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#156 「大真実業事件」大阪地裁(再掲)

2006年10月11日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第156号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【大真実業(以下、D社)事件・大阪地裁判決】(2006年1月26日)

▽ <主な争点>
厚生年金保険法および雇用保険法と使用者の義務

1.事件の概要は?

本件は、中華料理業を営むD社のパートタイム従業員であったXがD社に在職中、同社が(1)Xについて、厚生年金保険の被保険者資格(以下「本件資格1」という)の取得を届け出なかった、(2)平成5年分から9年分まで、Xの給与から所得税を源泉徴収しながら、これを申告せず、Xに対して源泉徴収票を交付しなかった、(3)Xについて、雇用保険の被保険者資格(以下「本件資格2」という)の取得を届け出なかった、(4)Xに対して時間外賃金および解雇予告手当を支払わなかったと主張し、(1)に対する損害賠償金200万円等、(2)に対する損害賠償金25万円等、(3)に対する損害賠償金108万余円等、(4)について、時間外手当および解雇予告手当の合計額と同額の129万余円の付加金の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<XのK店およびN店での勤務等について>

▼ Xは5年9月13日以降、D社の経営する中華料理店であるK店でパートタイム従業員として勤務していた。

★ 当時のXの勤務時間は21時から翌朝5時までであり、週4日程度勤務していたが、Xが勤務している間、D社が本件資格2の取得を届け出ることはなかった。

▼ D社は13年、同店を焼肉店に業態変更しようとしたが、BSE問題発生のため、上記変更を中止し、中華居酒屋に業態変更することにし、14年2月、同店の営業を終了し、Xを含むパートタイム労働者全員が退職した、

▼ 同年4月、D社のN店での人手不足から、Xは同店で勤務を始めた。この際、新たに労働契約書は作成されず、D社がXの本件資格2の取得を届け出ることもなかった。なお、Xは雇用保険法に定める短時間労働者には当たらなかった。

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<Xの退職後の雇用保険手続等について>

▼ 同年12月、D社はXを解雇した。Xは15年4月、公共職業安定所(以下「職安」という)に失業等給付の受給について相談に行ったが、担当者から雇用保険の加入手続がとられていないため、失業等給付を受給できないとの説明を受けたので、XはD社に対し、雇用保険について2年間遡及して加入手続をとるよう要求した。

▼ D社は過去2年分の雇用保険料を職安に対して支払った、また、同社はXの離職証明書を職安に提出したが、同証明書について、提出した担当者は「短時間以外」と「短時間」の違いを理解していなかったため、職安の職員と協議して記載したが、K店の退職に関する離職証明書には「短時間以外」の欄に、N店の退職に関する離職証明書には「短時間」の欄に丸印が付されている。

▼ Xは雇用保険の失業等給付の受給を申請したが、職安所長は同年8月、XがK店を退職したことに伴う給付については、退職してから1年以上が経過しており、雇用保険法の定めにより支給の対象とならず、N店からの退職に伴う給付については、Xが短時間労働被保険者であるが、被保険者期間が1年に満たないことを理由として、いずれも不支給処分とした。

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