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#580 「森山事件」福岡地裁(再掲)

2023年1月25日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第580号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【森山(以下、M社)事件・福岡地裁決定】(2021年3月9日)

▽ <主な争点>
コロナ禍での業務転換・縮小を理由とする整理解雇など

1.事件の概要は?

本件は、主に観光バス事業を営むM社のバス運転手として勤務していたXが業務縮小を理由として解雇されたところ、当該解雇権の行使は合理的理由を欠き無効であると主張して、同社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに賃金の仮払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<M社およびXについて>

★ M社は、特定旅客自動車運送事業、一般乗用旅客自動車運送事業等を目的とする会社であり、福岡県内の本社(A営業所)のほか、鹿児島県内にB支店を置いている。同社は主として貸し切り観光バス事業を営んでいたが、2020年7月に福岡・大阪間の高速バス事業を開始した。

★ 2020年3月当時、M社の従業員数は20名であり、A営業所所属の従業員が13名(運転手10名、運行管理者2名、アルバイト1名)、B支店所属の従業員が7名(運転手5名、運行管理者2名)であった。

★ Xは、2017年7月、期間の定めのない従業員としてM社に雇用され、バスの運転手として稼働していた者である。


<本件解雇に至った経緯等について>

▼ M社は2020年2月、会社代表者を含む全従業員をメンバーとするLINEにより、全従業員に対し、「この度、コロナウイルスによる急激な仕事減少に伴い、昨日、本社で緊急会議を行い、協議した結果、コロナウイルスが終息するまでの間、別紙のとおり給与対応することになりました」との通知をした。

★ 同LINEに添付された別紙には、実施内容として、以下のような記載があった。
(1)基本給現状維持(*条件付き
(2)営業(お客様を持っている人)
(3)アルバイトを可能とする(終息まで)
(4)会社内勤・原則なし
*条件
・2020年5月以降の公休78日間を前倒しし、回復するまであてる(28日/最大)
・上記を使い果たした場合、日割り計算を入れる。(基本給・手当含め)

▼ M社は同年3月17日、全従業員が参加するミーティング(以下「本件ミーティング」という)で、福岡-大阪間の高速バスを毎日走らせる予定であることを説明した後、高速バスの運転手として稼働してもよい者は挙手するよう促したが、Xを含む複数の運転手は挙手しなかった。

▼ Xは同月20日、営業所長から解雇とすることを告げられた。また、同日には他の運転手1名についても解雇が言い渡されたが、同所長はXら2名が解雇の対象となったのはミーティングの場で高速バスを運転することについて挙手しなかったためであると説明した。

▼ 同月25日、XはM社より同月31日付で解雇する旨の解雇予告通知書を受領した(以下「本件解雇」という)。同書面には解雇理由として、「コロナウイルス被害の拡大により業務縮小の為」と記載されていた。

★ M社の就業規則には、解雇事由(23条)として、「業務の縮小、閉鎖、廃止、その他により剰員になったとき」と掲記されている。

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