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#30 「ベネッセコーポレーション事件」東京地裁(再掲)

2004年3月17日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第30号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 参考条文

★ 労働基準法 第93条(※改正前)

「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において無効となった部分は、就業規則で定める基準による。」

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■ 【ベネッセコーポレーション(以下、B社)事件・東京地裁判決】(1996年6月28日)

▽ <主な争点>
賞与支給基準の効力

1.事件の概要は?

本件は、B社では賞与額について退職予定があるか否かにより支給額に差異を設けていたところ、同社は従業員Xに対して年内の退職予定がないことを前提として冬季賞与を支払ったが、Xはその2日後に退職したため賞与が過払いになったとして、B社がXに対し、100万円余の返還を求め争ったもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<Xの入社から退職の意思表示までの経緯等について>

▼ 平成4年2月、XはB社に入社するにあたり、H人事課長と面接し、同社における労働条件の説明を受け、後日、同課長に対し、その労働条件を受け入れる旨を電話連絡し、同年4月、B社に入社した。

▼ Xは入社当初、東京支社の企業事業本部開発部に課長補佐として配属され、同年10月、同企業事業本部人材開発部に異動した。

▼ 希望していた営業の仕事に就くことができない等の理由によりB社では仕事の展望を見出せないと感じていたこと及び病気の父親の看病に専念する必要があったことから、退職を決意したXは同年12月11日、直属の上司であるA課長にできるだけ早い時期に退職したいとの強い希望を伝え、出張中のF部長にもその旨を電話で伝えた。

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<B社の給与規程の定め、Xに対する賞与の支払等について>

★ B社の給与規程には、「賞与は支給対象期間末日に在籍し、かつ勤続一ヵ月以上の従業員に支給する」、「冬季賞与の支給対象期間は、当年5月1日から10月31日までとする」、「その他の賞与の支給に関する項目については、支給の都度、支給基準書で定めるものとする」旨の規定が設けられていた。

★ B社は平成4年度冬季賞与について、支給基準書を作成し、その中で、支給日は同年12月14日とされ、支給基準については以下のような旨の条項があった。

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