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#195 「ヤマト運輸事件」東京地裁

2007年11月14日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第195号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【ヤマト運輸(以下、Y社)事件・東京地裁判決】(2007年1月29日)

▽ <主な争点>
パート社員の雇止めの効力

1.事件の概要は?

本件は、Y社を雇い止めされたXが雇止めが無効であるなどと主張して、同社に対し、地位確認や損害賠償としての慰謝料の支払い等を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<Y社およびXについて>

★ Y社は、貨物自動車運送等を業とする会社である。

★ Xは、平成16年11月、Y社との間で、同年12月31日までのアルバイト契約(以下「本件アルバイト契約」という)を締結した。

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<本件雇用契約および本件派遣契約等について>

▼ Xは17年1月16日、(同年5月15日まで)期間の定めのあるパート社員としてY社に雇用され、X・Y社間の雇用契約(以下「本件雇用契約」という)は、同年5月16日、同年8月16日および同年11月16日(期間は18年5月15日まで)にそれぞれ更新された。

★ 本件雇用契約においては、標準の勤務時間は22時から翌日6時または23時から翌日7時とされ、休憩時間は勤務交番表により定められることとされ、休日は週に2回または3回とされていた。

★ Xを採用するに際し、Y社はXに対し、契約更新を前提に定年まで働く環境があること、パート社員からフルタイマー社員への登用制度があることを説明した。

★ Xは14年12月、A社に雇用され、勤務時間は15時から21時の1日6時間で、出勤日は週6日とされていた。

★ Y社は16年11月、B社との間で、労働者派遣基本契約を締結し、B社に対して個別に労働者の派遣を依頼し、B社がY社に対して、労働者を派遣していた。

▼ Xは17年9月、B社と労働者派遣契約(以下「本件派遣契約」という)を締結し、同社からY社東東京ベースに派遣されるようになった。出勤日は週2日で、勤務時間は1日7時間であった。

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<Xの社会保険適用可否に関する経緯について>

▼ Xは17年4月、社会保険適用のための適性試験を受けたが、Y社から総合的に判断して不合格となった旨の通知を受けた。同年5月頃、Xは同社東東京ベース長に対し、社会保険に加入させてほしいと求めた。

▼ 同年9月、Xは東東京ベース長に対し、社会保険適用社員への契約変更を求める要求書を提出した上、Y社代表者に対し、同内容のメールを送信した。同年10月、Y社はXに対し、総合的に判断して社会保険に加入できない旨説明したが、これに対して、Xはグループ長とのトラブルに起因する個人的な嫌がらせにより推薦を受けられないと反論した。

▼ その後も、Xが希望する社会保険適用社員への契約変更は認められなかった。
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<本件雇止めについて>

▼ Y社は18年2月、口頭でXに対し、二重、三重雇用に基づく過度の長時間労働により健康および安全が損なわれるおそれがあるとして、次回の再契約を行わない旨通告し、同月、書面で契約更新をしない旨通知した(以下「本件雇止め」という)。

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