモなので,他機関でも “汎用性” がある内容かどうかはまったくわからない.こういう人事雇用がらみのことはなかなか口外されないことが多いが,何かの参考になれば.

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