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#514 「N商会事件」東京地裁(再々掲)

2020年6月24日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第514号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【N商会(以下、N社)事件・東京地裁判決】(2019年4月19日)

▽ <主な争点>
セクハラに対する会社の対応と安全配慮義務、債務不履行責任など

1.事件の概要は?

本件は、N社の従業員であったXが同僚のAからセクシュアルハラスメントに該当する行為を受けたところ、同社がこれに関する事実関係の調査をせず、安全配慮義務ないし職場環境配慮義務を怠ったこと等により精神的苦痛を被ったなどと主張して、債務不履行に基づき、損害金904万1960円およびこれに対する遅延損害金の支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<N社およびXについて>

★ N社は、ベアリングの機械部品の販売等を業とする会社である。同社の従業員数は12名程度であり、職種や営業と内勤である営業補助と倉庫業務に限られていた。

★ X(昭和51年生)は、平成22年8月にN社との間で雇用契約を締結し、営業補助担当の従業員として勤務していた者である。

★ A(昭和42年生)は、24年5月頃にN社に入社し、倉庫業務担当の従業員として勤務していた者である。

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<Aのセクハラ行為、Xが退職に至った経緯等について>

▼ Aは入社後まもなくXに好意を抱き、24年10月頃、メールでXを食事に誘った。AはXと食事した後に交際を申し込んだが、Xは特段回答をしなかった。

▼ その後もAはXに対して、折々メールを送る、会社の最寄り駅で旅行の土産を渡す、交際申込みの返答を聞く目的で待ち合わせしようとするなどしたが、交際の意図がなかったXはAの連絡に返信しなかった。

▼ Xから「Aのメールで困っている」と告げられた管理部長のBは当該メールに対して断固拒否するよう助言したが、Xはそのようなメールは送らずにいた。

▼ その後、AはXがメールに返信しないだけでなく冷たい態度を示すようになったことから、25年1月から3月にかけて、「Xさんときちんと話し合いたいです」「Xさんの気持ち察せなくて申し訳なかったです」「迷惑かもしれないけど、いまXさんの側にいたいし」といった内容のメールを送信したことがあった。

▼ 25年9月頃、B部長はXから「Aとの接触を忌避すべく、担当を交代できないか」との相談を受けた。B部長から報告を受けた営業部長のCがAに事実関係の確認を行ったところ、Aは過去にXに恋愛感情を持ちメールを送っていたが現在は送っていないこと等を述べ、上記のメールをC部長に見せた。

▼ C部長はAに対し、内容にかかわらずメール等でXを不快にさせないよう注意し、Xに謝罪するよう指導した。Aもこれを了解し、Xに謝罪し、Xもひとまずこれを了とした。実際、その後Aはメールを送信していない。

▼ Xはその後も不快な行為が続いているとして、配置転換や業務内容の変更、Aへの懲戒処分、Aを退職させること等をN社に求めた。さらには、直接Aに退職を求めることもあった。

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