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#91 「バンダイ事件」東京地裁(再掲)

2005年6月15日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第91号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【バンダイ(以下、B社)事件・東京地裁判決】(2003年9月16日)

▽ <主な争点>
降格処分の効力(所得補償保険給付金の不正受給請求)

1.事件の概要は?

本件は、所得補償保険給付金の受給を不正に請求したことを理由として、B社から降格処分を受けたXが当該降格処分の無効確認と降格により減額された賃金等の支払いなどを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<Xについて>

★ Xは平成3年4月、B社に入社した者であり、13年7月当時における資格階級は4等級であった。また、Xの当時の肩書きはサブリーダーで、主な業務は外回りの営業活動であった。

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<Xが長期休暇を取得するまでの経緯>

▼ Xは12年1月から気分障害および不安神経症(以下「パニック障害」という)のため、心療内科に通院して治療を受けていたが、13年2月、抑うつ症状や不安発作が増強したことから、1ヵ月間の安静加療を要すると診断された。

▼ Xは同年3月、医師の診断書をB社に提出し、同月5日から30日(金)までについて、長期休暇を取得することを届出して、B社の承認を得ていた。そして、同年4月2日(月)からは通常どおりに勤務した。

▼ Xは同年3月1日、自宅付近の階段を踏み外して転倒し、肉離れを起こしていたが(以下「本件傷害」という)、上記休暇期間中、XはB社に対し、本件傷害を負ったことも、本件傷害によって就労が困難であることも全く告げていなかった。なお、休暇期間中に数回出勤した際も、Xは松葉杖をつくこともなく、Xの上司もXが足にケガをしていることに全く気がつかなかった。

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<本件降格処分に至るまでの経緯>

★ Xは同年2月、損害保険会社との間で保険代理店を介して所得補償保険契約(以下「本件保険契約」という)を締結していた。本件保険契約締結に際し、事前告知の内容として、精神病に罹患している場合にはその旨を告知しなければならなかったが、Xはパニック障害に罹患していることを告知していなかった。

▼ Xはパニック障害に罹患していることおよびこれによって休暇を取得していることを告げないまま、保険代理店に本件傷害について相談し、本件傷害から本件保険契約による給付を受けようとした。Xは整形外科の医師に診断書の作成を依頼したが、医師は就業不能期間の欄は記入しなかった。

▼ 同年4月下旬頃、Xは3月までB社の人事部に所属していた同僚Yに対して、本件保険契約のための「就業不能状況報告書」の証人になることを依頼した。

▼ XはYに対して、パニック障害では保険が下りないので、ほぼ同時期の本件傷害で保険を受けることを保険代理店から勧められたと説明し、Yは人事・総務の責任者として「本件傷害によりXが就労不能状態であったこと」を証明する就業不能状況報告書に署名、押印した。

★ 保険代理店は「就業不能状況報告書に証人として事実を証明するのは事情を知っている人であれば、隣の席の人でもよい。以前人事部にいたことがある人なら人事・総務の責任者として報告書に記載してよい」とXに説明していた。

▼ 同年5月、Xが損害保険会社に対して、就業不能状況報告書を提出したところ、損害保険会社からB社に対し、Xが会社を休んでいた期間、人事・総務の責任者であるYのことを照会する文書が届いた。

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